お出かけの回数がグンと減ってしまった昨今。
外に行くお楽しみを増やし、思い出をしっかり残すために「自分に絵はがきを送る」のはどうでしょう。
古典的なたのしみ方ですが、「久しぶりにはがき書いたなあ」と新鮮味もあるし、自分しか読まないので好き放題書けます。炎上とかありません。
気に入ったポストカードが家に届くわけですから、コレクションもできます。古本市で見つけた昔の観光絵はがきを自分に送るのも、「私はいま軽く時空をゆがませている」と思えてたかぶります。
これからも続けていきたいマイブームをご紹介します。
おすすめは展覧会
改めて紹介するまでもなく、海外旅行など遠い旅先から自分へ絵はがきを送る趣味をもつ方は結構いらっしゃると思います。
でも、私が強くおしたいのは「展覧会で買った絵はがきを自分に送る」です。
旅先の景色はパシャパシャ写真とれるけど、作品は撮影禁止なことが多いです。そのため展覧会でグッときた作品のポストカードを買うのは定番ですよね。
自分の好きな絵のポストカードは、どっちかというと他人に送りたくありません。すぐ返してほしいです。すぐに。
だからといって持ち帰っても、そのまま引き出しの中にしまってしまいがち。
そこでおすすめしたいのが「自分に送る」です。
自分のものとしてコレクションできるし、ただ集めるだけでは得られない+αのワクワクもあります
私の神戸でのお楽しみ
先日、神戸に行ったときのことを紹介します。
そこで、神戸市立博物館の巡回展「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」を見ました。
有名画家の素描から大作まで並ぶなか、一番ときめいたのが、ディエゴ・ベラスケス《卵を料理する老婆》です。
西洋絵画の授業を担当していた教授が、ベラスケス大大大好きで、よく作品の解説をして下さいました。今回が私にとってはじめて生でベラスケスを見る機会(略して生スケス)だったのでテンションも鰻のぼりです。
これを発表したとき、ベラスケスは19歳だったらしいです。やんなっちゃいますね。
このポストカードを選んだ理由や、展覧会の感想、そしてその日の天気やお昼ごはん、あとの予定なんかを、雑多に書きちらしています。(適当に書いたほうが、あとで読み直したとき面白いです)
展覧会場は町中のことが多く、コンビニですぐに切手を買うことができるし、ポストもいたる所にあります。でかいメリットです。
その後、海辺をぶらぶらして、穴門商店街や南京町に行って帰りました。
帰宅後また研究やバイトで忙しい日々に戻ってあくせくしていると、
あの楽しかったお出かけが思い出されてちょっぴり元気がでます。あと「行政じゃないところから自分宛にハガキが届く」ことのワクワクというのは、やはり今でもありますね。
こぼれ話①~全く覚えていない感想
お気に入りの絵も手元に残るし、何にも書いていないサラの状態よりも思い出がつまっていて、手に取って見返す回数もアップします。
しかし、不思議なもんで、自分で書いた文を読みなおすと「こんなこと思ってたんや」と毎回びっくりしてしまいます。
例えば、こちらのハガキです。
「聖衆来迎寺と盛安寺展」には地獄絵がたくさん展示されていて、「赤い色にビビった」と書いています。つづいて、
「やる気がでる」という意味で「ガッツがわきわき」という謎の言葉を使った記憶もありません。ほんとうに他人から送られてきたハガキのようでした。
こぼれ話②こわい絵はがきが誤って妹の家へ
自分の家に着くように、宛先には当然自分の名前と住所を書きます。
私には名前の漢字が一字違いの妹がいます。
私は今実家住まいですが、妹は遠いところに下宿していて、実家に届いた妹あての郵便物は下宿先に転送されることになっています。
郵便屋さんが、激務のなか私の名前を妹のものだと勘違いして、下宿先に転送してしまったことがありました。
それが、この絵はがきです。
しかも、私は自分宛に書いたので送り主の名前を省いており、送った人は不明です。さらなる恐怖。
そのうえ、
この時行ったのは、大阪の高いビル「あべのハルカス」内にある美術館で開催された展覧会でした。当時の私は、「もしハルカスが倒れても、作品の鑑賞に夢中になっていたら気づかないかも」と思って、その状態を「鑑賞安楽死」を名付けたようです。(これも身に覚えがありません。)
妹は、このハガキの不気味さに言及することなく再転送してくれました。
絶滅寸前の観光絵はがき
お出かけで買う絵はがきのチャンピオンはやっぱり「観光絵はがき」です。
「わたしだより」という、自分に送る人むけに、各地の郵便局でかわいいデザインのはがきを売るプロジェクトもあるようです。現地の郵便局のひと味違った消印や、ご当地切手などもコレクションできるそうです。
しかしそんな観光絵はがきというすばらしい文化も、実はすたれつつあるのかもしれません。
この前、岐阜の養老の瀧に行ったときのことです。
いつものように「自分に絵はがきを書こう」と思い立ちました。
その内の1つのお店に入って、絵はがきを探してみると、中々みつかりません。
しっかり本腰をいれて捜索すると、
店員のおばさんに「いくらですか」と聞くと、覚えていなかったらしく、値札をさがすも見つからず。
「ここ数年売れてないんやな・・・」と察しました。
「待たせたから」という理由で、380円から350円に割引して売ってくれました。売れてないからこういうラッキーが発生したわけですが、どこかもの悲しいものがあります。
観光地の絵はがきは全然売れず、絶滅寸前なのでしょう。
古本市で買った絵はがきで時空をゆがめる
だいぶ前に大阪の天満宮の「天神さんの古本まつり」に行きました。
古本市には、よく絵はがきが大量に売られています。戦前のものが100円くらいで売られてたり、未使用のものだけでなく、誰かが誰かに送ったやつも売られていたりします。
古い絵はがき、今も問題なく郵送してくれるので、自分宛に送っちゃいましょう。
宇佐神宮にある、和気清麻呂を記念した「和気公之碑」の白黒写真です。
70年以上前の観光絵はがきに、2020年に文字を書くトキメキ。しかも自分は宇佐八幡宮に行ったことないし、さらにこの絵はがきは自分宛というムチャクチャな状況にうっとりしてしまいます。DIYのオーパーツです。
安あがりな「自分だけのたのしみ」
ポストカードの価格1枚100~300円、切手は63円です。切手はここ数年で値上がりがすごいですが、それでも500円以内でできるお楽しみです。
今、おでかけの経験は写真と共にSNSでシェアするのが主流です。「みんな見て~」って感じですね。
もちろんそれも楽しいのですが、「自分に絵はがきを送る」という行為は、はがきが別ルートで自分の家に向かうというダイナミックさと、自分で書いて自分が読むというミニマムさがあり、また違ったトキメキがあります。
ただ、誤送の可能性はゼロじゃないので、変すぎる文章は書かないのが吉かもしれません。