テキサス大寒波のときに水が止まった瞬間を思い出して遠くを見てしまう…。
テキサス州ヒューストンで先月末、停電によって上水道の水圧が最低基準を下回り、水質を懸念した市が水道水を沸騰させてから使用するよう市民に通達を出す事態になりました。テキサス州が長らく抱えている水道インフラ老朽化の問題が表面化したともいわれています。
変圧器の故障が原因
ヒューストン市内のEast Water Purification Plantで停電が発生し、州が定める最低水圧を下回ったのが11月27日の午前10時30分のこと。市が水を沸騰させてから使用するよう市民に呼びかけたのは、それから9時間近く経過した午後7時すぎでした。市は料理や飲み水、入浴や歯みがきに使う水は最低でも2分以上沸騰させ、冷蔵庫に備え付けの機能でつくられる水や氷を口にしないことなどを呼びかけました。
翌月曜日に、ヒューストンのシルベスター・ターナー市長は浄水場で発生した停電の原因について、変圧器と予備の変圧器の故障が原因と説明しました。水圧が州の最低基準を下回ってから水の沸騰指示までに時間がかかりすぎという批判に対して市は、沸騰指示はあくまでも予防措置であり、水質は安全と考えていたとしています。また、公共水道サービスは問題発生からできる限り早く、遅くても24時間以内に通知する義務があるため、9時間はルールに反していないことになるそうです。
市は月曜日にテキサス州の規制当局である州環境委員会(Texas Commission on Environmental Quality)に水のサンプルを提出して検査を依頼、火曜日には安全が確認されたため、市は同日早朝までに沸騰指示を解除し、プチ水騒動は運よく2日で終了しました。
ヒューストン市民は水騒動に耐性があった
今回の沸騰指示の影響は、全米で4番目に人口が多いヒューストンの220万人におよび、水質汚染を懸念したヒューストン学区は火曜日まで休校し、閉店するレストランなどもありました。それでも、市民に目立ったパニックは見られなかったようです。
Houston Chronicleによると、1人あたりが購入可能なペットボトルの清涼飲料水を2セットから4セットに制限するスーパーもあれば、まったく制限を設けないスーパーもあったとのこと。ヒューストン市民にとっては、ハリケーン上陸時やコロナ禍初期の外出禁止令、昨年のテキサス大寒波などに比べるとたいしたことないって感じだったのかもしれないですね。それでも変圧器とバックアップの変圧器が同時多発故障を起こすなんて怖すぎて、めでたしめでたしとはなりませんけど…。
テキサスのインフラ整備問題は解決に向かうのか
Gristによれば、テキサスは全米で最も水質違反の多い州で、実際のところ州内の至るところで沸騰指示が日常的に出されていたりするんです。ここ1カ月だけでも、Zavalla市、Bastrop郡、Rusk郡、Orange郡など、枚挙に暇がありません。
先述した昨年のテキサス大寒波では、人口の40%にあたる1200万人に沸騰指示が出ました。州が発電施設の寒さ対策を怠ったことによる、大規模な停電発生に伴う浄水施設の水圧低下、水道施設の寒さ対策を怠ったために水が凍ったことが原因です。
テキサス州のインフラに問題があることは長年指摘されています。水道水の水質違反も州のあらゆる地域で起こっていて、データを見ると蛇口から出てくる水を飲むのが怖くなるほど。特に非白人地域や田園地域に問題が集中していると指摘されているんです。
連邦政府や州政府にとっての「インフラ」は道路であることが多く、水道インフラに割かれる意識も予算も不十分というのが現状のようです。問題が発生するたびに対症療法的に修復するのではなく、未来のために計画的なインフラ整備をしてほしいものです。
Reference: KHOU11, City of Houston (1, 2), Houston Chronicle, The Texas Tribune, FOX7, KLTV, Beaumont Enterprise, NPR, Environmental Working Group, Texas Water Resources Institute