地球上で最も太陽風の影響が強い島の住民を調査して分かった「宇宙天気の人体への影響」とは?

GIGAZINE
2022年10月21日 07時00分
メモ



太陽からは定期的に荷電粒子が放出されており、「太陽風」となって地球に吹き付けています。そんな太陽圏の影響が地球上で最も強く表れる「カスプ領域」に住む人々の健康状態を調べた研究から、太陽風が精神疾患や炎症といった健康上の問題と相関している可能性が示唆されています。

The Effect of Space Weather on Human Body at the Spitsbergen Archipelago | IntechOpen
https://www.intechopen.com/chapters/69119

北極圏のような極域は太陽風のプラズマが上層大気へ直接到達することで知られ、特に「カスプ領域」と呼ばれる場所の上層大気は「宇宙へ開いた窓」と呼ばれるほど、太陽風の影響が最も顕著に現れる場所として知られています。そのカスプ領域にある島の1つが、ノルウェー領のスピッツベルゲン諸島です。

太陽フレアなどによる磁気圏の乱れは、電磁波などを伴って人体に影響を与えると考えられています。例えば、ある特定の地磁気の脈動は脳と血管の機能活動を調節し、その影響に伴い特定の精神状態が左右される可能性があるそうです。


国際北極科学委員会のNatalia Belisheva氏が、スピッツベルゲン諸島の町・バレンツブルクに住む人々の過去の健康状態を調べたところ、太陽が放射する電磁波への曝露(ばくろ)と、精神障害や傷害・中毒および動脈・細動脈・静脈の疾病発生率や妊娠合併症の発生率に有意な相関関係があると判明しました。

さらに、極域においては、太陽の光が一日中差し込む「白夜」といった特殊な現象が発生します。このような環境下では太陽の紫外線などの影響も健康状態に表れると考えたBelisheva氏は、白夜および極夜に条件を絞った疾病発生率を調査しました。

その結果、極夜においては皮膚および皮下組織の感染症の罹患(りかん)率が白夜に比べて有意に増加していたことが分かりました。これは、紫外線が過剰に皮膚に照射されることで、皮膚病の原因となる病原性微生物叢(そう)の増殖が阻害されている可能性が考えられるそうです。

白夜は極夜よりも太陽活動の影響を受けやすく、皮膚病などは減少していた一方で、精神疾患などの罹患率は増加傾向にあります。太陽活動の増加は精神の興奮や不安、健康状態の悪化を引き起こし、一部の人にはアルコール摂取量の増加を引き起こす遠因ともなっています。

また、女性の生殖器系の炎症などの特定の病気であっても、罹患率が太陽および地磁気活動に関連していることが上記の調査で明らかになりました。このことに関し、Belisheva氏は「女性は、極域における宇宙天気の変動に対する高い感受性を持っていることが分かりました」と記しました。


さまざまな病気の罹患率が太陽活動に同期するよう変化していることが本研究により示されましたが、特定の病気は季節によって罹患率が変化するため、病気と太陽活動の相関関係から特定の病気に対する予防措置を導き出すことが可能だとBelisheva氏は指摘しました。

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