はじめてのカジノ(デジタルリマスター)

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カジノに挑む

所用でラスベガスに行くことになった。ラスベガスといえばカジノである。僕は賭け事にあまり興味がないのだが、せっかくなので本場のカジノに挑戦してみようと思った。ビキナーズラックという言葉もある。ひょんな事から億万長者、なんて事もない話ではない。

とはいえ、あまり期待し過ぎてもアレなので、軽い気持ちでカジノに挑む事にした。少しでも当たればおなぐさみ、という事で。

2006年10月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

宝くじの高額当選者を分析しよう

旅立つ前に、日本宝くじ協会がまとめた「宝くじ長者白書(H16年度)」から高額当選者の特徴を探ってみた。1000万円以上の当選金を受け取った高額当選者1,171人を対象に行ったアンケートをまとめた結果である。

まずは性別と年代から、高額当選者の特徴を探る。

 

高額当選者の性別

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高額当選者の年代

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男性が過半数を超えていて、年代は50代、60代が多い。

年齢・性別以外のプロフィールを見ると、職業は「会社員」が全体の約4割を占め、それに無職(17.8%)、主婦(14.9%)、自営業(11.6%)と続く。イニシャルでは、男性が「T.K」、女性は「K.M」の人が1番多いという。

ここまでは、僕のプロフィールに近くない。

自分のプロフィールを変える事は出来ないので、高額当選者たちの購入パターンを参考にしてみようと思う。高額当選者たちはどのようなパターンで宝くじを購入しているのか?

ビギナーズラックは本当か?

今回のカジノ挑戦における僕の唯一の強みは「ビギナーズラック」である。宝くじの高額当選者たちはどうだったのか? ビギナーだったのか?

 

宝くじの購入歴

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ビギナーじゃなかった。
10年以上買い続けてる人が一番多く、購入歴が浅いほど当たる確率も低くなっていく。

せめて掛け金の参考にしよう

プロフィールもダメ、ビギナーズラックもダメ、となれば後は購入枚数を参考にするしかない。高額当選した際、何枚の宝くじを購入していたのか? その枚数を参考に今回のカジノの掛け金としたい。

そもそも、アメリカのカジノと日本の宝くじを比較しても参考にならないのかもしれないが、そこはざっくりと「ギャンブル」という括りで自分を納得させた。

 

購入枚数

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無回答を除くと、購入枚数は「10枚」が一番多かった。

という訳で、今回は一番安い宝くじ約10枚分に相当する「10$」を元手にカジノに挑戦することにした。

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10$紙幣とラスベガス行きのチケット。成田空港の北ウイングにて
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配当金を何に使うか、一人ブレスト

日本からラスベガスまでは直行便が出ておらず、カリフォルニア州のサンノゼで一度乗り換えが必要だ。サンノゼまで成田から12時間、サンノゼからラスベガスまでは1時間半。ほぼ半日かけての移動となる。時差はマイナス16時間。木曜日の16時に日本を出ても、ラスベガスに到着するのは木曜日の13時だ。日米両国で木曜日を2回過ごす事が出来る訳だが、いずれにしても長時間の移動になる。

ラスベガスで大当たりしたら何に使うか。機上で一人ブレストを行った。

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長時間のフライトでべガスへ

まず、どれくらいの配当金があり得るのか?
事前にネットで調べたところ…、

・1996年、ヒルトンホテルのスロットマシンで1190万$(約14億円)の高額配当金。当時の世界記録に。

・2003年、エクスカリバーホテルのスロットマシンで3971万$(約48億円)。世界記録を更新。

という事になっていた。
スロットマシンで何十億円の世界なのだ。ざわざわする。

さて、何に使おう。

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夕食前のドリンクサービスでビールを頼んだら、5$かかった

その前に配当金に税金はかからないのか?
更に調べると……、

スロットマシンで1200$以上の配当を当てると、ネバダ州居住者以外は30%の税金が発生するらしい。更に成田空港でも課税対象となる。50億円当たっても、ざっくり半分くらいは税金で持っていかれてしまう計算だ。それはあまりにも切ない。

もう少し調べると……、
どうやらポーカー、ブラックジャック、ルーレットなどのテーブルゲームでの配当金には税金がかからないらしい。

よし、テーブルゲームでいこう。

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夕食はビーフを選択。アメリカンビーフなのか疑問を抱きつつビールをもう一杯注文。更に5$。飛行機に乗って1時間とちょっとで10$使ってしまった

配当金額の可能性は分かった。挑戦するゲームも決まった。
後は配当金を何に使うか、である。

ここで再び「宝くじ長者白書(H16年度)」のアンケート結果を見てみよう。
宝くじの高額当選者たちは当選金を何に使ったのか? 上位5つを抜粋してみた。

 

当せん金の使い道(複数回答)

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高額な当選金の多くは貯蓄にまわっていた。やはりまずは貯蓄、という線が堅実なのであろう。

しかし、今回のカジノで当たるのは50億円からの大金である。借入金の返済、土地・住宅の購入、旅行、車の購入、すべてをクリアした上での貯蓄も可能である。

そうこうブレストをしているうち、サンノゼでの乗り換えも終わり、飛行機はラスベガスの街へと近づいていく。

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手前が砂漠で奥はラスべガスの街

サンノゼから1時間半、しばらく砂漠が続いたかと思うと突如街並が現れる。あれが50億円の当たる街、ラスベガスである。

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いざ、ラスベガス

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ラスベガスは空港内にスロットマシンがある

空港からホテルに向かうバスの中からラスベガスの街を見る。ピラミッドの形をしたホテルがあったり、エッフェル塔を模した建物があったり、大きなライオンの像があったり、街全体が大きな1つのテーマパークのようである。

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24時間眠らない街、ラスベガス

夜になるとほぼ全ての看板が電飾に彩られる。

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遊園地みたいなスロット場の看板
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来年爆破される老舗ホテル「スターダスト」のネオン
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マクドナルドもピカピカしている
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デニーズだってピカピカ
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生きてるマネキン
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一体この街には何個の電球が使われているのか?

電飾だらけの街並は夜が明けるまでこの調子らしい。マッチョなディズニーランドみたいで、パワー全開、瞳孔開きっ放し、といった風情だった。

これが、50億円の当たる街の中なのだ。
そのパワーに圧倒されそうになる。

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いざ、カジノ

街並の勢いに負けないうちに、早々にカジノに挑戦する事にした。ターゲットは、今回の宿泊先でもある「サーカスサーカス」というホテルである。ほとんどのカジノはホテルの中に併設されているのだ。

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ピエロの看板が目印です

サーカス小屋をイメージして建てられたホテルなので、メインキャラクターはピエロであった。

ピエロのようにおどけた振りをしてみせて、プレーヤーからお金を巻き上げるつもりであろうか?

騙されるものか。

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10$紙幣を持って
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1200$以上の配当がある場合、パスポートの提示が必要なのでもちろんパスポート持参
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配当金を持ち帰るためのバッグも用意した

これくらいのバッグで50億円は収まるだろうか? 収まったとしても台車が必要かもしれない。カジノ場に台車の用意はあるのか?

配当金の運搬に関し不安は残るが、いよいよ、サーカスサーカスのカジノに挑む。

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でも、まったくやり方が分からない

多くの観光客でにぎわうカジノ内であったが、所々に警備員が立っていて周囲を警戒している。何せ50億円である。人々の欲望が渦巻いているのだ。ちょっとした事から大きな事件に発展する事も考えられる。その為、カジノ内の警備は厳重なのだ。

そういえば、ラスベガス空港の入国審査はとても厳しいものだった。両手人差し指の指紋を採られ、顔写真も撮影された。カジノにはそこら中にカメラが設置されていて、少しでも悪い事をすると、空港で撮られた顔写真と照会されすぐに身元が分かってしまう仕組みらしい。

50億円当たったとしても、紳士な振る舞いを心がけよう。
いきなり発狂して警備員に取り押さえられないように。

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カジノ内にて

しかし、ここで大きな問題が浮上する。

テーブルゲームのやり方が分からないのだ。

4ページまで来て何を今更、とご批判の声が聞こえてきそうだが、誰よりも自分で自分に腹を立てているので、ここは一つご勘弁いただきたい。配当金額とか税金とか、そんな事を調べる前にゲームのやり方だろ。

もうカジノの中に入っちゃったので、ここまで来てあきらめる訳にもいかない。

他のお客さんがいないテーブルで、ディーラーが優しそうな人。出来れば日本語の分かりそうな人、という条件でテーブルを探す事にした。

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条件に見合うテーブルが見つかった

しばらくカジノ内をウロウロして、ようやく条件を満たすテーブルを見つける事が出来た。ディーラーのおばちゃんは日系人らしく、日本語で「やってみますか?」と言っている。僕以外にお客さんはいない。

ディーラー「最低ロットは10$だけど、いい?」
住「ええ、10$だったら持ってます」

テーブルの上に10$紙幣を出すと、ディーラーのおばちゃんがそれを受け取り、代わりに黄色いチップを2枚渡してくれた。

住「………えっと」
ディーラー「ブラックジャック。分かる?」
住「ええ、21が一番強い?」
ディーラー「そう、一回練習でやってあげるわ」

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ブラックジャックで勝負だ

マジシャンのような手つきでトランプの束を手に取るおばちゃん。僕に青い無地のカードを渡し、好きな所に挟めと言う。適当な所に青いカードを挟むと、そこからトランプの束を2つに分け、僕の手元にカードを飛ばす。1枚、2枚。

ディーラー「中を見てみて」

見るとスペードの10とハートの10。

住「これで、いいみたいです」
ディーラー「そう? じゃあ私のも開けるわね」

ディーラの手元にはカードが2枚で合計は16。

ディーラー「あなたの勝ち。分かった?」

この勝ちの後、2回連続で僕の勝ちが続いた。チップの数は6枚。これはもしかして、もしかするか?

その後、僕の出身地の話や今回の旅の目的などを聞かれつつ、ゲームが続く。おばちゃんは優しい口調ではあるが、目が笑っていない。このカジノに立つまでに、様々な修羅場をかいくぐって来たに違いない。塀の中の旦那さんは元気だろうか。

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次のお客さんがやって来た

結局、2回勝った後は全敗で、あっという間に6枚のチップがなくなった。席に着いてから5分も経っていない。

50億円の夢はあっという間に覚めてしまった。

もちろん最初から50億円当たるとは思っていなかった。でも、もしかしたら1200$くらいは行くかもしれないと踏んでいたのだ。そうしたら新しいデジカメ買おうと決めていたが、そんな思いもたった5分で粉砕された。やっぱり、地道に働けって事ですね。仕事がんばります。

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大きなバッグはお土産入れに役立ちました

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