2022年11月以降、中国ではゼロコロナ政策に対する不満を持つ市民によって大規模な抗議デモが繰り広げられています。しかし、中国の国営メディアでは抗議デモに関する情報が報じられておらず、中国国内のインターネット上でも厳しい検閲が行われています。中国ではインターネット上の検閲を回避するためにVPN(仮想プライベートネットワーク)を介した通信が広く行われていたのですが、新たに、中国政府がTikTokを運営するByteDanceなどの大手テクノロジー企業にVPNを介した通信にも監視を広めるように通達したことが報じられています。
China Clamps Down on Internet as It Seeks to Stamp Out Covid Protests – WSJ
https://www.wsj.com/articles/china-clamps-down-on-internet-as-it-seeks-to-stamp-out-covid-protests-11669905228
中国では「金盾」と呼ばれるインターネット検閲システムが稼働しており、中国政府が有害と判断したサイトへのアクセスが厳しく制限されています。アクセス不能なサイトにはTwitterやFacebookなどのSNSが含まれている他、反政府的な意見は規制当局に発見され次第削除されてしまいます。
そんな中国では、TwitterやFacebookなどのサービスにアクセスするためにVPNが広く用いられていました。しかし、2017年にはVPNが中国で違法となり、2022年には「誰でもVPNを使えるはず」という意見を投稿したスキー選手が「中国国内の状況を理解していない」として非難を浴びる事態も発生しています。
中国代表なのにInstagramを使用できるアメリカ生まれの金メダリストが「誰でもVPNを使える」と投稿して非難を浴びる – GIGAZINE
上記のように中国ではVPNを用いることも難しい状況となっていますが、ウォール・ストリート・ジャーナルによると中国政府はVPNによる接続を常時監視しているわけではなく、依然としてVPNを用いて国外のサービスを利用しているユーザーが多く存在するとのこと。また、データ分析企業「Sensor Tower」の調査では、Twitterアプリの中国国内でのダウンロードランキングが抗議活動前の104位から抗議デモの始まった2022年11月には8位にまで上昇したことが明らかになっています。
そんな状況の中、中国はByteDanceを含む複数のテクノロジー企業に対して「検閲チームに人員を追加してVPNに対する監視も行い、特に抗議活動に関連するコンテンツについて注意を払うこと」という指示を送りました。
中国の大手ECサイト「Taobao(淘宝網)」では2022年に入ってもVPNに関する製品が販売されていました。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、2022年12月1日でTaobaoでVPNに関する情報を検索した結果、「関連するアイテムは見つかりません」といったメッセージが表示されたとのことです。
中国企業である以上、当局の指示には逆らえないByteDanceとTikTokですが、国外では中国政府の干渉に対する懸念の解消に力を入れています。TikTokの周受資CEOは、The New York Timesが2022年12月1日に開催したカンファレンスで「中国政府がアメリカのTikTokユーザーのデータにアクセスするのではないか」と問われて、「アメリカのユーザーデータの管理サーバーの移行を進めており、移行後のサーバーにはアメリカに居住する従業員しかアクセスできないようにします」と回答。「アメリカのデータと中国のデータはまったく異なるアルゴリズムで管理されています」とも述べて、ユーザーデータの安全性を強調しました。
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