2023年の電子情報産業は「過去最高の世界生産額を更新する見通し」、JEITA時田会長が事業方針示す Web3.0、ブロックチェーン、環境配慮型技術などで日本が大きな役割

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 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の時田隆仁会長(=富士通社長)は12月15日に記者会見を実施。2023年の事業方針を示すとともに、デジタルイノベーション市場の動向や、電子情報産業の今後の見通しなどについて説明した。

 時田会長は「デジタル技術の積極的な活用が浸透し、リアルとリモートをバランスよく融合させた社会が定着してきた。JEITAは、デジタル技術を提供する企業と、デジタル技術を活用する企業の両方が名を連ねているデジタル産業の業界団体として、会員企業とともに、新しい働き方、新しい暮らし、新しい社会の実現をデジタル技術で牽引していく」とコメント。「先行きが見通しづらい情勢が続いているが、より強靭で、柔軟な社会の構築、世界に先駆けたSociety 5.0の実現を目指し、日本の社会経済、そして地球の未来のために、JEITAとして与えられた使命を果たす。政府をはじめ関係各所と密に連携しながら、2023年も積極的に事業を推進する」と抱負を述べた。

一般社団法人電子情報技術産業協会の時田隆仁会長

電子情報産業は1%成長、2023年は生産額過去最高の見通し

 JEITAが毎年発表している「電子情報産業の世界生産見通し」についても触れた。

 同調査は、世界の電子情報産業の生産規模をデータによって明らかにするとともに、世界における日系企業の位置づけを把握することを目的に実施しているもので、会員各社を対象にしたアンケート調査をベースに、国内外の関連企業および団体の協力を得てまとめている。

 同調査によると、2022年の電子情報産業の世界生産額は、前年比1%増の3兆4368億ドルとなった。巣ごもり需要の反動減により、テレビやスマートフォン、PCなどが前年割れとなったほか、海外都市のロックダウンに起因する品不足や、個人消費の減速を背景にして、電子部品・デバイスも縮小した。だが、データ活用の高度化や自動化など、デジタル化の進展により、ソリューションサービスが増加したという。

 「2023年は、ウクライナ情勢の長期化懸念などもあり、世界経済の不透明感は残るものの、各国での景気対策やデジタル変革に向けた投資拡大によるソリューションサービスのさらなる伸長への期待がある」とし、世界生産額は前年比3%増の3兆5266億ドルと予測。「過去最高の世界生産額を更新する見通しである」と述べた。

2022年の電子情報産業の世界生産額は前年比1%増。2023年も、3%増で過去最高額を更新する見通しだとした

ソリューションサービスが半導体とともに成長を牽引

 品目別では、2022年にはソリューションサービスと半導体が過去最高を更新する見込みであり、ソリューションサービスは2023年も引き続き過去最高を更新する見通しだという。「昨今のDXやSX(サステナビリティトランスフォーメーション)を推進するには、ソリューションサービスが必要であり、このベースとなるのはテクノロジーである。それが半導体需要にも好影響を及ぼしている。この潮流は世界だけでなく、日本でも見られる。日本は、デジタル化の遅れ、コロナ禍からの回復の遅れもあり、世界に遅れて成長基調に入るかもしれない」とコメントした。

 日系企業の生産額も好調だ。2022年の海外生産分を含む日系企業の世界生産額は、前年比8%増の39兆4837億円。海外での調達増を背景に、電子部品やデバイスなどがプラスで推移し、円安を受けて海外での価格競争力が高まったデジタルカメラ、プリンタ、電気計測器などが伸長。また、国内生産額は前年比2%増の11兆1243億円となり、2年連続で成長すると見込んでいる。

 2023年の日系企業の世界生産額は、前年比3%増の40兆7599億円と予測。国内生産額は、前年比3%増の11兆4029億円を見込んでおり、「2023年は、新たな価値を生み出し、経済成長の源泉となるデジタル変革に向けたソリューションサービスの需要拡大が見込まれる」とした。

2023年の日系企業の世界生産額、国内生産額は共に3%の成長を見込む

国内への投資活性化を歓迎、「Web3.0/ブロックチェーン」などに注目

 さらに、「日本国内への投資に各社が積極的になってきたことは、歓迎すべき状況である。経済安全保障の観点から国内生産に回帰するという動きもある。国内投資は、ファシリティだけでなく、人材にも及んでいる。とくに、デジタルという観点では、最も大切なのは人である。デジタル人材育成への投資にも舵が切られていることは好感している」と発言。

 また、NTTやソフトバンク、トヨタ、ソニーら国内8社が出資して11月に設立した、次世代半導体の研究開発を担う新会社であるRapidus株式会社についてもコメントした。「地政学的リスクを踏まえると、先端ロジック半導体の生産能力と、継続的な研究開発能力を国内に保持することの重要性は、ますます高まっている。官民が一体となり、パートナー国とも連携して取り組むことを高く評価している。半導体産業に留まらず、あらゆる産業の裨益につながると期待している」。

 政府の防衛費増額については、「国民の財産を守る重要な事項である。受益、負担の観点でよく議論されることが重要である。日本の経済成長に向けて、デジタルを活用した社会課題の解決が重要事項であり、ハードウェア、ソフトウェアの両面で、研究開発や人材に積極的に投資できる環境づくりを踏まえて議論を進めてほしい」と語った。

 JEITAでは、「電子情報産業の世界生産見通し」の調査にあわせて、注目分野に関する動向調査を実施。「社会のデジタルイノベーション」に焦点をあて、社会を変えるテクノロジーの世界需要額を取りまとめた。

 ここでは、影響が大きい7つのテクノロジー要素として、「Web3.0/ブロックチェーン」「量子コンピューティング」「メタバース」「クラウド/エッジコンピューティング」「5G/Beyond5G(6G)」、「AI・データ解析」「サイバーセキュリティ」を抽出し、それぞれの技術が、利活用ならびに社会実装される場面を想定して市場規模を推定している。

 世界のデジタルイノベーション市場の需要額は、2021年の7797億ドルから、2030年には2兆3525億ドルへと、3倍以上に拡大すると予測。今後の社会実装が期待される「Web3.0/ブロックチェーン」の2023年の世界需要額は1136億ドル、「量子コンピューティング」が607億ドル、「メタバース」が1866億ドルに達すると予測した。

2030年には、世界のデジタルイノベーション市場の需要額は2021年の3倍以上と予測

 時田会長は、「Society 5.0の実現を掲げるJEITAにとって、デジタル活用による社会変革、社会のDXは重要なテーマのひとつであり、カーボンニュートラルの実現をはじめとした社会課題解決の鍵になるのはデジタル技術である」とし、DX実現する技術としてのテクノロジーの可能性を語った。

 中でも、Web3.0分野では、日本が大きな役割を果たせると言及。「Web3.0/ブロックチェーン、量子コンピューティング、メタバースは、業種、産業に限らず、社会のあらゆる分野での応用が期待されるテクノロジーである。Web3.0は、日本が先進的な役割を果たすことを政府が掲げており、メタバースは、日本が最も得意とするコンテンツや、アプリケーションが重要であり、量子コンピューティングにおいても官民をあげた取り組みが始まっている。日本が世界をリードし、プレゼンスをあげることができる分野であり、日本から発信ができる分野である。日本が強いところに集中するという考え方も必要である」などと語った。

 さらに、環境配慮型技術についても日本の得意分野であるとし、「エネルギーコストの上昇傾向を急激に緩和することは難しい問題である。未来社会に必要なデジタル技術にもエネルギーコストがかかる。だが、日本は環境配慮型技術が得意である。新たなデジタル技術の発展にあわせて、適切な省エネ技術を開発し、他国に対して、良い商品、良いサービス、事例として発信できるアイデアも多いはずだ。日本の電子産業技術が果たす役割はそこにもある」とコメントした。

カーボンニュートラル実現のため、CO2排出量の可視化に取り組む

 JEITAが取り組んでいる「Green×Digitalコンソーシアム」についても言及した。

 時田会長は、「2022年6月の就任会見で、この先のデジタル化の地殻変動を起こすのはカーボンニュートラルであり、企業の事業継続のためには、デジタルを活用したグリーントランスフォーメーション(GX)が必要になると語ったが、その潮流はさらに加速している」とコメント。2022年10月にJEITAが立ち上げた「Green×Digitalコンソーシアム」には、さまざまな業種の企業が参加し、発足時点の約50社が、現在では130社以上に拡大していることを報告。現在、サプライチェーンにおけるCO2の見える化に取り組んでいるという。

Green×Digitalコンソーシアムはサプライチェーン全体でのCO2排出量可視化に取り組む

 「焦点となるのは、製品の製造過程や使用段階も含めたCO2排出量の削減であり、そのためには自社だけでなく、取引先まで含めたサプライチェーン全体のCO2排出量を把握する必要がある。コンソーシアムでは、先週、ソリューション提供企業やユーザー企業など35社とともに、企業間のCO2データを交換する実証実験を開始したことを発表した。今回の実証実験は、多様な業界の企業が共通的な方法で算定した排出量データを、異なるアプリケーション間でデータ連携し、サプライチェーン上のCO2排出量を、正確かつ効率的に把握できるようにすることが目的である。2023年6月末までの実証実験完了を目指す」と述べた。

 JEITAでは、「Green×Digitalコンソーシアム」の活動を通じて、サプライチェーン上のCO2を見える化する仕組みを構築し、適正に運用管理することで、企業間の協働や消費者の行動変容を促し、社会全体の脱炭素化が進展する未来の実現を目指している。

 「世界各地の共通ルールの策定に向けた動きと調和させながら、地球環境に配慮した持続可能な社会を構築するために、官民一体となってCO2排出量の見える化に向けた仕組みやルールの社会実装に取り組んでいく」と語った。

CEATEC 2023は10月17日〜20日に開催

 また、2022年10月に開催したJEITA主催のCEATECが、3年ぶりの対面開催となり、「デジタル田園都市」をテーマに、多様な企業や団体の共創による企画展示として「パートナーズパーク」を新設。地域の未来像や今後の社会の暮らしを広く発信したことや、企業経営者や研究開発者、官公庁幹部のほか、約6000人の学生が来場したことを報告。

 「大学生や高校生、中学生など、次世代を担う人たちが、最先端のテクノロジーに触れ、デジタルに関する学びを深める教育の場を提供する役割も果たすことができたという手応えを感じている。デジタル人材は、あらゆる産業に必要不可欠である。そのため、デジタル技術はもちろん、デジタルを活用して社会課題を解決するという高い志を持つ企業の人材と、学生たちが交流する機会を創出することは、これからの社会にとって極めて重要であり、これもJEITAが果たすべき役割のひとつだと考えている。Society 5.0の実現に向けて、人材育成も含め、JEITAは、デジタル産業の業界団体として、引き続き、社会の一翼を担う責務を果たす」と語った。

 また、2023年は、10月17日~20日までの4日間、千葉県幕張の幕張メッセで、CEATEC 2023を開催することを発表。

CEATEC 2023の開催予定

 「先端テクノロジーは、業種、産業を問わず、社会のあらゆる分野での応用が期待されている。しかし、その社会実装のためには、研究開発のみならず、社会における理解や受容性の向上、ユースケースの創出などが強く求められる。そこで重要な役割を果たすのがCEATECである。CEATECの原点は、『テクノロジーで社会を豊かにすること』であり、先端テクノロジーが社会をどう変えていくかを披露、発信する場である」と位置づけ、「これから本格的な社会実装が期待されるWeb3.0/ブロックチェーン、量子コンピューティング、メタバースなどの技術やソリューションを提供する企業はもちろん、それらを活用し、サービスとして展開する幅広い企業にも出展してもらい、未来の社会を一緒に考え、社会実装を促進する機会にしたいと考えている。今後もCEATECを活用し、新しいテクノロジーの社会実装を強力に推進していく」と述べた。

 2023年1月31日には、CEATECへの出展検討者向けの説明会を開催する予定だという。

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