Googleが失敗に終わった気球インターネット計画の後継プロジェクト「Aalyria」を始動、専門家は「死屍累々の分野」と懐疑的

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Googleが、2021年に終了させた気球によるインターネットサービス計画「Loon」の技術の一部を転用し、レーザー通信技術をベースとした新しい高速通信プロジェクトの「Aalyria」を立ち上げたことが報じられました。AalyriaはLoonのような子会社ではなく、Googleとは独立したベンチャーとして展開される方針とされています。

Aalyria | Connectivity Everywhere
https://www.aalyria.com/

Google spins out secret hi-speed telecom project called Aalyria
https://www.cnbc.com/2022/09/12/google-spins-out-secret-hi-speed-telecom-project-called-aalyria.html

Google Loon Technology Lives On at Aalyria Technologies – Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-09-12/google-loon-technology-lives-on-at-aalyria-technologies

Googleの親会社・Alphabetは2013年に、気球を使って発展途上国などにネットインフラを整備するLoonを発表し、2018年には商業展開にこぎ着けるなど一定の成果を収めましたが、技術的な課題などからプロジェクトは2021年に頓挫しました。

Google発の気球で世界中にインターネットを届ける「Project Loon」が完全シャットダウン – GIGAZINE


アメリカのニュースメディア・CNBCは2022年9月12日に、GoogleがLoon終了後も水面下で取り組んでいた「Minkowski」というコードネームの高速通信ネットワークプロジェクトを、Aalyriaというスピンアウト企業としてGoogleから独立させると報じました。Googleは、2022年初頭には既に10年分の知的財産・特許・オフィススペースを含む物的資産をAalyriaに譲渡していたとのことです。

Aalyriaは2022年9月11日のTwitterへの投稿で、衛星通信技術サミットであるWorld Satellite Business Weekに合わせて「ステルス状態から登場する」と述べています。


Aalyriaの技術基盤は大きく分けて2つあり、1つ目はTightbeamと呼ばれるレーザー通信技術です。Aalyriaが行ったTightbeamの実証実験では、本社の屋上から20マイル(約32km)離れた山頂に信号を送ることができたほか、100マイル(約160km)離れた飛行機にあるバレーボール大の受信機に信号を送信することにも成功したとのこと。Aalyriaのクリス・テイラーCEOは、この技術により飛行機の全座席に1Gbpsの通信を提供できると述べました。

そして、2つ目はLoonの気球同士のネットワーク調整に使われていたSpacetimeというソフトウェアシステムです。Aalyriaはこの技術を用いて、人工衛星・飛行機・船舶・自動車などを含む数万もの移動体間のネットワーク接続を管理するとしています。

伝えられるところによると、Alphabetの子会社により開発が進められていたLoonとは異なり、AalyriaはGoogleが株式の一部を保有するのみで基本的にはGoogleやAlphabetとは独立した企業になるとのこと。Aalyriaは既に、国防総省傘下の組織である国防イノベーション・ユニット(Defense Innovation Unit)と契約し、870万ドル(約12億4000万円)の資金調達に成功しています。

Aalyriaの顧問を務めている元アメリカ国防副長官のロバート・ワーク氏は、「私はAalyriaがやっていることを非常に狭い地域でできるテクノロジー企業と数多くの仕事をしてきましたが、地球全体をカバーできるのはAalyriaだけです」と語りました。


一方、実績のあるSpacetimeはともかく、レーザーによる無線通信は多くの企業が挑戦しながらも玉砕してきた分野であるとして、実現性を疑問視する声も上がっています。無線通信技術の専門家であるNathan Kundtz氏はBloombergに対し、「私は誰かが物理学の基本的な問題を解決したと主張し始めたら、つい身構えてしまいます。この分野は、夢破れた企業の死体が散乱しているような場所なのです」と述べて、Tightbeamに対して慎重な見方を示しました。

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