訴訟でFacebookを打ち負かした男性

GIGAZINE
2022年09月27日 21時00分
メモ



アメリカ・ワシントン在住の政治工作員であるザック・ワーツ氏が、アメリカの少額訴訟でFacebookを打ち負かしたと、訴訟関連のトピックを取り上げる個人ブログのWild Westが取り上げています。

The Guy Who Beat Facebook in Small Claims Court
https://wildwest.substack.com/p/the-guy-who-beat-facebook-in-small

ワーツ氏は政治家候補のために地味で時に汚ない仕事を請負うことで生計を立てている政治工作員です。具体的にどういった仕事を行っているかというと、選挙シーズンに対立候補を追跡し、彼らの発言を記録し、SNSなどで拡散されそうな失言などを集め、インターネット広告などを用いてそれを拡散します。そんなワーツ氏が、政治広告の透明性をめぐりFacebookとの間で少額訴訟を引き起こしました。


ワーツ氏の顧客には現職のワシントン州知事や上院議員など、多くの有名政治家がいるそう。そのため、Facebookの選挙広告に関するデータや、地元のラジオ局やテレビ局が放送する伝統的な選挙広告に関するデータなど、選挙広告に関するあらゆるデータを必要としています。ワシントン州には選挙広告に関するデータを公開することを義務付ける法律が存在するため、これを頼ってワーツ氏はデータの開示を行ってきたそうです。

しかし、Facebookがワーツ氏に選挙広告データを開示することを拒否したため、同氏はFacebookを相手に少額訴訟を起こした模様。訴訟を担当したのはワシントン州ヤキマ群の地方裁判所で少額訴訟部門を担当するケビン・G・エイルメス判事。ワーツ氏はFacebookが選挙広告に関するデータの情報開示を拒否したことで、過去4回の選挙戦で合計7万5000ドル(約1100万円)の損失を被ったと主張しています。

Facebookが選挙広告に関するデータの情報開示を拒否していることについては、ワシントン州の司法長官であるボブ・ファーガソン氏も「(Facebookはワシントン州の政治広告透明性法に)繰り返し違反している」と非難し、Facebookを相手取った訴訟を起こしています。


まったく同じ問題でFacebookと争っている司法長官とワーツ氏ですが、司法長官は州民の利益のために行動しているのに対し、ワーツ氏は「Facebookの透明性が欠如していたゆえにお金を失った」と訴えているように、より個人的な観点から訴訟を起こしています。Wild Westはこれを「斬新だ」と指摘します。

Facebookは「選挙広告関連データの情報を開示していない」という批判に対して、広告ライブラリを通して情報を開示していると反論しています。しかし、この広告ライブラリはワシントン州法の下で必要とされるすべての選挙広告関連データを提供しているわけではありません。また、ワーツ氏や他の人が指摘するように、広告ライブラリはアーカイブするべき政治広告を「定期的に見逃している」とのこと。

2022年1月11日に開かれたワーツ氏の少額訴訟に関する公聴会の中で、エイルメス判事は「非常に興味深い」とコメント。この公聴会にFacebookの関係者は出席しませんでしたが、最終的にワーツ氏が訴訟に勝利。少額裁判所は999ドル(約14万4000円)の損害賠償金の支払いをFacebookに命じています。なお、ワーツ氏は少額訴訟で請求できる損害賠償額を「1000ドル(約14万4000円)未満」であると考えていたためこの金額を請求したそうですが、実際は最高1万ドル(約144万円)まで請求できます。このことをWild Westから伝えられたワーツ氏は「クソ……5000ドルにしておけばよかった」と答えたそうです。


同氏が「Facebookによる選挙広告関連データの情報開示拒否」について訴訟を起こしたのは今回が初めてではなく、2020年夏にシアトルを擁するワシントン州キング群の地方裁判所でFacebookに対して同様の訴訟を起こしています。

当時ワーツ氏がFacebookに対して選挙広告関連データの公開を要求した際、担当者から「シアトルのオフィスで広告資料を直接調べるように」と言われたそうです。これに従い、ワーツ氏がFacebookのシアトルオフィスを訪れたところ、警察に通報され、同社から不法侵入の疑いで訴えられそうになったと語っています。これを受けてワーツ氏はキング群地方裁判所でFacebookを訴えることを決意したものの、弁護士を雇う余裕がなかったため、通常は弁護士が加わらない少額訴訟を起こすことにしたそうです。

ワーツ氏は「私はFacebookの選挙情報開示法違反について少額訴訟を起こす最初のひとりにならなければいけませんでした」「それでも私はFacebookのファンです。私は自分のFacebookアカウントを保有しており、友達とつながりを持つのが好きです。ただ、Facebookには法を守ってほしいというだけです」と語りました。なお、ワーツ氏がキング群で起こした少額訴訟では、最終的にFacebookが勝訴しており、Facebook側からの和解の提案をワーツ氏は拒否しています。

Facebookよりもはるかに資金力に乏しい地元のテレビ局でさえ、ワシントン州の選挙広告開示法を順守しているとして、ワーツ氏は「Facebookも選挙広告開示法を順守できるに違いない」とコメント。同氏は少額訴訟を起こす理由を「Facebookに選挙広告開示法を順守させるため」と語り、損害賠償金として支払われることとなる999ドルについては寄付する予定であるとしました。

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