書き出し小説大賞 250回秀作発表

起き抜けの暗さに雲だけが赤い。

あの

会う度に小さくなる父の影が伸びていく。

みよおぶ

もういっそ顔の無いマネキンになりたい。

シキブ

炎は燃え広がり、木琴は転調した。

辞書は厚く女は薄く

きみの手料理が食べられて、ぼくの腸内フローラもよろこんでいるよ。

さくさく

いったん挟まれた広告が、サイトを閉じてもまだ掌の中にある気がした。

えりも秋

サブ眼鏡を掛けてメイン眼鏡を洗うと幽体離脱している気分になる。

いずも

ＶＲゴーグルを外すと、なまはげも裸族もいなくなった。

伊勢崎おかめ

これは古代のキッス。

正夢の３人目

ミハルスに飽きたぼくは、耳たぶを挟んだり、唇を挟んだり、他に何か挟めるものはないものかと学校中を歩き回った。

キキ

記録1、飼育化においてチュパカブラは思いのほか懐く。

MOGUO

真冬のムヒは痛い。

morin

ヒグマの親子は同じ格好をして眠っていた。

ビールおかわり

まだだ。まだアメちゃんの出番ではない。

うぇるち

陽だまり、三毛猫、ホットヨガ。

ぐるりん

笑み。ネギ。

タルク石

２歳の娘が微笑みながら口の中のチョコを取り出し、私に差し出す。

kg

「あ、うちの冷蔵庫と同じ！」ドラマの濡れ場で、娘が叫んだ。

南極行太郎

「まあまあ、いっぱいどうですか」息子がしきりにポカリを勧めてくる。

南極行太郎

これは、サンタさんのためのおいだき。

花惑

きみのための雪見だいふくがさびしそうにしている。

寂寥

「今来たところ。」とはにかむ頬はひんやりしていた。

早百合

彼が大盛りを頼み、運び終えられてから私の並盛りと交換してくれる。

節度亜図夢

冷たい雨は冷たいままでいい。やさしさが意味をなさなくなるから。

はらけん

布団とは、宇宙一温もりと包容力がある存在だ。

桃とペンギン

「あちらのお母様からです」とカウンターをみそ汁が滑ってくる。

伊勢崎おかめ

全部ひらがなに直してくれた。

いそうろう

全部間違ってるけど、ありがとう。

タカタカコッタ

あっ、三和土のコンクリートに猫きゅうが！

二姫

姉は何も聞かず、肩にハムスターを載せてくれた。

小野芋子

道を教えた。ついでに電車賃を渡した。

吉田髑髏

愚痴を聞いて、金も払う。

たこフェリー

ブラの紐を見ないように見ないように、馬券の買い方を教えてあげてる。

人馬一体勘

モヒカンの彼がぶっきらぼうに差し出してくる釘バットを受け取る。「ケンシロウに負けんなよ」

あやあや

九段下で恩師と再会。お出汁のきいた小言を食らうなどする。

suzukishika

もみじ散る道で、踏まぬようにと歩く老夫婦。

平真琴

休暇の最後の日、軍曹が振る舞ってくれた手作りのフレンチトーストは、少し酸味があったがいやにうまかった。

葱山紫蘇子

子犬が間に入ってきたことで、俺たちのスクラムは強固なものになった。

g-udon

こんな私にも、口内炎を見せてくれた。

モンゴノグノム

砲丸に名前をつけたんだ。もう投げられない。

あの

君が先に死ぬんだよ。

井沢

奴隷の携帯電話も一緒に充電する。

prefab

討ち取った武将のまぶたをそっと閉じる。

八王寺義昭

僕は実刑を受けるから、君も手術を頑張るんだ。

ろっさん