給食に出てくるデザートは、学校ではひとりひとつと食べられる個数が決まっている。そのうえ一般で売られていることは稀である。
「あまりものジャンケン」にも勝てず、食べたいのに食べられない、やきもきする気持ちを抱いたまま義務教育を終えた。
時は令和。いつの間にか個人でも給食デザートが買えるようになっているではないか!
当時人気だった給食デザートが食べ放題の「給食デザートバイキング」を開催した。
バイキングの準備
用意したデザートは以下の7つ。
給食デザートの入手難易度は意外と低く、どれもAmazonでサクッと買えた。
用意した給食デザート
・ミルメーク(コーヒー味)
・4種のクレープ
・お米のタルト
・アーモンド小魚「とっとチーズ」
・型抜きレアチーズケーキ
・ご当地ヨーグルト「コアコア」
・青リンゴゼリー
1種類につき20〜40個のセットで届いた。我が家の冷蔵庫には入り切らない。
懐かしさと生活しにくさで目頭を熱くさせて、友人宅の冷蔵庫を間借りした。
下のシルバーの食器にも注目していただきたい。
それらしさを演出するために、バイキング用のでかいプレートも用意した。
一般人の宅飲みでは絶対に出てこないサイズと重厚感(実際重い)。
一気に金持ちが開催するバイキングパーティーっぽくなった。いいぞ。
調べたら予算が吹き飛ぶ価格だったので、カルカル(東京カルチャーカルチャー)に貸してもらいました。
ゲストの到着
ゲストはデイリーポータルZライターの江ノ島さん、ナミノリさん、とりもちうずらさんの3人だ。
用意したデザートは、すべて私が学生だった頃に給食メニューとして登場したもの。
地域や年代によって多少違いはあるだろうと想定はしていたのだが、3人とも「どのデザートもほとんど知らない」との反応。まじか!
気を取り直して用意したデザートのラインナップを軽く説明をした。いざバイキングへ。
ミルメーク
手始めにドリンクから。やさしい甘さのコーヒー牛乳、ミルメークだ。
ナミノリ「デコチョコペンみたいな容器に入った、液体バージョンもありますよね。私が通っていた学校の給食は、液体のほうが馴染みがあります」
とりもち「ミルメークって給食の話題で出ますが、私は知らないです。でも違う地域の知り合いはみんな『ある』っていうから情報だけ知ってて。いちご味とかもありますよね?」
米田「給食のメニューって伝聞されるんだ」
とりもち「私が小学一年生くらいのときは、牛乳瓶に貼ってあるシールを集めるのが流行ってました。それをふでばこに貼り集めてましたね」
米田「紙のフタを集めていた覚えはある」
江ノ島「あの頃はとにかく何か集めてましたよね。三角紙パックも、集めてる人いましたよ。飲んだら畳んでおいて。工作の授業のときに材料として使ったり、めんことして遊んだり」
米田「実用的だ」
行動原理に心当たりがあるせいか、話を聞いていると自分も同じことをしていたような気がしてくる。経験していないのに。
4種のクレープ
ふたつめはクレープ。
もちもちとした薄い皮のあいだに生クリームが詰まっており、さらに甘酸っぱいソースが挟まっている。ひんやりとしていてうまい。
母校では人気デザート1位2位を争っていたデザートだ。
3人ともこれを知らないまま大人になったなんて信じられない。一刻も早く食べて欲しい。
ソースの味はいちご・みかん・ブルーベリー・ヨーグルトと4種類バリエーションがあるが、給食では一度にさまざまな味が出てくることはなかった。
いちご味とみかん味がよく出てきたと記憶している。
当時は気がつかなかったが「卵・小麦・乳をしていません」とのアレルギー表示があった。一般的なクレープに使うものがぜんぶ入ってない。かがくのちからってすげー
江ノ島「うわ!食べたことない味!!うま!!」
ナミノリ「生クリームがさっぱりしてて軽いですね。やさしい味。ぜんぶ食べられそう」
江ノ島「こんなの給食に出てきたら狂喜乱舞しますよ!」
お米のタルト
3つめは「お米のタルト」だ。当時の人気メニューを集めた今回のラインナップのなかでも、個人的にイチオシ。
学校卒業後もどうしても食べたくて、購入手段を探していた。
「業務用スーパーにある」という噂を聞いたが見つからず、WEBで購入できるようになっていた。
「クレープと違って、卵も牛乳も小麦も全部使ってますね」とナミノリさん。
江ノ島「何味なんだ?ふつうにおいしいタルトですね。”ふつうにおいしいタルト”っていうのも変ですけど……。名前からして、奇抜な食べ物かなと思ったんですが……」
とりもち「お米の味?わからない」
ナミノリ「激烈な甘味というわけじゃないですね。ほんのりおいしい」
冒頭とテンションに反して淡々とした感想をもらったが、その通りである。あの頃の筆者もお米の味はあんまりわかってなかった。
冷凍食品なので時間が経つほどやわらかくなり、ほろほろと崩れる。
アイスのようでもあり、ケーキのようでもあるお米のタルトは、多くを知らない小学生には衝撃の食べ物で。それが給食にしか出ないとなると、当時の感覚的には幻の食べ物であったのだ。
ナミノリ「道の駅で売ってそうです。ご当地デザートなんですかね?」
米田「福島県が会社が作っているので、違うかと」
江ノ島「僕の学校はご当地おかずはあったかな。サンマーメンとか」
※サンマーメン……神奈川県のご当地ラーメン。野菜や肉のあんかけがかかっている。
ナミノリ「そういえば、給食運ぶ台車、ありましたよね。重い銀色の押しぐるまに、給食が入ったバットや鍋が乗ってる」
江ノ島「僕の学校は人力で運んでましたよ」
米田「こぼしちゃうじゃないですか!」
江ノ島「こぼす人、いました。目の前でそれが起きたことがあって。絶望でした。給食を運んでる途中でこぼしちゃう夢、いまだに見ます。三大よく見る嫌な夢」
アーモンド小魚
目の前のデザートと記憶の給食話で盛り上がるなか、デザートのなかでは貴重なしょっぱい系、アーモンド小魚の「とっとチーズ」へ。
さまざまな企業が販売しているアーモンド小魚のなかで、実際に食べていた製品を購入した。買う前はどれも同じように見えたが、パッケージとこの星型チーズを見たらはっきりと思い出した。
ナミノリ「星がかわいい!私が食べていたアーモンド小魚には入ってなかったです」
とりもち「チーズサクサクしてておいしい!」
米田「製造元は岐阜の会社だし、ローカルなのかも」
甘くなった口のなかをアーモンド小魚でリセットだ。
アーモンド小魚を食べずにとっておき、下校中にこっそり食べていたというあるあるで盛り上がった。
あげぱんを一口ぶん、ティッシュにくるんで持ち帰っていた過去を思い出したが、話のベクトルが異なる気がして黙っていた。
型抜きレアチーズケーキ(いちご味)
人気はあったものの、味は覚えていないデザートも用意した。型抜きレアチーズケーキである。
自分では食べずに人にあげていたので、見た目だけが記憶に強く残っている。
ナミノリ「好きだったデザートです!このカニの造形、すごく見覚えがあります」
とりもち「いろんな形がある!どれも子供が好きなものですね!」
米田「キャラクターのチョイスがわかんないですよね。食べずに人にあげていました。今日が食べるの初めてかもしれない」
江ノ島「パッケージが嫌だったんですかね」
米田「そうかも。昔は変に神経質で、このラインナップに疑問を持っていたので……」
幼い頃の私は、このデザートのデザインに統一性を求めていた。まったく変わっていないパッケージに、今日は逆に安心している。
江ノ島「食感がちょっとゴワゴワしてる。さけるチーズ?固いムースみたいな……?」
米田「水分を減らしたヨーグルトのような、水分多めのマシュマロのような……?」
ナミノリ「フルーチェをすっごい混ぜたらこうなりそうですね〜」
江ノ島「いちご味ですしね」
ぼんやりとした連想ゲームが続き、「医療用の栄養食に似ている」という意見で着地した。
ナミノリさんだけがテンション高く印象的だった。よほど好きだったのかもしれない。
ご当地ヨーグルト「コアコア」
最後は超ローカル。愛知県の給食に出てくるヨーグルト「コアコア」へ。
おいしいデザートであることに間違いはないが、人気うんぬんというよりただただ地元の味を布教したいという理由でのチョイスした。
ヨーグルトらしからぬ口に残らない涼やかな甘さがいい。
ちなみにこれだけは業務用を注文しなくても東海エリアのスーパーで買える。その点は逆にレアである。
とりもち「『ずっと大好き』って書いてある」
江ノ島「そこは自分で決めさせて欲しい」
子供のころは、コアコアを振ればトロトロなヨーグルトになると思い込んでおり、開封する前に毎回振っていた。どれだけ振っても細かい破片の集合体になるだけだった。
とりもち「ぷるんってしてます」
米田「さっぱりとした味ですよね。水多めで割ったカルピスみたいな」
江ノ島「健康にいいヨーグルトってこういう感じですよね」
ナミノリ「おばあちゃんちに常備してありそう」
米田「ヨーグルトって給食デザートの定番だと思うんですけど、他の地域ではどんな物が出てましたか?」
とりもち「私の地域では、ヨーグルトは手のひらサイズの瓶に入ってました。給食にヨーグルトが出るときは牛乳が出ないんですよ。だから喉に詰まらせると大変で」
林「そうでしたそうでした。とりもちさんとぜんぜん年齢は違うけど、給食の経験はほとんど一緒ですね」
東京都の給食の特徴なのかもしれない。飲み物がないのは困るので、東京都はヨーグルトを出すときも牛乳を出してほしい。
青りんごゼリー
最後は青りんごゼリー。パッケージから給食らしさがにじみ出ており、とにかく懐かしい。
ナミノリ「おいしーい!このシャシシャリ感がすきでした。給食に出てくるときは半解凍されてて、中央が少し凍ってるんですよね」
米田「半解凍状態を狙って持ってきたので嬉しいです。食感がいいんですよね」
とりもち「青リンゴの香りがする。色は抹茶みたいな色をしてるんですね」
江ノ島「ゼリー食べたあとにヨーグルトを食べたら、合わなくてびっくりしました」
デザートとデザートの食べ合わせができるのはデザートバイキングだけ!
王族の教室、ランチルーム
食べ終わりにとりもちさんと江ノ島さんが、小学校にあったという「ランチルーム」について話してくれた。
通っていた学校が違う上に、夢のような内容なのに、話が噛み合っていて不思議な会話だった。
とりもち「ランチルームは、一年に一回だけ給食を食べる教室です。使う日にちは決まってて、クラスごとに順番に使います」
江ノ島「学校内でそこだけ王族の部屋みたいで」
米田「王族……!?」
とりもち「そうそう、すごいきれいな部屋で。食器も陶器で。献立は普段と同じなんですけど、楽しみでしたね」
江ノ島「豪華な部屋を使うのに、給食の配膳作業はいつも通り自分達でやるんだ……って思ってました」
とりもち「たしかに。お皿もいつものより重いし、労働でしたよね」
江ノ島「召使いになった気分でしたね」
給食の話はあるあるだけではない
全種類ひと通り食べたらおかわりしなくても満足してしまったが、給食デザートバイキングは楽しく終わった。
共通点がありながら異なる点もある学校給食の思い出話は、並行世界の人と会話をしているようだった。
他の地域の給食も気になるので、どなたか給食デザートバイキングパーティーへの招待をお願いします。