両手放しとも言えない物価高沈静化:日本の物価が上がらない本当の理由

アゴラ 言論プラットフォーム

アメリカの11月度消費者物価指数が発表されました。総合指数は前年同月比7.1%上昇(事前予想7.3%、前月は7.7%)、コア指数は6.0%(事前予想6.1%、前月は6.3%)と明白に物価高が沈静してきていることが見て取れます。今日明日と行われているFOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)については明日の政策会合の決定内容、およびパウエル議長の声明はある程度予想がついたので本来であれば明日、お届けする予定だった今年最後のキーイベントについて一足先に分析してみたいと思います。

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カナダ国内の報道で金利が上昇しすぎて「夕食抜きの家庭」が紹介されていました。カナダ中央銀行は12月7日に再度0.50%の利上げを行い、4.25%としました。この影響をもろに受けているのが住宅ローンを抱えている人たちで変動金利型の方々にとってこの1年強で2-3倍の利率になってしまっています。その為、必死の利払いで、削れるものは全て削るというけちけち生活があらゆる方面に波及し、夕飯がある日とない日があるといったケースも出てきているという報道です。

スーパーマーケットに行けばバーゲン価格の商品だけがすっぽり売り切れており、他の商品はしっかり残っているという生活感が非常によく表れた状況が手に取るように見て取れます。クリスマスセールの真っただ中、デパートに行ったところ、100㌦の商品が2週間前に30㌦で売られていたものが今週は20㌦、しかもレジで更に4割引いてもらい、12㌦しか払いませんでした。周りを見ると皆さん、同じ商品を抱えているので目玉商品だけの狙い撃ちであることは明らかです。一流のデパートですらこの価格破壊ぶりで私の記憶にもないほどです。

明日のアメリカのFOMCでは99%、0.50%の利上げとなるでしょう。残りの1%は0.75%ではなく、0.25%の利上げに留める可能性も無きにしも非ずです。理由はカナダ中銀が12月7日に利上げした際の声明にヒントがあります。「政策金利をさらに引き上げる必要があるかどうかは今後、検討する」と。つまりややもすると打ち止め感とも思える声明が出ているのです。個人的にはカナダでは打ち止めはないかもしれないが、あと1回0.25%程度を引き上げて終わりではないか、と見ています。

世界の中央銀行は勘違いをした可能性があります。原油価格や食糧物価は戦争のせい、運送費の高騰は物流が増えたから、人件費増は企業のビジネス拡大マインドが強いから、と。それは違うのです。中央銀行はデータ ドリブンの世界です。ところがそのデータの意味するところをどこまで掘り下げて分析したかは不明です。私は物価高の主因はコロナ断絶が引き起こしたタイムラグと人々の労働意欲の減退によるものだと考えています。これにより労働の質が落ち、労働生産性が下がり、コスト高を引き起こしたとみています。日本の物価が上がらないのは労働の質が下がっていないからです。

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アメリカの場合、働きたくない人に高賃金というアメを配り、カウチから職場に向かわせたのです。しかし、3年近く寝そべってちょっとオンライン業務をやって、あとはミーム株をいじり、オンラインゲームにネットフリックス三昧していた人たちが「働きたくねぇ」というマインドの中、無理やり社会に再投入されるのです。企業は働きに期待するけれど彼らはそんなに働かない、つまり経営効率が下がり、コストばかりが上昇するという悪循環に入ったのが主因ではないかとみています。

来年は景気後退になると言われています。私もその公算は高いと思います。この場合、何をもって景気後退とするかですが、企業倒産件数、個人破産件数、住宅ローンの不良化率や競売件数の増大に着目しています。

昨日、ランチミーティングである日本食レストランに行きました。幕の内が3500円です。他のアイテムも3000円以上のものばかり。経済同友会の代表幹事に就任予定の新浪剛史氏がアメリカでラーメンが3000円で売れる経済力を持ち上げているのですが、北米にいる私からすればそれは違うのです。ラーメンが3000円は明らかにバブル価格であってそのうちに2000円でも売れず、ラーメン屋の淘汰が始まる予兆とみるべきなのです。価格には妥当性というものがあり、高ければ何でもよいわけではないわけです。そこを多くの人が見落としているのです。

物価は今後、もう少し下がってくるでしょう。ただ、コロナ前の水準にはならないはずです。一度上げた人件費はクビにしない限り、下げられないのです。とすれば倒産が増え、失業者が増えるデータ出てくるであろう来年夏以降に金利を急速に上げ過ぎたという反省が出てくるのがシナリオではないかと予想しています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月14日の記事より転載させていただきました。

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