ラナ・ヴァン・ブラント氏とヘイリー・ディニーン氏が2018年に大麻用アクセサリーブランド、サックビル(Sackville & Co.)を設立したとき、市場にはギャップが存在していた。
アパレルを通して大麻をスタイリッシュにするサックビル
当時、大麻を扱う企業は2つの陣営に分かれていた。男子大学生を対象にした、絞り染めと大麻の葉を多く起用した(アメリカのテレビアニメの)「リック・アンド・モーティ」風のブランディング。またはカリフォルニアのウェルネススタイルを念頭に置いてデザインされた、グープ(Goop)系統だ。 デザイン指向のハイファッションな感性と大麻を組み合わせることはまだ誰も行っていなかった。9月最終週にデビューした最新アパレルコレクションによって、サックビルはペーパーズ+インク(Papers + Ink)、ハウスプラント(Houseplant)、フラワー・バイ・イーディ・パーカー(Flower by Edie Parker)などの流行に敏感な大麻ブランドの新しい波に加わることになった。
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セントラル・セント・マーチンズでファッションデザインを学び、ストリートウェアブランドのOVOとイージー(Yeezy)での勤務経験があるディニーン氏は、ファッションに敏感な男女にサックビルをアピールしたいと述べている。
「大麻を隠れてしか扱えないものだとか、薬局だけにあるものとして扱わないようにしてきた」とヴァン・ブラント氏は語っている。「暖炉の上に堂々と飾れるようなスタイリッシュなものでなければならない。デザインとファッションがその入口になると思っていた」。
サックビルは、巻紙、グラインダー、パイプなどの大麻アクセサリーを販売しているが、アパレルが事業の主要部分である。収益の25%が比較的品数の少ないアパレルからであるが、ヴァン・ブラント氏とディニーン氏はアパレル部門を成長させたいと考えている。サックビルは9月29日(木曜日)に、グリーティング・フロム・ニューヨーク(Greetings from New York)というバナーのもと、パーカーやTシャツ、スウェットシャツなどから成るこれまでで最大のアパレルコレクションをローンチする。価格は45〜125ドル(約6500〜1.8万円)で、同社のオンラインストアで販売される。
ペーパーズ+インクの試み
大麻とファッションの融合はサックビル以外でも起こっている。たばこブランドのジグザグ(Zig-Zag)は、アパレルのドロップを通してファッションとライフスタイルのブランドへと変貌している。イーディパーカー(Edie Parker)はパイプやグラインダーなどの大麻アクセサリーのサブブランド、フラワー・バイ・イーディ・パーカーを設立した。
ペーパーズ+インクは模様を印刷した巻き紙を製造する会社で、ファッションとビューティにも関与し始めている。8月下旬にローンチした最新のコラボレーションはスクラッチネイルズ(Scratch Nails)とのコラボで、顧客はネイルと巻き紙をお揃いにすることができた。
ペーパーズ+インクの創設者であるキャロリン・チュー氏は、特に昨年ニューヨークで大麻が合法化されて以来大手ファッションブランドからアプローチを受けていると語っている。
「話し合っている企業の多くはこの世界を探求したいと考えているが、どういう方法を取ってよいかわからないのだ」と、ロダルテ(Rodarte)とオディロン(Odilon)での職歴があるチュー氏は述べている。「話し合っているバイヤーはすぐにこのアイデアの可能性を理解してとても盛り上がるのだが、その後彼らは上層部の承認を得なければならない。上層部はもっと保守的かもしれない。連邦政府が合法化すれば大シフトが起こり、どの大手ファッションブランドも参入するだろう」。
州により合法化が異なるアメリカでの課題
しかし、大麻ブランドは独自の課題に直面している。米国では州によって大麻の合法性が異なるという状況だが、これはブランドの宣伝方法がしばしば制限されていることを意味する。連邦政府レベルでは大麻は違法であり、31州では娯楽目的での使用は違法となっている。
「マーケティングには多くの課題がある」とヴァン・ブラント氏。「基本的にTikTokに投稿したものは削除される。インスタグラムでも言えることは非常に限られている。我々はポッドキャストでいくつかの広告を打ったが、そこでも制限がある。当社が広告を打つということが知られて、あるポッドキャストがほかの広告主を失ったこともあった。これは我々にとって大きな悩みの種だ」。
チュー氏も同感だと言い、インスタグラムで数えきれないほどシャドーバンされたことがあると述べている。しかし、米国で大麻の合法化が進むにつれて新しいファンとオーガニックトラフィックが生まれており、新規使用者の流入はサックビルにとってはプラスに働いている。同社では2021年に200%の増加があり、2022年にはこれまでに185%増加している。
「当社のウェブサイトを好奇心旺盛な人々を歓迎してインクルーシブなものにした」とディニーン氏。「サイトを訪問する人をおじけづけさせたりはしない。初めての人のためにブログとチュートリアルでガイダンスを提供している。それによってもっと安心してもらえるだろう」。
[原文:Weed, but make it fashion: Cannabis brands use fashion to destigmatize the plant]
DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)