1. 仮想通貨業者のFTXが経営破綻
米国を拠点とする仮想通貨プラットフォーム事業者のFTXが米国時間11月11日に米国破産法の適用を申請した(CNET Japan)ことは日本でも大きく報じられている。さらに、FTXはハッキングの可能性を調査していると報じられている。記事によれば「消えたとされる仮想通貨の正確な金額は不明で、報道機関によって異なる金額が報じられているが(中略)同社は12日の時点で、盗まれた資産は4億7700万ドル(約670億円)とみられる」としている(CNET Japan)。今後、さまざまな観点での調査が進められるものと思われる。
日本でも財務省関東財務局が、経営破綻したFTXの日本法人であるFTX Japan(東京都千代田区)に対して「業務停止命令のほか、利用者の資産の保全や利用者保護を求める業務改善命令」を行ったということだ(ITmedia)。これに関してFTX Japanは「顧客の暗号資産についてはコールドウォレットで保管し、法定通貨については信託口座にて分別管理を行っている」と告知している。
ニュースソース
- 関東財務局、FTX Japanに行政処分 ユーザーの資産保全求める[ITmedia]
- FTX、ハッキング被害の可能性–7億円相当が消失か[CNET Japan]
- FTX創業者、自分はバハマにいると説明–南米との臆測を否定[CNET Japan]
- 仮想通貨業者FTXが破綻、CEOは辞職[CNET Japan]
2. 与党、そして経団連が「web3」推進戦略を提言
与党と経済団体がそれぞれweb3を推進する提言をまとめた。
まず、日本経済団体連合会(経団連)は「web3推進戦略- Society 5.0 for SDGs実現に向けて」と題する提言を発表した(経団連)。「Society 5.0 for SDGsの実現というゴールに向けて、web3の活用を進めるうえでは、web3先進国への変貌に向けた正しいステップを歩む必要がある。『まずやってみる』精神で建設的なトライアルを促し、さまざまなリスク対応の事例等を蓄積したのち、長期的な視座のもと各国をリードするための環境整備を進めていくことが求められる」とし、「経団連においても、DAOの試行的な運用等を行い、Society 5.0 for SDGs実現に向けたweb3活用のあり方を検討していく」とまとめている。
また、自由民主党の社会推進本部(本部長・平井卓也衆院議員)とその下にあるweb3 PT(座長・平将明衆院議員)は、web3関連税制に関し「自社発行の保有トークンを期末時価評価の対象外とすること等を求める緊急提言」を取りまとめた(自由民主党)。こうした税制は関連企業にとって重い負担となり、スタートアップ企業が海外に流出する要因だと指摘されてきた。
3. 「マイナ保険証」とは何か?
政府の方針として、保険証とマイナンバーカードの一体化が発表され、にわかにこの周辺の話題が増えてきている。しかし、保険証がマイナンバーカードになることで誰にどのようなメリットがあるのかなどがいまひとつピンとこない。窓口での事務負担が軽減されそうなイメージはあるものの、一方の当事者である利用者にはどのような利点があるのか。こうした話題を整理しているのが東洋経済オンラインに掲載された「『マイナ保険証』と『保険証』どこが違うか徹底解説」という記事だ(東洋経済オンライン)。
記事によれば、厳格な「オンライン資格確認」が行えるようになることが主に窓口での事務側のメリットで、「電子処方箋管理」によるお薬手帳よりも厳格な薬剤の重複投薬・併用禁忌のチェックが利用者のメリットかもしれない。また、記事の図中には特定健診の情報が健保組合等からオンライン資格確認システムへ提供されるように示されている。かかりつけ医で特定健診を受ければ、その結果は各医療機関でも共有される可能性もあるということか。ひょっとすると重複した血液検査なども省けるかもしれない。
もちろん、制度の導入で起こることはこれだけではないと思われるが、国にはこうして電子化することのメリットをもう少し具体的に示してもらった方が多くの理解が得られるのではないかとも感じる。
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4. マイクロソフトのナデラCEOが語ったこと
米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが来日し、「Empowering Japan’s Future」と題した顧客向けのイベントで講演を行った(PC Watch)。
記事によれば、ナデラ氏は基調講演の冒頭で「同社が今掲げている『地球上のすべての個人と組織がより多くのことを達成できるようにする』というミッションを達成させるためには、顧客がデジタルトランスフォーメーションをしていき、データやAI、そしてクラウドを活用する必要があり、『顧客がより少ない労力でより多くのことを達成する(Doing more with less)お手伝いをする、それがMicrosoftのビジネスの原動力になっている」と述べた。
デジタルトランスフォーメーションにおけるクラウドの重要性については「エネルギー消費の観点からオンプレミスと比較して遥かに高い効率を達成できるだけでなく、アプリケーション自体もクラウド化が進んでいる」とし、Azureプラットフォームの意義を示した。
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- MicrosoftのナデラCEOが来日。クラウドやAIで企業のDX化を推進を宣言[PC Watch]
5. デジタルアーカイブ技術の進展
過去の文化的遺産のデジタル化保存とその活用分野は目立ってはいないが、最近の技術によって、徐々に開発が進みつつあるようだ。
まず、凸版印刷株式会社は、近代(明治期~昭和初期)の手書き文字に対応したAI-OCRを開発した(INTERNET Watch)。これまでも古文書のくずし字の認識は取り組まれてきているが、この時代の手書き文字に対応したOCRは日本初だということだ。専門家はもとより、一般にも何が書いてあるかを識別しやすくなることはもちろんだが、これを使って検索のメタデータとすることも考えられ、これまでの画像保存だけでなく、検索性も高まると思われる。
また、慶應義塾大学は伝統芸能データベース「Global Jukebox」を発表している(カレントアウェアネス)。これは「1,026民族から収集した5,776件の音声記録」が検索可能だという。呼吸方法・楽器情報の特徴、会話の様式等を分類した補助的なデータセットがデータベースとして公開された。画像化されたデータではなく、このような音声データを検索できるということも画期的な進展といえるのではないだろうか。
こうした要素技術が活用されることで、研究はもちろんだが、博物館・美術館のような展示施設での利用にも期待をしたい。
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- 慶應義塾大学、伝統芸能データベース「Global Jukebox」を公開:約1,000民族の5,000件以上の音声記録を提供[カレントアウェアネス]
- 江戸時代より難しいとも言われる、明治~昭和初期の手書き文字を解読できる日本初のAI-OCR、凸版印刷が開発[INTERNET Watch]