ソフトバンクと京都大学、金沢工業大学は10月7日、28GHz帯(ミリ波帯)の電波を活用し、携帯基地局からIoTデバイスなどに無線給電するシステムの開発と実験に成功したと発表した。2030年代の実用化が想定されている「Beyond 5G」や「6G」において、基地局にワイヤレス給電機能の実装を目指す。
実験の様子
この実験では、金沢工業大学が開発した世界最高効率をうたう受電レクテナ(電波を電気エネルギーに変換するアンテナ)を活用。ミリ波の通信装置から同レクテナに28GHz帯の電波を当てたところ、5メートルの距離で1素子あたり100μWの電力取得を確認したという。100素子合成すると10mWを受電できる計算となり、省電力のIoTデバイスやセンシングデバイスの平均消費量を十分にまかなえるとしている。
用途としては、工場でのIoTタグやセンシングデバイスへの電力供給、コンシューマー向けには「Tile」や「AirTag」のような小電力デバイスへの電力供給を想定している。スマートフォンのような比較的消費電力の多いデバイスへの対応は、実用化が想定される2030年時点では困難としている。
また、同実験では通信で利用するミリ波やミリ波の通信装置をそのまま流用した点が特徴となる。主に都心部では夜間に電波リソースが大きく空く傾向にあり、こうした空いたリソースを給電に活用できるという。また、通信で利用していない電波を時間分割で給電に割り当てるため、通信への影響もないとしている。
基地局を用いたWPT(ワイヤレス電力伝送)のイメージ図。給電エリアは通信エリアよりも狭い
ワイヤレス給電を受けるには基地局のそばにいる必要があるが、充電専用の「出張局」を張り巡らせることで、常に給電できる環境等も構築できるという。電力を伝送する際の人体への影響については「防護指針を遵守している、人体への影響はほぼない」(担当者)とした。