人間の脳は量子計算をしているとの研究結果

GIGAZINE



脳を特殊な方法でスキャンする研究により、人の脳が量子的な機能を持っていることが判明したと報告されました。この発見は、なぜ人の脳が一部の分野でいまだにスーパーコンピューターをしのぐ能力をもっているのかの解明につながると期待されています。

Experimental indications of non-classical brain functions – IOPscience
https://doi.org/10.1088/2399-6528/ac94be

Our brains use quantum computation – News & Events | Trinity College Dublin
https://www.tcd.ie/news_events/top-stories/featured/our-brains-use-quantum-computation/

今回の発見は、重力を量子力学の観点からひもとく量子重力の研究から着想を得たもの。ダブリン大学トリニティ・カレッジ神経科学研究所の研究者であるChristian Kerskens氏とDavid López Pérez氏の研究チームは、量子重力の存在を証明するための考案されたアイデアで人間の脳の働きを調べることで、人の脳が量子計算を行っていることを突き止めました。


Kerskens氏は研究の内容について「私たちは、量子重力の存在を証明する実験のために開発されたアイデアを応用しました。このアイデアでは既知の量子系、つまり正体が分かっている量子の領域を特定し、それを未知の系と相互作用させます。既知の系が何かと量子的なもつれ、つまりエンタングルメントを起こすのであれば、未知の系も量子的であるはずです。これにより、未知のものを測定するという難題に挑むことができます」と説明しています。

研究チームは今回の実験で、「既知の系」として脳の水分の陽子スピンを使用し、エンタングルメントしたスピンを検出するために考案された特殊な手法で磁気共鳴画像装置(MRI)による測定を行いました。その結果、脳波の信号の一種である「心拍誘発電位」に似たMRI信号を捉えるのに成功したとのこと。

このような信号は通常のMRIでは測定できないことから、研究チームは人の脳内の陽子スピンがエンタングルメントを起こしているからこそ今回の発見ができたと考えています。


この発見のポイントは、単に脳で量子的な信号が確認されただけでなく、それが短期記憶といった能力や人の意識といった脳の機能にも関係していたという点です。このことからKerskens氏は「これらの量子プロセスが私たちの認知的・意識的な脳機能の重要な一部である可能性があります」と指摘しました。

シュレーディンガーの猫」で有名な物理学者のエルヴィン・シュレーディンガーが「生命とは何か」について有名な講義をした場所で行われた今回の実験により、不測の事態への対応や意思決定、新しいことの学習などを行う人の脳が最新のスーパーコンピューターを上回る能力を発揮する理由が説明できるようになるのではないかと、科学者たちは考えています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

Source

タイトルとURLをコピーしました