最新Androidタブレットの「業務用」事情、その最先端は「バッテリー無し」!? 

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最近はグランピング施設でも!業務用Androidタブレット導入が再活性化

 レノボジャパンの喜多氏によると、飲食店での利用が昨年の段階からさらに増加。特に新型コロナ対策の緩和によって新規投資が増えているという。それにプラスして今年は、飲食店以外の小売店が増えていることを実感しているとのこと。代表的なのが、在庫管理の端末だ。タブレット端末を持ち歩きながら店舗内の在庫確認をしたり、さらに発注まで行ったりする用途として導入されている。

 また、社員間の連絡に使う用途もある。Microsoft TeamsやGoogle Meetなどを使って連絡や社内会議を行ったり、イントラネットを見たりといった使い方だ。

 その派生的な使い方として、店舗間の連絡に使われるケースもある。「特徴的な事例としては、チェーン展開しているスーパーマーケットがあります。例えば、店舗Aでトイレットペーパーが欠品しているので、今日の発注分が来るまで店舗Bに在庫を貸してくれないかと連絡したりするような、店舗間で在庫のやり取りに使われている事例です」(喜多氏)。

 もう1つ、これは特殊なケースだが、チェーン店での陳列管理の事例がある。このチェーンでは、本部から店舗に商品の並べ方を写真付きで指示し、それを各店舗がタブレット端末で受け取って指示されたとおりに並べる。これはPOSシステムと連携しており、商品の並べ方の違いによる売上への影響を調査して戦略的なマーケティングにつなげているという。

 そのほか、大手家具チェーンや自動車用品店チェーンでは、在庫管理にプラスして接客用にも使う例を喜多氏は挙げた。これらの店舗では商品が多岐にわたる。家具店では、来店者が事前に商品をある程度選定してから来店し、店内のどこにあるかを店員に尋ねたりする。自動車用品店では、どのパーツがどの車種のどの年式に適合するか全て分かるのはかなり熟練のスタッフに限られる。そこで、店員が手元のタブレット端末で調べて客の質問に答えられるようにするというものだ。この自動車用品店チェーンではそのほか、タイヤ交換やオイル交換、車検などのピット予約もタブレット端末から行えるようになっているという。

 加えて、テックウインドの下村氏は、ホテルの客室用端末として使われる事例が増えていることを挙げた。宿泊客が周辺地図を見たり、ルームサービスをフロントにオーダーしたりするといった用途だ。タブレット端末であれば、ソファーに座ったりベッドに寝転がったりしながらでも操作できる。

 さらに「最近増えているものに、グランピング施設での導入があります」と下村氏。例えば、地図を確認して周囲の池や山などの情報を提供する用途がある。また、通常のホテルと同様に、フロントにオーダーする端末としても利用されており、グランピング施設ならではというところでは、ルームサービスに近いものだが、バドミントンのラケットなどアウトドア道具のオーダーなどに使われている例もあるという。

タブレット端末なのに、なぜ「バッテリーレス」のニーズが?

 最近では業務用に使うタブレット端末として、バッテリーレスのモデルもLenovoでは用意している。文字通りバッテリーを内蔵せず、常に外部から電源の給電を受けて動作するものだ。「バッテリーレスのモデルは、車載や、オフィスビル内で固定して使う用途を狙って商品化しています」と喜多氏は言う。

 車載用途では、観光バスで車内サイネージとしてLenovoのAndroidタブレットが採用されている。また、タクシーの座席前で広告を表示する用途にも、各社のバッテリーレスのタブレットが使われているという。

 車載の特殊なケースとしては、ゴルフ場のゴルフカートの後部座席に、タクシーと同様に広告を表示する用途にも使われている。もともとはバッテリー内蔵モデルが使われていたが、バッテリーレスモデルへの検討も進んでいるという。

 一方のオフィスビル内での使い方としては、受付端末がある。例えば、貸オフィスやレンタル会議室などを展開している事業者では、来場ゲートにタブレットを置いてQRコードで入館できるようにする用途で採用している事例がある。

 この事業者では、以前はバッテリー内蔵モデルを使っていたが、受付端末は電源をつないだまま常時稼動するため、バッテリーが膨張してくる可能性もある。これまで安全上の問題は発生していないというが、懸念は払拭できない。また、バッテリーが膨張すると、壁の取り付け器具に入らなくなったり、車載金具に入らなくなったりする。そこで、バッテリーレスモデルへのニーズがあるのだという。

 一方、下村氏によると、ショッピングセンターの問い合わせコーナーの受付にタブレット端末を置いて来店客の対応をするという事例や、24時間営業の飲食店のテーブルオーダー端末でもバッテリーレスモデルの導入実績があるとしている。

 現在、Lenovoのバッテリーレスの法人向けタブレットは「Lenovo Tab K10 バッテリーレスモデル」が販売されている。バッテリー内蔵の「Lenovo Tab K10」に追加された兄弟モデルであり、それぞれにLTEモデルとWi-Fiモデルがある。

Lenovo Tab K10 バッテリーレスモデル

 プロセッサーにMediaTek Helio P22Tを搭載し、同社のラインアップにおいてはミドルレンジに位置付けられる。IP52防滴仕様で、ジャイロセンサーも搭載している。

 OSはAndroid 11で、Android 12へのアップデートも計画している。喜多氏によると「Android 13は検証中だが、実施したい意気込みでいる」とのことだ。

 また、Googleによる企業向け端末管理機能「Android Enterprise」についてGoogleが認定する「Android Enterprise Recommended」を取得している。

 Tab K10 バッテリーレスモデルは法人向けチャネルのみで販売しており、長期(2年以上)の製造を計画しているという。

ハイスペックAndroidタブレットを「オフィス向け」に。PCとの連携も

 もう1つ、LenovoがAndroidタブレットで力を入れているのが、ハイスペックなタブレットのオフィス向け用途だ。

 「Lenovo Tab P12 Pro」は、2022年1月に発売された、同社のタブレットのなかでもフラグシップにあたるモデルだ。キーボードが同梱されており、「比較的、PCに近い使い方を想定しています。Microsoft OfficeやGoogle Workspaceなどを中心に利用し、それにプラスしてコミュニケーションツールとしても使うというものです」と喜多氏は説明する。

Lenovo Tab P12 Pro

 ターゲットとしては例えば、PCをデスクで使いつつ、立って仕事をすることも多い人などが挙げられる。また、年齢の高い経営層でキーボードを打つのが苦手な人が、タッチ操作であれば「承認します」などの短い定型句が比較的簡単に入力できるとうことで、ユーザー層として狙っているという。

 画面は12.6型と大型で、キーボードとスタンドカバーが同梱され、前述の通りPCに近い使い方が可能だ。また、P12 Pro専用の付属ペン「Precision Pen 3」で滑らかな手書き入力を実現する。このペンは本体裏の収納スペースにぴったり格納して充電できる。

 プロセッサーは、ハイスペック級のSnapdragon 870。画面は有機ELディスプレイ(OLED)で、リフレッシュレートも120Hzなので、スクロールなどの動きが滑らかだ。クアッドスピーカーを搭載してDolby Atmosに対応し、Web会議などを高音質で行える。バッテリーは10200mAhで、最大17時間稼働する。

 P12 Proのもう1つの特徴が、PCのワイヤレスサブディスプレイにもなることだ。サブディスプレイにしたときにもタッチ操作が可能なので、Precision Pen 3と組み合わせてペンタブレットのように使うこともできる。ワイヤレスで接続するため、例えば、ちょっと席を離れるときにP12 Proだけを持っていくことでメールチェックなどの簡単な操作もできる。

Lenovo製Androidタブレット用のAPIコレクション「CSDK」が機能拡充

 このように業務用端末としてAndroidタブレットを使うには、例えば、いたずら防止のために電源ボタンでシャットダウンできなくするなど、OSの深い部分でのカスタマイズが必要になる。そのためにLenovoが全タブレット端末に最初から組み込んでいるのが「CSDK(Commercianl Software Development Kit)」だ。

CSDKとは

 CSDK(Commercianl Software Development Kit)は、Android端末をOSの深い部分でカスタマイズするためにLenovoが全端末に組み込んでいるソフトウェアだ。AndroidのLinuxカーネルの上で、Androidランタイムおよび各種アプリケーションフレームワークと同じレイヤーに位置し、システムのカスタマイズのためのAPI群をアプリケーションに提供する。

 例えばWi-Fiの接続の無効化や、カメラの無効化、ソフトウェアのアップデートのブロックなどを実現するアプリは、root権限がないと作れない。ただし、root権限を渡してしまうとタブレット端末そのものも壊しかねない。

 そこで、LenovoではCSDKとして機能を用意し、アプリを開発する側がAPIとしてCSDKを利用できるようにしている。CSDKのAPIを使うには、Lenovo本社とNDA(秘密保持契約)などを結んでライセンスキーを発行してもらう必要がある。

 CSDKのバージョンはAndroidのバージョンに紐づいており、Android 11にはCSDK 4.0が対応する。現在、Android 12に対応するCSDK 5.0も準備中だ。

 喜多氏に、CSDK 4.0で加わった新機能について聞いた。追加された機能としては、Androidのバージョンが上がったことで変わったものや、顧客企業の要望によるものなどがある。

 まずは、アプリケーション管理の機能が増えた。他のアプリの上に重ねて表示することの有効・無効や、ピクチャーインピクチャーの有効・無効、使用状況へのアクセスの有効・無効などを設定できる。

 Wi-Fi関係では、アクセスポイントのブラックリストやホワイトリストの機能が加わった。アクセスポイントをホワイトリストやブラックリストに追加・削除したり、リストを取得したりできる。

 なお、アクセスポイントのブラックリストやホワイトリストの機能は、顧客企業からの要望により開発されたものだと喜多氏は説明した。店舗の来店客が自分のモバイルルーターにつないでしまう事例は、日本ではあまりないが、海外では見られるという。また、日本でも、隣の店舗のWi-Fiや公共Wi-Fiなどに接続するのを防ぐ意味があるという。

 ステータスバーなどを非表示にしてアプリを全画面表示するKIOSKモードでは、ステータスバーでの通知を禁止できるようになった。

 ロゴやランチャーなどを変更するカスタムUIでは、カスタマイズ項目が増え、デフォルトの音声アシスタントアプリやダイヤラー(電話をかけるソフト)を変更可能にするなどの対応を行った。

 セキュリティ面では、Androidの許可関係がバージョンが上がるごとに強化されているため、それに対応する項目が増えている。

CSDKで提供されるAPIのカテゴリーおよび主な項目

  • デバイス管理
    電源キーの無効や、デバイス再起動など
  • アプリ管理
    アプリのインストール禁止や、特定アプリへのデバイスオーナー設定など
  • 接続管理
    Wi-Fiの禁止や、Bluetoothの禁止、APN設定の禁止、SIMカードやSDカードの無効など
  • KIOSKモード
    ステータスバーの非表示や、全画面表示など
  • カスタムUI
    起動時のロゴ設定など
  • 環境設定
    システム内蔵時間の設定や、スリープの禁止など
  • 各種設定
    セーフモードの無効や、USBデバッグモード設定の禁止など

「CSDK」はどう活用されている?起動時のロゴ表示、Wi-Fi接続先の制限も可能に

 テックウインドでは、このCSDKによるLenovo製Androidタブレットのカスタマイズサービス「APIカスタマイズサービス」を2021年から提供している。

 前述したグランピング施設の事例では、単一のアプリだけ利用できるようにしたいという要望に対して、CSDKによるカスタマイズでKIOSKモードを実現している。

 また、とある日本語学校では生徒1人1台のタブレット端末を用意しているが、学校のオリジナリティを高めたいということで、起動時に表示されるメーカーのロゴやアニメーションを学校のロゴや学校のオリジナルキャラクターに変更した。さらに、学習以外の用途で使えないように、Google Playを使えないようにするといったカスタマイズもCSDKで施したほか、Wi-Fiアクセスポイントも制限。教室で学習目的だけに使えるように、接続先を教室のアクセスポイントに固定するというものだ。

 テックウインドでは近く、この「APIカスタマイズサービス」でCSDK 4.0に対応する予定だ。これにより、Android 11を搭載したバッテリーレスモデルにおいてもAPIカスタマイズサービスを提供できることになる。バッテリーレスモデルはもともと業務用端末としての使い方を想定しているため、CSDKのKIOSKモードやWi-Fiアクセスポイント固定、ロゴ変更といったサービスメニューが活かせるということだ。

 そのほか、こうしたカスタマイズされた端末を現場でスムーズに導入できる状態で出荷するためのキッティングサービスもテックウインドでは対応している。下村氏によると、キッティングサービスでは最近、特定のアプリを入れてほしいという要望が増えているのだそうだ。顧客企業のアプリをインストールするようなケースだ。

 デバイスの設定以外でも、タブレットの箱に備品を同梱したり、タブレットの画面に保護フィルムやコーティング剤を適用したりといったこともキッティングサービスで対応する。ちなみに同梱する備品としてユニークなところでは、タブレットの画面を拭く布を同梱したり、学校では紙のノートを同梱した事例もあるという。

 こうしたカスタマイズサービスやキッティングサービスの引き合いは、世の中の動向に左右される。もともと飲食店での導入事例が増えていたところでコロナ禍となったために一時的に設備投資が減っていたというが、最近再び発注が増えてきていると下村氏は明かした。

Googleとのパートナーシップで、法人向けのさらなる活用を拡大

 最後に、法人向けのAndroidタブレットについて、今後の展望を両社に聞いた。

 テックウインドではまず、前述したようにAndroid 11+バッテリーレスモデル+CSDK 4.0のサービスを伸ばしていきたいと下村氏は述べた。また、ハイスペックのAndroidタブレットであるP12 Proを拡販したいという。例えば、専門学校の顧客が増えているため、クリエイター系の学校で活用できないかなど、今まで展開できなかったところにも提供していきたいと考えているとのことだ。

 さらに、キッティングサービスが他社にない強みだと下村氏は考えており、実際にキッティングサービスで何ができるか問い合わせも多いという。そこで、分かりやすいサービスメニューで訴求し、より顧客の立場に立ったサービス提供を目指したいと語った。

 レノボジャパンでは、法人向けタブレットは好調で、引き続き魅力的な商品を提供していきたいと喜多氏は述べた。

 さらに、バッテリーレスモデルのような、より業務色の強い製品や、PCの「YOGA」シリーズのようにユニークなスタンド付きモデルなど、ニーズに合わせた幅広いラインアップを拡充していきたいという。

 加えて、Androidタブレットを法人向けに展開していくためにはGoogleともしっかりパートナーシップを組んでいくと喜多氏は語った。Googleによる企業向け端末管理機能「Android Enterprise」に対応し、全機種で「Android Enterprise Recommended」認証を通すべくトライしているところだという。

 「これができれば、店舗や特定業務のほか、オフィスで使うタブレット端末などで、MDMやEMMとともに使うのがスムーズにできるのではないかと思います」と喜多氏は説明。それらさまざまな用途を通して「法人のさらなる利用を期待したいと思っています」と語った。

(協力:テックウインド株式会社)

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