なぜ皆既月食の時に月の色が赤くなるのか?

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日本時間の2021年11月19日の夕方から夜にかけて、満月の98%が隠れる「ほぼ皆既月食に近い部分月食」が日本全国で見られます。そんな月食の中でも、月の全体が隠れる皆既月食や今回のように大部分が隠れるほぼ皆既月食に近い部分月食の場合、月の「地球の影」になっている部分が赤褐色に見えます。「一体なぜ、月食の時は月が赤くなるのか?」という疑問について、科学系メディアのLive Scienceがまとめています。

Why does the moon turn red during a total lunar eclipse? | Live Science
https://www.livescience.com/33627-moon-red-orange-lunar-eclipse.html

月食とは、満月の頃に太陽・地球・月がほぼ一直線に並ぶことで太陽から月に当たる光が遮られ、地球の影が月に落ちて部分的または全体的に欠けて見える現象です。皆既月食やほぼ皆既月食の時に見える月の様子を1枚の画像にまとめたものがこれ。満月だった月に地球の影が落ちて光る部分が小さくなっていき、ついに月のほぼ全体が隠れると、夜空に同化するのではなく赤褐色に見えるようになります。


月が地球の影に入るのであれば、黒く塗りつぶされて夜空と同化する方が自然に思えるかもしれません。Live Scienceはこの疑問について、空が青い理由である「レイリー散乱」という現象が、月食の間に月が赤くなる理由だと述べています。

レイリー散乱とは、光の波長が液体や空気などの媒体を進む際、自らよりはるかに小さい微粒子とぶつかって散乱する現象のことを指します。日中の地球に降り注ぐ太陽光は、大気中の窒素や酸素などの小さな分子によって散乱し、一種のフィルターにかけられている状態です。

太陽光が高い角度から地上に当たっている時は、青や紫といった波長が短くて散乱しやすい光がどんどん目に入ってくるために空が青く見えます。しかし、太陽光が低い角度から入ってくる日の出や日没時には、光が昼時より長く大気層を通過するために青や紫が散乱しきってしまい、今度は波長が長くて散乱しにくい赤やオレンジ、黄色などの光が目に入りやすくなるとのこと。


皆既月食やほぼ皆既月食の際は、確かに地球が太陽と月の間に入って太陽光が直接月に当たるのを防ぎます。しかし、光は地球の輪郭を取り巻く大気層を通って屈折し、皆既月食の時でもわずかに月に降り注いでいるとのこと。そのため、皆既月食で太陽の光が直接当たっていないにもかかわらず、月の姿はぼんやりと夜空に浮かんで見えています。

ところが、この際に降り注ぐ太陽光は地球の大気層を通過しているため、レイリー散乱によって光の波長は散乱してしまいます。地球に太陽光が当たる場合と同様に、波長の短い青や紫といった光は月に到達する前に散乱しきってしまう一方、散乱しにくい赤やオレンジといった光が優先的に月へ届きます。これにより、皆既月食やほぼ皆既月食の時は月が赤褐色に見えるというわけです。

皆既月食時の月の色は、月食の進み具合や大気条件によっても左右されます。NASAによると、大規模な山火事や火山噴火による灰などが大気中に漂っていると、月がより暗い赤色に見える可能性があるとのこと。


11月19日に発生する部分月食は、月食の最大部が約98%という皆既月食に近いものであり、天候に恵まれれば日本全国で観測することができます。部分月食の始まりは16時18分頃、食の最大が18時3分頃、食の終わりが19時47分頃とのこと。国立天文台ではこの天文ショーに合わせて、部分月食のライブ配信を11月19日16時から開催する予定です。

【ライブ配信】部分月食(2021年11月19日) | 国立天文台(NAOJ)
https://www.nao.ac.jp/news/events/2021/20211101-live.html


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