「寄生虫」がオオカミを群れのリーダーに仕立て上げていることが判明

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トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)」という寄生虫に寄生されたオオカミは、そうでないオオカミより群れのリーダーになる確率が高く、群れを離れて一匹オオカミになる可能性も高いことが分かりました。

Parasitic infection increases risk-taking in a social, intermediate host carnivore | Communications Biology
https://doi.org/10.1038/s42003-022-04122-0

Parasite gives wolves what it takes to be pack leaders
https://doi.org/10.1038/d41586-022-03836-9

ネコ科の動物を終宿主とするトキソプラズマは、中間宿主となったネズミを大胆にしてネコに対する恐怖心を失わせ、ネコに食べられる可能性を高くするという生態を持っています。しかし、トキソプラズマが自然環境に住む野生動物に及ぼす影響についてはよく分かっていません。

そこで、モンタナ大学の野生生物生態学者であるコナー・マイヤー氏らの研究チームは、イエローストーン国立公園にいるハイイロオオカミの行動を分析する研究を行いました。研究チームがイエローストーン国立公園のオオカミに注目したのは、この地域にはネコ科の大型肉食獣であるピューマも生息しており、オオカミがピューマのエサを横取りしたり、ピューマやピューマの排せつ物を食べたりしてトキソプラズマに感染する可能性があるからです。


研究チームが229頭のオオカミから合計256の血液サンプルを採取して調べたところ、トキソプラズマへの感染率は27.1%でした。検査されたオオカミの内訳はオスが116頭、メスが112頭、両性具有が1頭で、オスの感染率が25%だったのに対してメスは31.25%とやや高めでしたが、有意な差ではありませんでした。

そしてこれらのオオカミを追跡したところ、感染したオオカミは感染していないオオカミに比べて、家族を捨てて新しい群れを作る確率が11倍高く、群れのリーダーになる確率は46倍高いことが分かりました。

トキソプラズマに感染すると人間でもテストステロンドーパミンといったホルモンの分泌量が増加して性的な魅力が増加したり、行動や性格が変化したりすることが分かっているため、同様の変化がトキソプラズマに感染したオオカミにも起きた可能性が示唆されています。

メイヤー氏は「私たちはこの結果を見て、思わず口をあんぐりと開けたまま顔を見合わせてしまいました。なぜなら、私たちが思っていたよりはるかに違いが大きかったからです」と話しました。


トキソプラズマへの感染によって無鉄砲になったネズミはネコに食べられやすくなることが知られていますが、メイヤー氏によると「トキソプラズマに感染したからといってオオカミがピューマの餌食になる可能性は低い」とのこと。しかし、北アメリカにはかつて既知のネコ科動物としては最大級である体重約200kgのアメリカライオンが生息しており、1万1000年以上前に絶滅するまではオオカミを捕食していたと考えられています。

研究チームは今後、トキソプラズマに感染したオオカミが繁殖に成功しやすくなるのかどうかや、感染したリーダーが率いる群れがリスクを冒しやすくなることでピューマに遭遇する確率が上がるのかについて調査を行う予定とのことです。

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