グローバリゼーションが逆転して「再分岐」する世界
中国共産党の第20回党大会は、予想通り習近平国家主席の3選で終わったが、その主役は胡錦濤・前国家主席だった。通常はシャンシャンで終わる閉会式の最後で、胡錦濤は隣に座っていた習近平に抗議するようなそぶりを見せ、護衛に抱えられて退席したのだ。
その原因についてはいろいろ推測があるが、この出来事は長幼の序の厳格な中国で、習近平が前任者を公然と排除できる独裁者になったことを図らずも世界に示した。彼はロシアのプーチン大統領と同じユーラシア国家の専制君主に一歩近づいたが、それは世界史の中では新しい現象ではない。
中国とロシアは古代から「ユーラシア国家」
中共の7人の政治局常任委員会からは、李克強(前首相)や汪洋(全国政治協商会議主席)など、胡錦濤に連なる「共青団派」が一掃され、24人の政治局員も習近平の子飼いの部下だけになった。
チャイナウォッチャーによると、こんな人事は前代未聞らしい。中国には政権交代がないので、党内の派閥が独裁者の暴走の歯止めになっている。毛沢東でさえ劉少奇などの「実権派」を追放して専制君主になるために、文化大革命という党内闘争を仕掛けなければならなかった。それを習近平は、党内闘争なしで実現してしまったのだ。
彼がプーチンに似てきたのは偶然ではない。20世紀にロシアと中国だけで革命が成功したのも同じ原因である。それは社会主義革命というより、ロマノフ朝や清朝という帝政の中での王朝の交代が、マルクス主義というファッションを装っただけだった。
資本主義が発展して社会主義になるというマルクスの図式とは逆に、それは政治的自由も財産権もない国だったから成功した軍事クーデタだった。中国でもロシアでも、普通選挙という意味のデモクラシーが機能したことは一度もない。
中国とロシアの共通点は、古代以来の専制国家の伝統である。梅棹忠夫が『文明の生態史観』で指摘したように、ユーラシア大陸の中心部には広大な乾燥地帯があり、それを支配するのは遊牧民だった。
古代文明の多くはこの乾燥地帯の周辺の農業地帯に成立した。遊牧民はつねに移動して暴力で他民族を支配するので、これに対して農耕文明を守るために中国(Ⅰ)、インド(Ⅱ)、ロシア(Ⅲ)、イスラム圏(Ⅳ)で専制国家が発達した。