ミラーレス全盛だけど、一眼レフだってまだまだ!
デジタル一眼レフカメラ。ミラーレス一眼が高すぎて買えない人、電子ビューファインダーより光学ビューファインダーが好きな人、レンズ(とアダプタ)を全部手放すのが惜しい人は当然「買い」だし、ミラーレスよりバッテリーが長く持つところも魅力です。最新モデルは動画性能もミラーレス一眼に迫るもの。中古市場が充実しているのも見逃せません。
一眼レフを選ぶとき考えたいこと
一眼レフカメラを買うときに留意したいのは次のポイントです。
・自分の撮影スキルのレベル
・写真を撮りたいのか、動画を撮りたいのか、両方撮るのか
・予算
・手にもったときの操作性を重視するのか
・ 使い慣れたメーカーがあって、それで通すのか、乗り換えるのか
ミラーレスと一眼レフ、どう違うの?
デジタル一眼レフと初期のフィルム一眼レフは中に鏡があって、レンズから入って反射した光が像を結び、ビューファインダーに表示されます。シャッターを押すと、ミラーが上がって光がイメージセンサーに当たり、デジタルの画像として記録されるしくみ(フィルムカメラでは35mmのフィルムに記録される)。
一方、ミラーレスカメラにはミラー機構がなくて、センサーだけです。ビューファインダーの液晶に表示されるのも、センサーが捉えた画像を電子的に表示したもの。デジタル一眼レフのそれが光学式ビューファインダーと呼ばれるに対し、ミラーレスカメラは電子ビューファインダー(EVF)と呼ばれるのはそのためです。
ミラーレスだと、電子シャッターでシャッタースピードが高速になるし、レンズとセンサーの距離が縮まるため、よりF値の大きなレンズがつくれる利点があります。また、動画もミラーレスなオートフォーカスシステムのほうがデジイチより高度。
ただミラーレスにも弱点はあって、いちばん大きいのがバッテリー持ちです。常時ライブビューモードで像を送り続けなきゃならないので早く電池切れになっちゃうのです。最近のプロ用ミラーレスはかなりバッテリー持ちも改善していますけどね。
比較方法
フリーフォトグラファーとして、ここ6年くらいは撮影でデジタル一眼レフを使ってきました。最初に使ったのはAPS-C機で、最後はフルサイズ。Canon 5DMkIVでも撮るし、メインのNikon D750でも撮るって感じですので、ここで挙げたカメラのなかには持ったことないのも混じってますが、経験がない人よりはよいデジイチやコストバランスを見分ける目はあると自負しています。
ここで選んだカメラは各カテゴリで、性能に見合う価格のものばかりです。1,000ドル未満で買えるビギナー向けのものから、倍の予算で買えるプロ用のものまでベストを選んでみましたが、結局は買う人の予算と好み、使い方次第なので参考程度に。
ベストなDSLRカメラ
初めて買う人は、いくらスペックを見比べてもちゃんと使いこなせるかがわからないものですし、別に最強スペックのものを買わなくても間に合ってしまったりもします。
僕も初めてのときには調べまくって買いました。レビュー読んで、知り合いのプロフォトグラファーに話を聞いて、スペック表をじっくり突き合わせて。けど今思うと、買う前に予備知識を仕入れるのはいいことだけど、考え過ぎてもよくないように感じます。あるフォトグラファーの言葉を借りると…
ニコンとキヤノンの違いはホンダとトヨタの違いみたいなもので、どっちに転んでも、いいものであることには違いがない。
あと、どこで買うかも重要で、特に中古は上手に選べばかなり予算を削減できます。アメリカなら大手のMPBやKEHが中古市場のなかでは人気で、カメラの下取りもOK。地域のショップやチェーン店も中古置いてたりします。eBayなんかのネットオークションも出品者をよく調べて気をつければ、いいものが安く買えますよ(Facebookのマーケットプレイスは一度買って凝りて、今はほかをすすめるようにしています)。
総合点ではコレ! Nikon D850
メリット
・超高画素
・9コマ/秒の高速連写で、動物・スポーツの撮影もばっちり!
・全天候対応のがっちりボディ
・幅広いプロ用レンズ
デメリット
・動画撮影性能はベスト未満
あらゆるシーンをこれ1台でこなせるモンスター。D850は人気のD810の後継機として2017年にデビューしました。画像処理エンジンの有効画素数は4575万画素。マグネシウム合金のがっちりボディで悪天候にも耐えるし、レンズも純正品からサードパーティー製まで豊富。
発売からもう5年経っていますが、 常用ISO感度64〜25600で、ダイナミックレンジがすばらしく、RAW現像時の編集耐性が高いのも◎です。
D850はニコンのデジイチで最速連写性能を誇り(DPReview調べ)、生きもの、スポーツの撮影もらくらく。高画素なので、ポートレート撮影は屋内でも屋外でもいけます。
ビューファインダーはD810と同じ大きさと明るさ。これもうれしいポイント。はじめてのカメラにも、旅のカメラにも、買って後悔なしと言えます。
ボディの価格は新品で2,500ドル(日本は28万円台)、中古は約1,800ドル(20万円台)から。たまにしか使わない人や、お安いフルサイズ35mmセンサーのカメラの練習がしたい人は、D750、D780か、キヤノン6Dのほうがいいかもしれません。
ちなみに動画はニコン最新鋭ってほどじゃないけどD850でも4K映像の撮影は可能です。
ビギナーにはコレ!Nikon D5600
メリット
・安い
・起動も操作も一発ですぐ覚えられる
・クオリティの高い写真が撮れる
デメリット
・ダイナミックレンジはフルサイズセンサーほど広くない
・フルサイズのデジイチほど多機能じゃない
「最初は安めのフルサイズカメラで練習したほうがいい」って人も多いけど、いえいえどうして。APS-Cのなかにも探せばいいカメラはあります。
35mmのフィルムと同じ寸法のフルサイズセンサーカメラがプロに好まれるのは、センサーが大きいぶん、RAW画像により多くの情報を記録して、あとでいかようにも編集できるから。センサーがちっちゃいAPS-Cカメラは画素数がそこまで多くないし、暗所撮影もそんなに得意じゃないけど、それでも充分使えるRAW画像を撮ることができます。そのいい例がNikon D5000シリーズです。
D5600は高性能なニコン最安APS-Cカメラシリーズ最新作。ボディとレンズキットを合わせても800ドル前後(日本はもうちょっと高くて新品だと13万円前後。ただしもう新品はあまり手に入らない)と値ごろですし、背面液晶はバリアングルアングルモニター。一眼レフの動画と写真の基礎を学ぶには最高です。フルサイズデジイチに比べたら小型軽量ですが、DXシリーズのレンズには結構いいレンズが揃っているので、質の高い写真もちゃんと撮れます。
有効2440万画素で、D750などのフルサイズカメラとほぼ同じ。動画は1,080pのフルHDで撮れます。Bluetooth対応。ニコンのSnapbridgeアプリとつなげば遠隔操作でシャッターを切ったり、撮った写真・動画のワイヤレス転送もできちゃう。もっと予算を浮かせたいならリファブ(再生品)狙いもアリでしょう。自分も最初はニコンのエントリーモデルであるD3000シリーズのD3300を買って、それで慣れてからフルサイズのカメラにしましたが全然後悔してません。D5600なら100ドル上乗せすればスターターキット(ズームレンズ+ボディ)が買えますしね。
手に入れてしまえば、あとは割とすぐいい写真が撮れるようになります。いきなりプロの機材揃えるんじゃなくて、まず慣れないと…という学び重視の人には頼れるカメラ。
コスパで選ぶならコレ! Canon 5D Mark IV
メリット
・納得プライス。比較的モダンな技術を備えたフルサイズカメラでこの価格
・液晶は傾けたり反転したりできる
・6Dより処理スピードが速くなった
・プロでも通用する画質
デメリット
・連写速度が不十分。生きもの、スポーツなどのスピードについていけない
キヤノンのフラグシップ一眼レフカメラのラインナップでは最新にして最後のエントリーとなった5D Mark IVは、2016年発売。デジタル一眼レフカメラのモンスターとして登場し、今もプロに絶大な支持を誇ります。高画素な静止画・動画の撮影性能とともに、タップでピントが合うタッチスクリーンなども備えており、最上位の1Dシリーズを除けば、キヤノンDSLRテクノロジーの粋を極めたカメラと言えます。
今なら中古で買えば半額近い16万円弱。これでプロのカメラが手に入ってしまいます。Lレンズシリーズと組み合わせれば、もうこの先何年もカメラで不自由することはありません。
3000万画素センサーとキヤノンのレンズの組み合わせなら、プロレベルの写真も撮影できるし、SNSでシェアしたり、印刷して飾ったりも思いのままです。動画は、キヤノンの充実の動画コーデックで1,080pのHD撮影が可能。YouTubeに上げたり、撮影の練習をしたりできます。キヤノンのCamera Connectアプリで遠隔操作もできるので、自撮りや動画撮影のときに使うと便利です。
静止画連写性能は7コマ/秒で、旅はもちろん、ポートレート、イベントもだいたいいけます。スポーツやいきものの写真がメインなら、もう少し連写性能が高いカメラを買ったほうがいいですけどね。
なにしろ撮影で食べてる人たちが現場で使ってるカメラです。プロのフルフレームカメラを安く手に入れたい人はロックオン。
動画性能で選べばコレ! Nikon D780
メリット
・プロの使用にも耐える高画素カメラ
・Z 6と同じAFシステム搭載
・クロップなしで4K動画が撮れる
・これだけ高性能でこのプライス
・ライブビューモードでは瞳AFあり
デメリット
・D5などの上位モデルほどパワフルじゃない
Nikon D780はオールラウンドに使えるカメラとしてプロに愛用されてきたD750の後継機として、長い長い沈黙の末、2020年にリリースされました。今回選んだなかでは最新のカメラに当たります。
D750で好評だったものすべてをフィーチャーし、改良を加えました。動画撮影では、ライブビューモードでニコンのミラーレスカメラZ 6と同じAFシステムを採用。目や顔の追跡をはじめ、そのAF性能はデジイチで最強です。Z 6に光学ビューファインダーを付けたカメラがD780と言っても過言ではありません。ポートレートを撮る人で、はじめての本格的なデジカメ購入を考えている人は一度手にとってみて損はないでしょう。
D780は、静止画&動画撮影の切り替えが素早く行なえるので、両方の撮影を頻繁に行なう人には最適です。たとえばウェディングフォトグラファーとかは重宝しそう。クロップなしで4K動画が撮れるのもポイントです。
耐久性抜群の悪天候に耐えるボディ。動画のみならずオールラウンドに使える今のカメラです。Canon 5D Mark IV、ミラーレスのSony A7IIIと比べた動画(制作・The Slanted Lens)もチェックしてみてね。
メリット
・デジイチの割には軽量コンパクト
・写真も動画もこれで十分
・使いやすい
デメリット
・AFが遅い
・最高とは呼べない動画コーデック
価格、コンパクトデザイン、性能のバランスが絶妙で、単にお手頃なだけじゃなく、旅のコンパニオンとしても◎。バッグにすっぽり収まるサイズ感でありながらパワーもあって、データ豊富なRAW画像も撮れるし、今度の旅はCanon 6D Mark II(6D II)で決まり! でしょう。
35mmのレンズを取り付けてオートに設定しちゃえば、デジイチの細かいことは知らなくても、ばんばんいい写真が撮れるカメラです。動画コーデックはほかのキヤノンのデジイチ(5Dシリーズなど)ほど充実していないけど、なにしろフルサイズのデジイチで、ボディ単体なら20万円を切る価格ですからね。普通は手の届かない層もすくいあげてくれそうです。
強いて難点を挙げるなら、オートフォーカスがかなり遅いことと、AFポイントがフレームの中央に集中してることでしょうか。スピード勝負の撮影や、フレームの端っこにピントを合わせたいときにはちょっと厄介です。
予算がもっと出せるなら、思い切ってCanon 5D Mark IVとか奮発してもいいでしょう。6D IIより大きいけど多機能でAF性能も上ですし、HD動画ももっとキレイに撮れますよ。
以上いかがでしたか? ミラーレス以外のいいカメラを探している人、まだミラーレスに飛びつきたくない人は、少し前の機種に目を向けると、チョイスの幅が広がります。僕だってまだ一眼レフのD750使ってますし。
カメラ選びは、ニーズと撮影スタイルに合わせて行なうのが原則です。慣れるまでは、楽しく学べるリーズナブルなもので十分ですので、まずは予算を決めて、購入目的を決めて、この記事を参考にしながら選んでみましょう。できれば候補を2つに絞ったらレンタルで試してから買ってもいいですね。みんなの意見より、触って使いやすいものがあなたのベストです。