人気の人工甘味料アスパルテームが不安を増加させることがマウス実験で確認される

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人工甘味料はダイエット食品や飲料などによく使われており、現代人が飲料から摂取する人工甘味料は2007年~2019年にかけて36%も増加しています。ところが、人工甘味料は健康に悪影響を及ぼす可能性も指摘されており、新たな研究では人気の高い人工甘味料の1つであるアスパルテームが「不安」を増加させ、さらにその影響が子孫にまで受け継がれることがマウス実験で確認されました。

Transgenerational transmission of aspartame-induced anxiety and changes in glutamate-GABA signaling and gene expression in the amygdala | PNAS
https://doi.org/10.1073/pnas.2213120119

FSU research links common sweetener with anxiety – Florida State University News
https://news.fsu.edu/news/university-news/2022/12/08/fsu-research-links-common-sweetener-with-anxiety/

A Popular Sweetener Has Been Linked to Increased Anxiety in Generations of Mice : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/a-popular-sweetener-has-been-linked-to-increased-anxiety-in-generations-of-mice

フロリダ州立大学医学部の研究チームは、多くの飲食物に含まれる人工甘味料のアスパルテームが及ぼす影響を調査するため、マウスを用いた実験を行いました。アスパルテームは砂糖の主成分であるショ糖(スクロース)と比較して100~200倍の甘味を感じられる物質であり、食品添加物として世界的に広く用いられています。

研究チームは、アスパルテームを0.03%または0.015%含んだ水を用意し、マウスが自由に飲めるようにしておきました。薬物動態パラメータや体表面積パラメータを利用して換算すると、0.03%のアスパルテームを含んだ水を飲んだマウスは、アメリカ食品医薬品局(FDA)がヒトに推奨する1日の最大摂取量の約15%に相当するアスパルテームを摂取した計算になるとのこと。


12週間にわたる実験期間中にマウスのために設計された「オープンフィールドテスト(OFT)」を行わせたところ、アスパルテームを含んだ水を飲んでいるマウスは通常の水を飲んだマウスと比較して、不安を示す行動が有意に多いことがわかりました。

オープンフィールドテストでは、不安の多いマウスほど中央エリアで過ごす時間が短くなります。下のグラフは縦軸が中央エリアで過ごした時間を、横軸が実験開始時から何週間が経過したのかを示したもの。左がオスで右がメスとなっており、黒色が普通の水を飲んだマウス、青色がアスパルテーム0.03%の水を飲んだマウス、紫色がアスパルテーム0.015%の水を飲んだマウスです。アスパルテームを摂取したマウスでは、明らかに中央エリアで過ごす時間が短いことがうかがえます。


また、以下の図はオスのマウスがフィールド上で移動したルートを示したもので、左が通常の水、中央がアスパルテーム0.03%の水、右がアスパルテーム0.015%の水を飲んだマウスです。アスパルテーム入りの水を飲んだマウスの行動には、明らかな変化が現れていることがわかります。


研究チームがマウスの神経系でRNAシーケンシングを実施したところ、不安に関連する脳の扁桃体で有意な変化がみられました。アスパルテームは体内で分解されるとアスパラギン酸フェニルアラニンメタノールに代謝され、これが中枢神経系に影響を与える可能性があるとの研究結果もあります。

さらに研究チームは、アスパルテーム入りの水を飲んだマウスにみられる不安行動がその世代だけでなく、その後も最大2世代にわたり子孫へ受け継がれることも発見しました。なお、抗不安薬として知られるジアゼパムを投与すると、すべての世代で不安行動が収まったとのことです。

論文の筆頭著者であるサラ・ジョーンズ氏は、マウスの不安行動が予想以上に強固なものだったことに「まったく予想外でした」とコメントしています。また、論文の共著者であるPradeep Bhide教授は、「この研究が示しているのは、環境要因を過去まで振り返る必要があるということです。なぜなら、私たちが今見ているものは現在起きていることだけでなく、2世代前、あるいはもっと前に起こっていたことに原因があるかもしれないからです」と述べました。

マウスで確認された結果が必ずしもヒトでも反映されるとは限りませんが、今回の研究結果はアスパルテーム摂取が神経行動学的変化をもたらす可能性について、さらなる研究を行う理由となるとのことです。


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