ロブロックス、クレアーズやウォルマートなどの小売業者たちが続々参入:「若い世代はほとんどの時間を仮想世界で過ごしている」

DIGIDAY

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ロブロックス(Roblox)は、13歳未満の子どもたちに人気のゲーミングプラットフォームで、メタバースで多くの時間を過ごしている若いオーディエンスとかかわりを持つことを求めている数多くの小売業者にとって、絶好のマーケティングチャネルとなった。

ギャップ(Gap)や、アメリカンイーグル(American Eagle)、フォーエバー21(Forever 21)、ナイキ(Nike)などのアパレルやフットウェア企業はいずれも、最近になり、ロブロックスでのユニークなエクスペリエンスを提供するようになった。また、ロブロックスはラルフローレン(Ralph Lauren)や、ジバンシイ(Givenchy)、トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)、グッチ(Gucci)を含むラグジュアリーブランドにとっても人気の経路になってきた。ウォルマート(Walmart)は9月、おそらくロブロックスに対する最大の支持のひとつとして、「ウォルマートランド(Walmart Land)」と「ユニバース・オブ・プレイ(Universe of Play)」という2つのサービスを同プラットフォームで公開した。

10月26日には、クレアーズ(Claire’s)が、「シマービル(ShimmerVille)」を発表し、ロブロックスに進出した最新の小売業者となった。クレアーズはシマービルを「探検、仕事、遊び、買い物ができ、友人とつながれる革新的なデジタル世界」と表現している。シマービルではプレイヤーが家を建設して飾り、仕事をしてデジタル通貨を稼ぎ、ペットを飼って、クレアーズのアクセサリーや衣服を自分のアバターに着せることができる。このゲームには、シースタイルモール(Claire’s C-Style Mall)、クレアーズカフェ(Claire’s Cafe)、バンガローバレー(Bungalow Valley)など6つの目的地がある。


クレアーズカフェ(Claire’s Cafe)のイメージ

クレアーズの最高マーケティング責任者を務めるクリスティン・パトリック氏は、シマービルは、顧客がこれまでクレアーズについて知っったり好んできたことの「自然な延長」だと、米モダンリテールに語った。同氏は次のように述べている。「当社は、このブランドが50年間にわたって守り続けてきたこと、すなわち自己表現に正面から取り組み、それを中心としたゲームを作り上げたいと考えた。人々がクレアーズを認識するのは、そのデザインによってだ。しかし、これはブランドの現代的なメタバースへのアップデートのように感じられるだろう」。

新しいオーディエンスとの関係

ロブロックスはメタバースプラットフォームと呼ばれるいくつかのプラットフォームのひとつだが、ユーザー作成コンテンツ(UGC)を活用していることから、企業のあいだで急速に好まれるようになってきている。誰でもロブロックスのアカウントにサインアップして独自のゲームを作ったり、ほかのユーザーのゲームで遊んだりできる。現在のところ、ロブロックスは1200万人のクリエイターの作り出した、3200万以上のデジタルエクスペリエンスを提供している。このプラットフォームは2004年に設立されたが、パンデミックのあいだにより顕著な盛り上がりを見せた。同社は2020年に毎日のアクティブユーザー数が3260万人に達し、今年の6月30日時点で5220万人を数えている。

ロブロックスに飛びつく多くのブランドにとって、「包括的な目的はZ世代とつながることだ」と、調査・顧問会社のジェンZプラネット(Gen Z Planet)の創設者であるハナ・ベン・シャバット氏は米モダンリテールに語った。「このゲーミングプラットフォームは、この世代に出会い、関係を築くために理想的な場所だ。ここにはZ世代が毎日何百万人も来ているからだ」。

クレアーズにとって、Z世代(1997年から2012年の生まれ)やアルファ世代(2012年から2024年の生まれ)は同社の「スイートスポット」だと、パトリック氏は述べる。「これらの世代はメタバースで膨大な時間を過ごす。彼らはWeb3や、ゲームに関するアクティビティなどに本格的に参加しはじめており、これらはこの世代にとって常に巨大なプラットフォームだった。このため、ロブロックスとメタバースへの次の進出は、当社の顧客が何を求めているのか、そして、クレアーズにどこにいてほしいか、という話に基づくものとなる」。

ウォルマートも同様に、ロブロックスが「メタバースでもっとも急速に成長している、最大のプラットフォームのひとつであり、当社は自社の顧客がそこで膨大な時間を過ごしていることを知っている」ことからエクスペリエンスを立ち上げたと、米ウォルマート(Walmart U.S.)の最高マーケティング責任者を務めるウィリアム・ホワイト氏は9月に語った。

ウォルマートの2つのロブロックス用ゲームは重要な部分で異なっている。「ウォルマートランド」はDJブース、ローラースケートリンク、モーションキャプチャーのコンサート、Netflixのトリビアなど没入感のあるエクスペリエンスを提供する。「ユニバース・オブ・プレイ」には、パウパトロール(Paw Patrol)やジュラシックワールド(Jurassic World)といった有名なフランチャイズのキャラクターが登場し、ユーザーはコインを獲得して自分のアバター用のバーチャルグッズと交換することができる。

メタバースへの拡大

メタバース」という用語は、仮想現実や拡張現実、複合現実までのいくつかのエクスペリエンスを網羅する。マーク・ザッカーバーグ氏など何人かのCEOはこの用語を受け入れているのに対して、ティム・クック氏などは拒否している。ベン・シャバット氏の言葉によれば、現在のところ「この用語ははっきり定義されてはいない。人によって意味するものは異なる」という。

ガートナー(Gartner)によれば、2026年には人々の25%が少なくとも1日1時間をメタバースで過ごし、仕事や、ショッピング、学習、社交などを組み合わせて行うようになるという。また同社は、世界の組織の30%が2026年までにメタバース用の商品やサービスを揃えるようになると予測している。

ブランドはこれまで、テレビ広告やダイレクトレスポンス広告で若いオーディエンスとつながろうとしていたと、デュービット(Dubit)の最高商務責任者を務めるアンドリュー・ダウスウェイト氏は語る。デュービットはニコロデオン(Nickelodeon)、L.O.L.! サプライズ(L.O.L.! Surprise)、パラマウント(Paramount)などのブランドのメタバース戦略に協力しているほか、独立系ビルダーによるメタバース体験の設計を支援している。現在、若い世代はほとんどの時間をロブロックスのような3D仮想世界で過ごしていると、ダウスウェイト氏は語る。

「テレビ広告への支出は、メタバースに回されることになるだろう」と、同氏は米モダンリテールに語る。これは、メタバースが「没入感があり、インタラクティブで、これらの若い世代が慣れ親しんできた自然な世界だからだ」。

ロブロックスのようなプラットフォームは、ブランド・エンゲージメントにも理想的だと、ダウスウェイト氏は付け加えている。「私が子どもの頃、ゲームはある種の隔絶されたものと見られていた。ブランドが関われるようなものではなかった。もしブランドが「コール・オブ・デューティー(Call of Duty)をプレイしている誰かとつながりを持とうとしたら、開発元のアクティビジョン(Activision)と契約する必要があったからだ」。現在なら、ブランドはUGCプラットフォームに参加して独自のエクスペリエンスを作り出すことができると、同氏は述べている。

実世界とデジタルの混合

ロブロックスのプラットフォームは2021年に19億ドル(約2790億円)の収益を報告しており、このプラットフォームに参加していることは企業の売上に現実の影響を及ぼす可能性がある。

ベン・シャバット氏は次のように述べている。「若い層のユーザーに対してブランドの知名度を築くことができ、これらのユーザーは将来熱心な顧客になる。これは、ユーザーを非常に早期の段階でブランドに引き入れるひとつの方法だ」。

フォーエバー21は、自社ウェブサイトに掲載している数十の商品を同社のロブロックスのゲーム「ショップシティー(Shop City)」にリンクさせている。この商品ラインにはキルトのジャケット、フレアジーンズ、耳当てなどがあり、価格も1ドル(約147円)から64.99ドル(約9550円)までと幅広い。同社が実店舗とeコマース店舗で新しい商品をリリースすると、「ショップシティー」のプレイヤーは同じ商品を自分のアバター用に買い求めることができる。

アメリカンイーグルは3月、ロブロックス上のロールプレイングゲームであるライブトピア(Livetopia)と提携し、2022年春の商品ラインをプロモートするエクスペリエンス「AEメンバーズ・オールウェイズ・クラブ(AE Members Always Club)」を開始した。ゲーマーは、コレクションのなかからプレップやビンテージのスタイルなどのゲーム限定アイテムを集め、自分のアバターに着せることができる。

クレアーズは、1400万人のメンバーを持つ同社のロイヤルティプログラムをシマービルと結びつけ、ユーザーがデジタル通貨を獲得・交換できるようにした。「実店舗で何かを購入する場合、メタバースでポイントの一部を交換することが可能もケースがある」と、パトリック氏は述べる。

またクレアーズは、シマービルを独立した知的所有権として扱い、そのキャラクターたちが同社の別のチャネルにも登場できるようにしている。これは逆の方向にも働き、クレアーズの店舗にある他ブランドが同社のロブロックスエクスペリエンスに登場しはじめていると、パトリック氏は語っている。

これは有意義な戦略だと、ダウスウェイト氏は語る。「もし今新しいIPを保有しているか、ある種のテレビ番組や新しいIPを立ち上げようとしているのなら、ロブロックスで立ち上げることを検討する。オーディエンスが存在しているのは、そこだからだ」と同氏は述べる。

開発者の経済に関して、ダウスウェイト氏は「今後数年間に、100万人のビルダーがメタバースでの収入で生計を立てるようになるだろう」と予測している。ブランドにとっても、メタバースは長期的に取り組む対象になるだろうというのが同氏の見解だ。

「ブランドはオーディエンスの存在する場所に行く。そしてオーディエンスは、3D空間で社交したり、ゲームをプレイしたりすることをやめはしない。これらの種類のエクスペリエンスに対する需要を、我々はまだ半分も目にしていない」と同氏は述べている。

[原文:How retailers like Claire’s and Walmart are going all in on Roblox]

JULIA WALDOW(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Claire’s

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