マンションバブル、1億円は当たり前?:年収1500万円が35年続くのか

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日本の報道も淡泊なもので日本人ノーベル賞受賞者が出ないと片隅の記事に追いやられてしまいます。その中で唯一、反応を示したがの平和賞。ウクライナとロシアの2団体とベラルーシの個人に授与が決まりましたが、その反応がバラバラとなりました。ノーベル財団が放った今年の変化球は政治的メッセージがうまく伝わらなかったかもしれません。華やかなイメージのノーベル賞と真逆の民主、人権、弾圧や戦争との戦いを背景とする平和賞の趣旨を理解するのは我々日本人にはなかなか難しいですね。

では今週のつぶやきをお送りします。

一喜一憂相場

今週月曜、火曜と2日続けて踊った株式市場。その理由は「もしかしたら利上げペースが落ちるかもしれない」でした。オーストラリアが0.25%の利上げに留め、国連貿易開発会議が利上げ競争を止めるよう書簡を入れたことなどがその理由です。が、専門家は「状況は何も変わっていない」とし2日間のラリーを冷静に見ていました。結局、金曜日の雇用統計が事前予想を上回る26.3万人増で失業率が低下したこともあり、労働市場はタイト、よってFRBが11月の0.75%利上げ姿勢を崩すことはないだろうとの解釈から大きく売られました。

ではこの行方です。13日に消費者物価指数が発表になります。これがFRBの行方を決定づける大きな瀬戸際になります。8月の総合8.3%、コア6.3%に対して9月予想はそれぞれ8.1%、6.5%程度で総合が引き続き改善傾向に対して食糧、エネルギーを除いた指標は上昇見込みとなっています。仮にこの事前予想より悪い結果となれば株式市場はダメ押しの下げが見込まれます。ただ、利上げ一辺倒の中央銀行の姿勢に各方面から疑問の声が上がり始めたのも事実です。こびりつくようなインフレは利上げという洗剤でしか洗い落とせないのか、であります。

経済の自律調整機能がワークするなら利上げによって企業業績が悪化し、設備投資や雇用が弱まり、人件費の上昇圧力も落ち、その間に失業率が高まり、インフレも沈静化するという教科書のセオリーが機能するはずでもう少し時間をかけて検証する必要もあると思います。10月半ばを過ぎると7-9月の決算シーズンが始まります。個人的には各社厳しい数字が出てくるとみており、その場合、FRBの利上げ以上に株式市場には激しい衝撃となりうるシナリオを見ています。よって前回申し上げたように11月のG20が終わるころまであとひと月は耐えに耐える相場を想定しています。

岸田翔太郎首相秘書官!

秘書と秘書官の違いをご存知でしょうか?端的に言えば秘書はテレビドラマでよく出てくるスケジュール管理など総務的な仕事をする人で政治家の秘書の場合は地元や後援者とのつながりもフォローします。一方、秘書官とは絶対マル秘事項をトップとシェアしながら、関連者との調整をトップに代わり行う役職です。例えば私がゼネコン時代、秘書室に所属していましたが、基本は秘書官的な教育を受けてきました。故に出張に帯同し、家に毎日のように行き、あらゆることを知る立場にありました。

さて、岸田首相が長男の翔太郎氏を首相秘書官に任命する人事でまた野党に火をつけたようです。身内人事ではないか、と。ただ、本件は微妙です。私は蓮舫議員のような表面的で一方的な糾弾は的外れだと思います。なぜ首相が長男を登用しなくてはいけなかったのか、似たような境遇を経験したものとして語れば「自民党は魑魅魍魎で誰を信じてよいかのわからない。その中で真の情報が欲しかった。ならば息子だけは裏切らないだろう」ということではないかと思います。換言すれば岸田氏のクローンが欲しかったのではないでしょうか?

これは逆に自民党が行き詰っているという見方もできます。世の中は明らかに自民党一党体制が古き良き時代の産物だと考える人が増えていきます。つまり、野党じゃないけれど自民でもない、それらの人たちが無党派と称する「最大勢力」であり、選挙のたびに新興政党ができると有権者は「どこかまともな政党はないかな?」と探すのです。そしてそれは有権者にとっても試行錯誤で時として国会に出席しない議員も生んでしまうわけです。これが日本の政治の実態であります。ただ翔太郎秘書官という人事は岸田氏に対する信認を更に下げることになるかもしれません。

マンションバブル、1億円は当たり前?

北区の十条駅に降り立ったことがある人はどれぐらいいるでしょうか?私からみれば東京都の中でもかなりディープな下町です。そりゃそうです。センベロで有名な赤羽の次の駅です。十条商店街なんて総菜一つ30円とか50円といった値付けの店が並び、安いものをゲットできる代表的駅前商店街です。その駅前再開発の一環で生まれる高層マンションは駅にほぼ直結していることから一部屋1億円の値札だそうです。私の不動産開発思想とは全く相いれません。なぜなら購入見込みのパワーカップルが30円や50円の総菜を買うとは思えないから。

日経の記事には「住宅ローン変動金利が最低0.3~0.4%程度で1億円を期間35年で借りても返済額は月約25万円。年収1500万円世帯なら十分に払える金額だ」とあります。ちょっと待って。年収1500万円が35年も続く人なんて世の中にはほとんど存在しません。35歳で夫婦共稼ぎで買っても70歳まで子供も作らず、せっせとローン返済の人生なんて嫌です。そこまで無理して高額マンション買ったら本当に夜の総菜は30円、50円の空揚げやつくねになってしまいます。

この記事のポイントはもう一つあります。それはコロナで遠隔地からの通勤もOKのはずだったのに都心はやっぱり根強い需要がある点です。「コロナで人が都心に戻ってこない」のではなく「戻ってこられない」なのです。物価も上がる中、余裕がないのでやむを得ず、安いところに移っているとみた方が正しいでしょう。行きつけの不動産屋のベテラン氏いわく、「街から学生がいなくなり、外国人が増えてきた。だけど不動産取引価格はこの数年、驚くほど急上昇した」であります。「ポストコロナで環境重視のゆとりある生活を」は巧みなキャッチコピーで実態は強烈な格差を生んでいるようです。

後記
数日前、銀座コリドーで早い時間で飲み、ハッピーアワーでお得気分に浸りました。その間、客は我々のみ。7時半を過ぎて女性客がぽつぽつ入店したところでお会計。閑散としたコリドーに一体サラリーマンは何処に行ったと思いながら新橋のガード下に潜入!若手サラリーマンで激混みの店の理由は旨くて、あまりの安さ故でしょう。2軒目とはいえ、3人で3100円ってどういうことでしょうか?カナダの物価に慣れた私には酒の酔いより安すぎて眩暈を覚えました。新橋もセンベロだったのですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年10月8日の記事より転載させていただきました。

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