11月8日、アメリカで中間選挙が行われました。2024年に行われる米大統領選を占う注目度の高い選挙です。ドナルド・トランプ元大統領が復活するかどうかが焦点のひとつとなっており、多いに議論が盛り上がりそうです。そうなると発生するのがフェイクニュースです。
2016年、2020年の大統領選挙でも多くのフェイクニュースが出回りました。「ローマ法王がトランプ氏を支持した」「クリントン氏陣営の関係者が人身売買に関わっている」などのニュースがバズり、広く拡散したのです。今回の選挙でもフェイクニュースは出回ることでしょう。
フェイクニュースによる被害はアメリカだけでなく、世界中で起きています。日本でも2011年の東日本大震災発生時には、被災地で外国人による犯罪が発生しているというフェイクニュースが出回りました。2016年の熊本地震では、動物園からライオンが逃げ出したという内容をTwitterに投稿して神奈川県に住む会社員の男が逮捕されています。
コロナ禍で拡散したフェイクニュース、調査結果では若い人ほど信じてしまう傾向
2020年からのコロナ禍でもさまざまなフェイクニュースが流れました。総務省が出した「新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査」によると、フェイクニュースを見聞きしたことがあると回答した人は72%もいたそうです。そのうち情報を拡散した人は35.5%にのぼりました。
「コロナウイルスはお湯を飲むと予防になる」という情報を見聞きした人のうち、それを信じた人は8.1%、信じなかった人が65.5%、真偽が分からないという人が26.5%でしたが、「こまめに水を飲むと予防になる」という情報を見聞きして、それを信じた人は28.7%と、けっこう高い割合になっています。同様に、「新型コロナウイルスは5Gテクノロジーによって活性化される」を信じた人は4.4%、「漂白剤を飲むとコロナウイルスの予防効果がある」を信じた人は3.1%でした。
調査では、多くの人が新型コロナウイルスに関する情報の真偽を判断できなかったという結果が出ましたが、若い人ほどフェイクニュースを信じがちな傾向が見られました。
頭が良い人でも油断ができない、「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」現象
フェイクニュースの被害については、頭の良い人だろうと油断はできません。真実よりも自分が信じていることの方に引っ張られてしまうケースもあります。そのような偏った情報を収集したり発信していると、似たような意見の人たちが集ってきます。小さな部屋で意見がこだまするという意味から、「エコーチェンバー」と呼ばれる現象が起きるのです。また、プラットフォーム側がユーザーの検索履歴などを分析して最適化することで、利用者が不快に感じる意見から隔離する「フィルターバブル」という現象も起きます。
世論や反対意見と言った気付きに触れる機会がなくなり、偏った意見だと気付かないまま、自分は正しく、主流派であると感じながらこじらせてしまうのです。その感覚で家族や友人に啓蒙しようとして、トラブルになることもあります。
例えば、筆者が過激な投稿の内容を信じる友人にアドバイスをしたものの、反論されて離れられてしまった経験が何度かあります。また、一般論を言っているだけの人に、上から目線でフェイクニュースを叩きつけて、友人を失っている人もいました。これまで何十年も常識人だったのに、SNSのエコーチェンバーやフィルターバブルで、半年もしないうちに立派な陰謀論者になってしまうこともあります。
家族や古くからの友人との関係を破壊し、フェイクニュースの虜になると取り返しが付きません。また、それだけに留まらず、法律を犯してしまう可能性もあります。
特定の人や組織のフェイクニュースを発信すると、名誉毀損罪や信用毀損罪、偽計業務妨害罪などに問われてしまうかもしれません。損害を与えれば、損害賠償請求される可能性もあります。直接の投稿を行った人だけでなく、Twitterでリツイートしただけでも罪に問われることがあります。
衝撃を受けるような情報に触れた時は、その情報が正しいかどうかを確認しましょう。総務省が公開している「上手にネットと付き合おう! 安心・安全なインターネット利用ガイド」では、4つの確認方法を紹介しています。
まず1つ目は「他の情報と比べてみること」です。ネット検索で複数の情報を読み比べることに加えて、本や新聞などネット以外の情報についても調べることを推奨しています。2つ目が「情報の発信元を確かめること」です。発信元が分かった場合は、信頼できる人・ウェブサイトなのかを確認しましょう。3つ目は「一次情報を確かめる」ことです。その情報が引用や伝聞だった場合は、オリジナルの情報源を探しましょう。そして、4つ目が「その情報はいつごろ書かれたものか確かめる」ことです。発信元や内容が確かだったとしても、古い情報だった場合、現状と異なる可能性があるためです。
情報の確認スキルに自信がないなら、少なくともネットで情報を発信・拡散しない方がよいでしょう。ネットに投稿すると、ずっとその記録が残ってしまうためです。デジタルリテラシーを向上させ、フェイクニュースにだまされないようにしましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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