ここ数年、コンビニで売っている食品のクオリティが上がっていることなんて、もはや説明不要だろう。コンビニやスーパーのPB(プライベートブランド)が「安かろう悪かろう」だったなんて過去の話。いまや「安定と安心のPB」と言っても過言ではない。
なかでも一大勢力をふるうのがセブンプレミアムで、私は「セブンプレミアム帝国」と呼んで恐れている。そんな帝国から、この冬ひっそりと、とんでもない商品が発売されていた。聞いて驚くなかれ、なんと「テリーヌ」と「パテ」である。
おしゃれなバルくらいでしか食べられなかった「テリーヌ」と「パテ」までがコンビニに並ぶ時代……。恐ろしい世の中になってしまった。
・ここに手を出してくるとは…
セブンイレブンのお惣菜コーナーにひそかに並び始めたおしゃれ食品……。セブンプレミアムの領域はカレーとかハンバーグみたいな家庭料理まで、というイメージがなんとなくあった。「パテ」と「テリーヌ」を見たときは、ついにこの領域にまで手を出してきたのか……と思ったのが正直な感想である。
今、C-C-Bがいたら『セブンプレミアムが止まらない』というタイトルで「PBのエリアから はみ出した セブンの赤いテリーヌ」と歌ったかもしれない。だれかセブンプレミアム止めて……。
と、歌っていたところでしょうがないので、さっそく食べていきたい。
まず「鶏肉と豚肉のテリーヌ」から。
なんとダメ押しでピスタチオ入りと書いてある。2022年のヒット食材とも言えるピスタチオまで入れてくるとは。ゲストが豪華すぎる……。それでいて価格は398円(税抜)。
とはいえ、問題は味である。ひとくち食べると……。
クセがなくてめちゃめちゃ食べやすい! それでいてハーブの香りや、鶏肉や豚肉の風味がしっかり香ってくる本格感もある。質感はソーセージに近いのだが、いかにも加工食品のハムみたいな味……じゃなくて、ちゃんとバルっぽい味になっているのだ。これは驚いた。「テリーヌってあんまり食べたことないな」と未知の食べ物に抵抗を示す人でも美味しくいただけると思う。
あと、皿に盛ってみて思ったのだが、想像以上に大きいことに驚いた。
つづいて「パテ・ド・カンパーニュ」 。
こちらはなんと国産鶏レバー使用である。コンビニ食品でなんというチャレンジ。
お店でレバーパテを頼むと、当たりハズレがけっこう大きい。美味しいところだと臭みが全然なくて濃厚なうまみを堪能できるけど、ハズレだと生臭くてクセがある。私は臓物があんまり得意ではないので、出てくるとドキドキすることが多い。
さて、セブンプレミアムの「パテ・ド・カンパーニュ」はどうなんだ……?
こちらはテリーヌ以上にハーブやスパイスをふんだんに使っていて、かなり臭みは抑えられているけど、後味にちゃんとレバーの風味がある。さっきの「豚と鶏のテリーヌ」よりは野性味を感じる味わいといったところ。
さすがにレバーがすごく苦手な人は臭みをを感じとってしまうけど、レバーとかジビエが好きな人ならむしろ喜ばしいくらいだと思う。食べやすさと本格感の絶妙なバランスを取った、セブンプレミアムの底力を感じる一品である。
ちなみに、「テリーヌ」と「パテ」どちらも製造は安定の日本ハム。日本の食卓を支え、日本人の味覚を知り尽くしたビッグメーカーが作ったんだもの……そりゃ食べやすいに決まっている。
・自宅で手軽にワインとともに……
セブンイレブンには、ワインコーナーもあるし、ミックスナッツ類もそろっている。これに398円のパテやテリーヌを買えば、お家でバル風に一杯が楽しめるのである。私が街の肉屋さんとかバルだったら、こんなの出されたら泣いてしまうと思う。
こうして、手軽で本格的なPB食品を食べていると、便利な反面怖くもなる。そのうち、セブンプレミアムがどんどん拡大して、よりよいセブンプレミアム版のロケットニュース24が作られて、いつしか安い給料でたくさん働く「よりよい人間」も作られて、日本、いや世界がセブンプレミアム帝国に乗っ取られたりして……。
おいしいパテを食べながら、ふとそんな藤子不二雄のSF短編みたいな世界を想像してしまった。