Twitterの「認証済みバッジの有料化」が悪用される可能性のレポートをイーロン・マスクは無視していた

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Twitterを買収したイーロン・マスク氏は、収益改善のための一手として月額1200円で認証済みバッジが買える「新生Twitter Blue」をリリースしました。Twitterのアカウント名横に青色チェックマークとして表示される認証済みバッジは、アカウントが公式なのか偽物なのかを見分けるために使用されてきましたが、誰でも認証済みバッジが購入できるようになったことで悪質な「認証済みバッジを購入したなりすましアカウント」が急増。これを受け、TwitterはTwitter Blueの販売を一時停止しています。大問題となった認証済みバッジの有料化について、Twitter内部では悪用される可能性を警告するレポートが事前に作成され、イーロン・マスク氏に提出されていたものの、マスク氏はこれを無視して認証済みバッジの販売に踏み切っていたことが明らかになりました。

Elon only trusts Elon – by Casey Newton and Zoë Schiffer
https://www.platformer.news/p/elon-only-trusts-elon

Twitterが認証済みバッジを誰でも購入できるようにしたことで、Twitter上には「認証済みバッジを購入したなりすましアカウント」が急増しました。実際、「認証済みバッジを購入したなりすましアカウント」が急増したことで、どういった事態が起きていたのかは以下の記事を読めば一発でわかります。

Twitterが認証済みバッジを購入可能にしたことで公式になりすました偽アカウントが大量発生中 – GIGAZINE


政治的な内容のツイートを投稿するなりすましアカウントも多かったため、その影響を危惧した大手広告代理店が顧客に「Twitterへの広告出稿の停止」を推奨する事態にまで発展。Twitterは収益の90%を広告が占めるため、マスク氏が収益改善のために採用した施策が、最終的に収益をさらに悪化させることにつながったことは皮肉としか言いようがありません。

Twitter上でなりすましアカウントが大量発生したことにより大手広告代理店も「Twitterへの広告出稿の停止」を顧客に推奨している – GIGAZINE


しかし、Twitterが認証済みバッジの販売を開始する以前の11月9日時点で、同社の信頼・安全チームがマスク氏に「Twitter Blueで認証済みバッジを販売することで明白に有害な結果が起こる」と指摘する7ページにわたる内部レポ―トを提出していたことが、Platformerの報道により明らかになりました。Platformerによると、「この内部レポートはTwitter Blueで認証済みバッジを販売することにより起きる出来事を不気味なほど正確に予測している」とのことです。

レポートの最初には、「やる気のある詐欺師や悪徳業者は、利益を上げるためには認証済みバッジの購入も辞さないと考えている可能性があります」という警告文が書かれています。さらに、レポートでは認証済みバッジが誰でも購入できるようになると、「世界の指導者、広告主、ブランドパートナー、選挙管理者、その他の著名人へのなりすまし」が急増する可能性が指摘されています。

レポートは11月1日時点ですでに社内で回覧されていたそうです。この時、マスク氏は認証済みバッジを購入できるTwitter Blueを年間99ドル(約1万4000円)で販売することを計画していたものの、その後、作家のスティーヴン・キング氏との対談で費用を「月額8ドル(日本だと月額1200円)」にまで引き下げることに決めます。この値下げにより、なりすましアカウント用に手軽に認証済みバッジを購入することが可能になってしまったとPlatformerは指摘しました。


レポートでは、なりすましアカウントが急増すれば、なりすましアカウントの被害者となる著名人やブランド、企業がTwitterから離れる可能性も指摘されており、「既存の認証済みバッジを取得しているTwitterアカウントからその特権を奪う(認証済みバッジを誰でも購入できるようにする)ことは、知名度の高いユーザーを混乱に巻き込み、プラットフォームの信頼喪失につながる可能性もあります」「我々は現在、知名度の高いユーザーが誤認されるリスクを管理していますが、(認証済みバッジを誰でも購入できるようにすることで)これが廃止されてしまい、ユーザー離れにつながる可能性もあります」と記されているそうです。

Twitterは認証済みバッジを取得したアカウントから自動で認証済みバッジをはく奪するためのシステムを有していませんが、このリスクもレポートでは指摘されており、「Twitterは40万ほどの認証済みバッジ取得アカウントを抱えていますが、もしも彼らが新しいTwitter Blueにお金を支払わないという決断を下した場合、大量のアカウントから認証済みバッジをはく奪する必要性が出てきます。これを行うには高いコストが必要となります」と記されています。なお、レポートでは認証済みバッジを取得済みの有名アカウントに対して、Twitter Blueを購入しなくても認証済みバッジを与え続けるなどの解決策が提案されているそうです。

このレポートはTwitterの製品管理ディレクターであり、マスク氏の側近のひとりとして知られているEsther Crawford氏に提出され、マスク氏はレポートについて顧問弁護士のアレックス・スピロ氏からも説明を受けたとPlatformerは報じています。ただし、Crawford氏はレポートの大部分に同意していたものの、新しいTwitter Blueのリリース時期を遅らせることには否定的だった模様。その結果、当初の予定通りにTwitter Blueを介した認証済みバッジの販売がスタートし、前述の通りの大惨事を引き起こすこととなっています。

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