AIに関する研究は急速に進んでおり、人間の世界王者を打ち負かす囲碁AIや人気ゲーム「スタークラフト2」の上位0.2%にランクインするAIなどが続々と発表されています。新たに、「交渉」による進行を特徴とするゲーム「ディプロマシー」を人間と違和感なくプレイできるAI「Cicero」がMetaによって開発され、人間を含めたランキングで上位10%にランクインしたことが発表されました。
Human-level play in the game of Diplomacy by combining language models with strategic reasoning | Science
https://doi.org/10.1126/science.ade9097
CICERO: An AI agent that negotiates, persuades, and cooperates with people
https://ai.facebook.com/blog/cicero-ai-negotiates-persuades-and-cooperates-with-people/
Diplomacy and CICERO
https://ai.facebook.com/research/cicero/diplomacy/
ディプロマシーは、第一次世界大戦のヨーロッパを舞台にしたボードゲームで、プレイヤーはイギリス・イタリア・オーストリアハンガリー・オスマン帝国・ドイツ・フランス・ロシアのいずれかの国家として盤上の土地を奪い合います。ディプロマシーの大きな特徴はプレイに「交渉フェイズ」が設けられていることで、プレイヤーは各ターンの開始前に他のプレイヤーと自由に交渉することが可能です。この時、プレイヤーは交渉の内容を忠実に守る必要はなく、いつでも裏切ってOK。ディプロマシーのプレイ時にはプレイヤー同士が互いにだまし合う場面が頻繁に発生することから、「友情破壊ゲーム」と呼ばれることもあります。ディプロマシーの歴史や概要は、以下の記事を読むとよく分かります。
プレイした人が「二度と遊びたくない」とつぶやく「友情破壊ゲーム」の元祖「ディプロマシー」とは? – GIGAZINE
by Maxime Bonzi
上記のように、ディプロマシーは交渉をメイン要素としたゲームです。このため、AIがディプロマシーをプレイして勝利するには「他のプレイヤーと違和感なく会話して協力を呼びかける」「他のプレイヤーの交渉内容から戦略を読み解く」「他のプレイヤーのウソを見抜き、他のプレイヤーにウソを仕掛ける」といった既存のAIには難しい処理をこなす必要があります。これらの問題を解決するために、Metaは最強囲碁AI「AlphaGo」などで用いられている「戦略的推論」や文章生成AI「GPT-3」などで用いられている「自然言語処理」の両方を可能とするAI「Cicero」を開発しました。
ディプロマシーをプレイできるオンラインサービス「webDiplomacy」でCiceroの性能を試した結果、スコアランキングの上位10%に入る成績を記録したとのこと。Ciceroはディプロマシーをプレイする上で重要な「ウソ」にも精通しており、「一方のプレイヤーにはゲーム後半で協力を求めることを予告しつつ、もう一方のプレイヤーにはゲーム開始直後に協力を求める」といった複雑な戦略も実施できました。一方で、ゲームの進行と矛盾するメッセージを送信してしまうこともあったとのことで、Metaの研究チームは矛盾を減らすためのフィルターの開発を進めています。
なお、Ciceroのコードは以下のGitHubリポジトリで公開されています。
GitHub – facebookresearch/diplomacy_cicero: Code for Cicero, an AI agent that plays the game of Diplomacy with open-domain natural language negotiation.
https://github.com/facebookresearch/diplomacy_cicero
また、ボードゲーム版の「ディプロマシー」は、記事作成時点ではAmazon.co.jpで税込7280円で入手可能です。
Amazon | ディプロマシー | ボードゲーム | おもちゃ
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