ニュージーランドのペンギンが「最初に産んだ卵を捨てて2番目に産んだ卵をふ化させる」理由とは?

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by Royal New Zealand Navy

ニュージーランドの南方に位置するアンティポディーズ諸島バウンティ諸島で繁殖するシュレーターペンギンは、「最初に産んだ卵を捨てて2番目に産んだ卵をふ化させる」という奇妙な繁殖行動で知られています。一体なぜシュレーターペンギンがこのような習性を持つのかについて、研究者が調査結果を報告しています。

The breeding biology of erect-crested penguins, Eudyptes sclateri: Hormones, behavior, obligate brood reduction and conservation | PLOS ONE
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0275106

Why erect-crested penguins reject their first egg and lay a second one
https://phys.org/news/2022-10-erect-crested-penguins-egg.html?deviceType=desktop

Erect-crested penguins always reject their first egg and lay another | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2341866-erect-crested-penguins-always-reject-their-first-egg-and-lay-another/

In ‘bizarre behavior,’ New Zealand penguins lay one egg, reject it, and then lay another. Now, scientists know why. | Live Science
https://www.livescience.com/erect-crested-penguins-rejecting-eggs-new-zealand

シュレーターペンギンは一夫一妻制のつがいで繁殖すると考えられており、毎年10月~2月に海に近い岩場でコロニーを形成し、「最初に産んだ卵を捨てて、2番目に産んだ卵をふ化させる」という奇妙な習性を持っています。しかし、繁殖地であるアンティポディーズ諸島とバウンティ諸島が本島からかなり遠い上に、上陸がニュージーランド政府によって規制されているため、あまり研究が進んでいないとのこと。

by Royal New Zealand Navy

ニュージーランド・オタゴ大学の研究者であるロイド・デイヴィス氏は、1998年に現地入りしてシュレーターペンギンの調査を行った際のデータを再分析して、繁殖行動についての論文を発表しました。デイヴィス氏は最初に島へ上陸した時のことを、「島の周囲は大きな崖があり、ボートを接岸させられる場所もなかったので、私たちはすべての装備を持って海に飛び込んで、高さ200フィート(約60m)の崖をよじ上りました」と振り返っています。

研究チームがシュレーターペンギンのコロニーを観察したところ、1番目の卵を産んでから平均約5日後に2番目の卵を産んでいることがわかりました。また、合計70個以上の卵のサイズや重量を計測したところ、2番目に産んだ卵は1番目に産んだ卵より平均85%も重かったとのこと。デイヴィス氏は科学系メディアのLive Scienceに対し、「2番目の卵は1番目の卵よりはるかに大きく、その差は鳥類の中で最大です。多くの鳥類で卵を産むにつれてそのサイズが小さくなっていきますが、シュレーターペンギンの場合、2番目の卵は1番目の卵より平均85%も大きいのです」と述べています。

シュレーターペンギンが2個の卵を産む理由としては、「オスのペンギンが争って卵が壊れた際の保険ではないか」という仮説もありました。しかし、シュレーターペンギンの45%は1番目の卵を産んだ直後に見るくらいで、その後は気にするそぶりさえ見せなかった上に、オスの争いで卵が壊れることはめったになかったとのこと。その一方で、1番目の卵のうち80%は2番目の卵が産まれる前か直後に、岩場を転がって紛失したり故意につつかれて壊れたりしており、保険として機能している様子はなかったそうです。

念のために研究者が石で柵を作って卵が岩場から転がり落ちるのを防いでみても、シュレーターペンギンが1番目の卵をふ化させようとする割合は増えませんでした。デイヴィス氏は、「彼らはまだ1番目の卵を拒否していました」と述べています。

by Kimberley Collins

研究チームはシュレーターペンギンの奇妙な習性について、祖先から卵を2個産む生存戦略を受け継いだものの、2匹のヒナを育てるためのエサを採るコストが高すぎるため、より大きな2番目の卵だけをふ化させているのではないかと考えています。

もちろん、簡単な解決策は「卵を1個だけ産むこと」ですが、進化的な理由で2個産むことしかできない可能性があるとのこと。デイヴィス氏は、「シュレーターペンギンが2番目の卵を好む原因がある場合、1番目の卵を持たずに2番目の卵を持つことはできません」「できるのは、1番目の卵への投資を減らすことだけです」と述べました。

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