【謎】立ち食いそば屋に入ったら中はコンビニ!? そばも食えるし角打ちもできる「みさわ」は、なぜここまで自由になった? 店長に話を聞いた / 東京都渋谷区神泉

ロケットニュース24

人は見かけによらない。人を外見で判断してはいけない。子供の頃からそう教えられてきた。しかし、ある奇妙な体験をした俺はこう考える。「立ち食いそば屋も見た目で判断してはいけない」と

い……いや……体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが。あ……ありのまま今起こったことを話すぜ。「おれは立ち食いそば屋に入ったと思ったらいつのまにかコンビニにいた」──。

・闇夜に明かり

それはある夜のことだった。東京・渋谷区の神泉を歩いていると、闇夜にぽつんと光る明かり。看板にはこう書かれていた。「酒 みさわ そばうどん立ち呑み処 コーヒーたばこ」と。コーヒーたばこは珍しいが、看板デザインから察するに立ち食いそば屋っぽい。

あなたは、夜の街を歩いている時、立ち食いそば屋の明かりがやけに温かく感じたことはないだろうか。寄る辺ない男たちの止まり木。私(中澤)は立ち食いそば屋にはそういう役割もあるのではないかと思う。

・自動ドアを抜けるとそこは

ひょっとしたら、我々は味以上に温かさを求めて立ち食いそば屋に流れ着くのかもしれない。明かりに吸い寄せられるかのように、自動ドアのボタンを押して中に入った。すると……


いつのまにかコンビニにいた

な……何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった。ただ1つ言えることは、自動ドアを入った瞬間コンビニにワープしたということ。事実、什器が置かれペットボトルが壁みたいに並んでいるし、店員さんの後ろにタバコがあるレジのデザインなんて言い訳のしようもない

・そばうどん部分

しかしながら、奇妙なのは、店の真ん中には卓があり、そこで角打ちしてる人がいること。缶詰をツマミに酒を吞んでいる人からそばを食べてる人までいる。言わば、コンビニの中をくり抜いてそば屋にしたみたいな空間なのである。

よく見ると、レジ前にはうどん屋みたいなレーンが取り付けられており、店の奥側には厨房も。レーンの前にはおかずや天ぷら、炊飯器などが置かれている。そばやうどんを食べている人はここで注文しているようだ。

そば・うどんのメニューの価格帯は「かけ(税込み300円)」「たぬき(税込み370円)」「きつね(税込み380円)」「月見(税込み360円)」という感じ。ご飯物は「牛丼(税込み600円)」「カレーライス(税込み500円)」と、まあ普通の立ち食いそば屋的価格と言えるだろう。

・とりあえず食べてみた

天ぷらを見ると「まいたけ天(税込み150円)」が残っていたため、とりあえずかけそばを注文して乗せてもらった。さらに、酒はあまり飲めないが角打ちの気分も味わいたかったので、おつまみに攻めたサバ缶「さば味噌イタリアン(税込み320円)」も購入。

食べてみると、つゆはコク深い甘みがあり飽きない味をしている。麺は派手なウマさはないにせよ、クセになりそうな庶民的な味で立ち食いそばという感じ。うん、なかなかエエやん

・店長に聞いてみた

って、違う違う。ついつい空気感に呑まれて普通に楽しんでしまったが、よくよく考えるとフリーダムすぎるだろ! そこで店長の三澤さんに話を聞いてみた。

三澤さん「実は、ウチはもともとスリーエフをやってまして。17年間営業したんですが、2017年にローソンになるとお達しが来たんですね。その時に、「それならもういいかな」と思ってコンビニをやめたんです」


──なるほど。元はガチのコンビニだったんですね。


三澤さん「はい。で、新しいことを何かしようと思った時に、宇都宮にいた頃のことを思い出しました。よく立ち食いそばを食べていて、そのことが記憶に残ってたんですね。だから、やったことがないけど、やってみようと始めて5年目になります」


──また、ゼロからのスタートだったわけですか。


三澤さん「そうですね。ただ、いざ始めるとなると、スリーエフの時に店舗の開発などでお世話になった人が力になってくれたり、お客さんが製麺屋の知り合いを紹介してくれたりしまして。人の繋がりで、設備を整えたりノウハウを学べたことはありがたかったです」


──でも、完全な立ち食いそば屋ではなく、コンビニ感を強く残しているのはなぜでしょうか? 


三澤さん「17年やっていたので、コンビニとしてずっと利用してくれていたお客さんもいて。そういった常連さんたちが求めるものをなくすのは悪いかなと思いまして。できるだけ、スリーエフの頃を残すのにはこだわっています。まあ、改築費節約という側面もあるんですが(笑)」

──とのこと。ちなみに、スリーエフの前は酒屋だったというから、なんとなく角打ちの雰囲気が漂っていることも頷ける。看板の文字はそのままこの店の歴史だったわけだ。

それにしても、お客さんが帰る時には見送りに立っていた三澤さん。この店のお客さんたちがいやに楽しそうに見えたのは、そんな三澤さんの人柄にもよるのかもしれない。ただお腹を満たすだけではなく心も満たせる。「みさわ」はそんな立ち食いそば屋であった。

・今回紹介した店舗の情報

店名 みさわ
住所 東京都渋谷区神泉町9-6
営業時間 8:00~22:00
定休日 土曜・日曜・祝日

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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