GPSが位置情報を測定する仕組みを分かりやすく解説するとこんな感じ

GIGAZINE
2022年01月19日 23時00分
メモ



衛星を利用して現在地を測定するGPSは、地図アプリやカーナビなど多くの場所で利用されており、現代人の生活にとって必要不可欠なシステムとなっています。そんなGPSの位置測定メカニズムをカメラの仕組み地球の自転・公転などの分かりやすい解説ページを作成してきたBartosz Ciechanowski氏が解説していたので、まとめてみました。

GPS – Bartosz Ciechanowski
https://ciechanow.ski/gps/

◆平面上の位置を測定する方法
Ciechanowski氏は、最初に地球ではなく以下のような緑・青・赤の3つの点が配置された平面を用意して、平面上の黄色い人形が自らの位置を測定する方法を解説しています。


平面上の位置を測定するの必要な情報は「緑・青・赤の点の位置」と「緑・青・赤の点から人形までの距離」です。「点と人形の距離」を測定したら、それぞれの点を中心に「点と人形の距離」を半径とする3つ円を描くと、円の交点が人形の位置となります。このような距離を基に位置を求める方法は三辺測量と呼ばれ、GPSにおける位置測定の基本となっています。


距離を時間で割ると速さが算出でき、速さに時間を掛け合わせると距離が算出できることは誰もが知っているはず。この法則を利用すると、速さが一定である「音」などを利用して距離を算出することが可能です。例えば「人形が発した音が届いた時点で各点が発光する」という仕組みを作れば、人形は「自らが音を発したタイミング」から「各点が発光するタイミング」までの時間を測定することで、各点までの距離を導き出せます。


上記のように距離を導き出すことで、「自らが発した音が点に到達するまでの時間」さえ分かれば三辺測量を用いて位置を割り出すことができます。これで、物差しなどで距離を測定せずとも位置を割り出せるようになりました。


しかし、以下のように人形が2体存在する場合、どちらの人形から発せられた音に反応して点が発光したのか判別できなくなり、位置を割り出すことが困難になります。2体の人形が同時に音を発することは珍しいかもしれませんが、実際のGPSと同じように何十億もの対象が存在する場合は、複数の対象物が同時に音を発する状況が生まれやすくなり、位置の測定が困難となってしまいます。


この問題を解決するスマートな方法は、「自らが発した音」ではなく「点から発せられた音」を利用することです。こうすることで、例え数十億の人形が同時に位置情報を求めたとしても他の人形と干渉することなく位置情報を求められるようになります。しかし、「点から発せられた音」を利用する場合は「自らの時計と点の時計をピッタリ合わせる」という操作が新たに必要となります。

「自らが発した音」を利用していた時は、「自らが音を発したタイミング」と「各点が発光するタイミング」の両方を自らの時計で測ることができたので時計を合わせる必要ありませんでした。しかし、「点から発せられた音」を利用する場合は「点が音を発したタイミング」は点の時計で測り、「音が自らに届いたタイミング」は自らの時計で測る必要があります。このため、両者の時計がピッタリ一致していないと正確な距離が算出できなくなり、位置情報の測定が不可能となってしまうのです。


実は、この時計合わせの問題にもスマートな解決策が存在しています。3つの点の時計をピッタリ同期させた上で同時に音を発信した場合、人形の時計がずれていると「音が聞こえた時間」を基に算出した距離を半径とする3つの円が1カ所で交わることはありませんが、時計がピッタリ一致している場合だけは3つの円が1カ所で交わります。つまり、たとえ自らの時計がずれていても、3つの点が発した音が全て聞こえた後に3つの円が1カ所で交わるように時計を調整すれば、時刻を合わせながら自らの位置を測定できるというわけです。


時計合わせと測位が同時にできるなら時計合わせは必要ないように思われますが、時計を合わせることには測位の高速化というメリットがあります。時計がピッタリ合っている場合、以下のように2つの音が聞こえた時点で位置情報を2地点に絞り込むことができます。地球規模の広さで考える場合、この2地点の片方は基本的に自分がいる地点とは遠く離れた地点を示すので、2つの音が聞こえた時点で位置を判断できるのです。


◆3次元の世界で位置を測定する方法
上述の測位方法は平面を対象としたもので、高低差がある現実世界でそのまま利用することはできません。例えば以下のように人形が高い位置に存在する場合は、点からの距離を基に円を描いても1カ所で交わらなくなってしまいます。


このような3次元に世界で位置を測定するには、「円」ではなく「球」を用いればOK。位置情報を求めたい地点からの距離を半径とする球を描けば3つの球の交点が2カ所できます。


現実の地球で上記の方法を用いると、2カ所の点のうち片方は地中や深海を示すことになります。このため、「球」を用いることで平面と同様に位置を測定できます。


◆地球上の位置を測定する方法
上述の測位法を現実の地球に当てはめると、「音」を利用すると位置測定の度に騒音が鳴り響くことになるため、音の利用は適していません。音の他に速度が一定なものとしては「光」がありますが、可視光は雲・霧・ホコリ・煙などで簡単に遮られてしまいます。このため、実際のGPSでは雲やホコリに遮られにくい「電磁波」が用いられています。

また、電磁波の発信源が地表付近にある場合、山や丘などの地形を乗り越えることができませんが……


以下のように、電磁波の発信源を高所に配置すれば、地形の影響を受けずに電磁波を対象物まで届けられます。


ただし、実際に世界最高・エベレストよりも高い塔を建造することは困難です。この問題を解決するのが、衛星軌道上に電磁波の発信源を送りこむというアイデア。GPSでは約30基の人工衛星によって、アイデアを実現し、世界中で高精度な測位が可能となっているわけです。


また、上述の通り測位システムには正確な時刻を刻むことが求められますが、GPS衛星には30万年に1秒の誤差しか発生しない原子時計が搭載されており、時刻の正確さが確保されています。

なお、Ciechanowski氏による解説ページには上記の内容をマウスでグリグリ動かしながら理解できるデモが用意されているので、興味を持った場合は実際にアクセスしてみるのがオススメです。

GPS – Bartosz Ciechanowski
https://ciechanow.ski/gps/


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