食器洗い機は日々の家事負担を軽減してくれる非常に便利な家電であり、一度使い始めたら手洗いに戻れなくなったという人も多いはず。そんな食器洗い機には、乾燥効率を高めたり乾燥後の見た目をきれいにするリンス剤(すすぎ剤/乾燥仕上げ剤)を用いることがありますが、このリンス剤が食器に残留して腸のバリアを破壊する危険があるという研究結果が発表されました。
Gut epithelial barrier damage caused by dishwasher detergents and rinse aids – Journal of Allergy and Clinical Immunology
https://doi.org/10.1016/j.jaci.2022.10.020
Industrial dishwashers may harm your gut’s protective inner lining
https://www.zmescience.com/medicine/industrial-dishwashers-may-harm-your-guts-protective-inner-lining/
一般的な食器洗い機は、高温のお湯、洗剤、機械的作用を組み合わせて食器や調理器具の汚れを落としています。まず、高温のお湯を洗剤と混ぜて噴射することで食器にこびりついた汚れを落とし、再び高温のお湯をシャワーのように当ててすすいだ後、ヒーターの熱と送風を利用して食器を乾かすのが一般的な流れです。
この際、洗浄時に使用する洗剤はすすぎの工程で流されますが、一部の食器洗い機ではすすぎ時にお湯とリンス剤を混ぜることで、乾燥効率を高めたり乾燥後の見た目をきれいにしたりしています。スイス・チューリッヒ大学の医学教授であるCezmi Akdis氏は、「心配なのは、多くの家電製品で残ったリンス剤を除去するための追加の洗浄工程がないことです。このため、食器に有害物質が残ったまま乾燥されてしまうのです」と指摘しています。
そこでAkdis氏らの研究チームは、食器洗い機の洗剤やリンス剤が人間の胃腸に到達した際の影響を調べる実験を行いました。人間の腸の内壁は、必要な物質を取り込んで不要な物質を排除する腸管バリアで覆われており、腸管バリアの損傷は食物アレルギー・胃炎・糖尿病・肥満・肝硬変・関節リウマチ・多発性硬化症・自閉スペクトラム症・慢性うつ病・アルツハイマー病などに関連しているとのこと。Akdis氏は、「腸管バリアの損傷が20億件もの慢性疾患の発症を引き起こす原因になっていると想定しています」と述べています。
実験では、人間の腸細胞と、腸細胞を培養して作られたマイクロチップ上の腸管オルガノイドを使用し、食器洗い機の水使用量から割り出した希釈割合で、さまざまな市販の洗剤やリンス剤の毒性を評価しました。
その結果、一般的な希釈率の洗剤では細胞や腸内バリアに対する毒性がみられませんでしたが、リンス剤の使用量が多めで希釈率が1万分の1だった場合、腸内細胞に毒性を示して腸管バリアを破壊することがわかりました。また、リンス剤の希釈率が低用量である4万分の1だった場合でも、腸管バリアに悪影響が及んだと研究チームは報告しました。実際に研究チームは、業務用食器洗い機を用いて洗浄したカップに残留したリンス剤を抽出し、それが細胞に毒性を示すことも確かめています。
リンス剤がもたらす毒性作用の原因物質とみられているのが、界面活性剤の一種であるアルコールエトキシレートです。細胞がアルコールエトキシレートにさらされると、炎症に関連する遺伝子や細胞シグナル伝達タンパク質が活性化したとのことです。
Akdis氏は、「私たちが発見した影響は、食器洗い機のリンス剤が腸の上皮層を破壊する兆候であり、これは多くの慢性疾患を発症する引き金となる可能性があります」と述べました。
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