近年登場する自動車に標準搭載されているタイヤのホイールは、数十年前に多く見られたホイールと比べてへこみが浅いものが増えました。ホイールの主流がへこみの深い「ディッシュホイール」からへこみが浅く平らに近い「フラットホイール」に変化した理由について、フォードやテスラで自動車の設計に関わった経験を持つユベール・ミース氏が解説しています。
Here’s Why Car Wheels Are So Flat These Days (And No, It’s Not Just Aerodynamics And Styling) – The Autopian
https://www.theautopian.com/heres-why-car-wheels-are-so-flat-these-days-and-no-its-not-just-aerodynamics-and-styling/
ホイールの形状変化の例はこんな感じ。左側のへこみが深いディッシュホイールは数十年前に発売された自動車で多く採用されていましたが、近年登場する自動車の多くは右側のようなフラットなホイールを採用しています。ホイールの形状変化はデザイントレンドの変化も大きく影響していますが、ミース氏は「ステアリングの構造変化」もホイールの形状変化に影響していると指摘しています。
ハンドルを操作して自動車を旋回させる際に、タイヤは接地面の中央を中心に回転しているわけではなく、接地面の中央から少しずれた部分を中心に回転しています。「タイヤが接地面の中央からずれた部分を中心に回転している」という状況がイメージできない場合は、以下のムービーを再生するとスッキリ理解できます。
Steering Wheel – Axis Inclination – Scrub Radius Animation – YouTube
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この「接地面の中央から回転の中心までの距離」は「スクラブ半径」と呼ばれています。ミース氏によると、スクラブ半径が大きくなるほどハンドル操作に反発する力(真っすぐに戻ろうとする力)も大きくなるため、スクラブ半径はなるべく小さくするのがベターとのこと。スクラブ半径を小さくしようとすると自動車のブレーキなどの部品をタイヤの外側に寄せる必要があり、ホイールをへこませるスペースがなくなります。このため、近年の自動車ではホイールがフラットになっているわけです。
上記の通り、スクラブ半径を小さくすると「真っすぐに戻ろうとする力」が小さくなります。しかし、数十年前の市販車で主流だった「ボールナット式のステアリング」は近年主流の「ラック&ピニオン式のステアリング」と比べて「真っすぐに戻ろうとする力」が小さく、ドライバーが旋回操作の感覚をつかみづらいという問題がありました。このため、「ボールナット式のステアリング」を採用した自動車ではスクラブ半径を小さくすることは求められず、タイヤの内側にホイールをへこませられるだけの空間が存在していました。
「ボールナット式のステアリング」から「ラック&ピニオン式のステアリング」に以降した際のホイール形状の変化を示す例はこんな感じ。まず、「ボールナット式のステアリング」を採用していた2000年式フォード・エクスペディションの写真を見ると、ホイールが深くへこんでいることが分かります。
ところが、「ラック&ピニオン式のステアリング」を採用した2004年式のフォード・エクスペディションでは、ホイールがフラットになりました。
ミース氏によると、ホイールの形状変化には空力特性の最適化を求めたことも影響しているとのこと。解説の最後にミース氏はへこみの深いディッシュホイールの見た目を好んでいることを明かし、「ディッシュホイールが自動車に採用され続けることを願っています。いつの日か、未来のエンジニアがディッシュホイールとエアロダイナミクスの両立を実現するかもしれません」と述べています。
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