なぜ熱帯地方は多様な生命であふれているのか?

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熱帯の地域には多種多様な生命があふれており、例えば熱帯雨林は面積が地表のたった2%なのに動物や植物の種の50%がそこに生息していると言われています。カラフルな生き物や奇妙な見た目の動物など、熱帯にさまざまな生き物がいる理由について、科学系ニュースサイトのLive Scienceが解説しました。

Why is there so much biodiversity in the tropics? | Live Science
https://www.livescience.com/why-so-many-species-in-tropics

有名なドイツの探検家であるアレクサンダー・フォン・フンボルトが1807年に、「熱帯に近づくほど構造の多様性、形の優雅さ、色の混合の度合い、生命が持つ若々しさや活力が増していく」と報告するなど、熱帯には多様な生物が住んでいることが古くから知られています。


アメリカ・プリンストン大学のアンドリュー・ドブソン教授によると、「生物多様性の緯度勾配」として知られているこの現象を説明する仮説は、大きく分けて次の3つあるとのこと。

◆1:エネルギーが豊富だから
この仮説は、熱帯地方の日照時間が長く太陽光エネルギーが豊富なため、降水量や土壌の栄養分が多いことも相まって植物の成長が促され、それが生態系を支えているという説です。進化論の観点から見ると、植物の繁殖が盛んであればあるほど動物の多様性も高まるとのこと。

その理由についてドブソン教授は「植物が多様になると植物を食べる生き物も増えて、特定の植物を食べるスペシャリストやさまざまな植物を食べるゼネラリストなどが生まれます。そして、そうした草食動物を食べる肉食動物もスペシャリストやゼネラリストになっていくのです」と説明しています。


◆2:氷に閉ざされないから
2つ目の仮説は、熱帯地方は大規模な凍結に見舞われにくい環境であるため、生物種が長い時間をかけて進化することができたという考え方です。現代の生物のほとんどは過去2億年の間に発展してきた種ですが、その間に何度か氷河期を経験しています。

氷河期が訪れて、北極や南極の氷が拡大するとそれまでその地域で栄えていた生命はいなくなってしまいますが、氷河期になっても凍り付かない熱帯に住む生物はその間も進化と多様化を続けることができます。


◆3:環境収容力が高いから
環境収容力とは、ある環境に生息できる生き物の量のことです。この仮説では、熱帯地方にはより多くの資源があるのでより多様な動物が生息すると説明しており、そういう意味ではエネルギーが豊富なことを理由にしている1つ目の仮説と関連性があります。

しかし、チェコにあるプラハ・カレル大学の生態学者であるデビッド・シュトルヒ教授によると、熱帯では新たな生物種が誕生する種分化が進む一方で、絶滅も頻繁に起きているとのこと。なぜなら、狭い地域で多くの生物が生存競争を繰り広げるとそれぞれの種の集団は小さくなり、絶滅のリスクが増すからです。

このことから、熱帯地方は生物の種の「ゆりかご」であると同時に、多くの古い種を保存している「博物館」であるとも言われており、この点は2つ目の仮説でも支持されています。もちろん、これまでに熱帯に登場したあらゆる種がまだ生存しているわけではありませんが、種分化と絶滅の速度が均衡を保っていることから「熱帯はその環境収容力によって多様な生態系を支えている」という考え方が生まれると、シュトルヒ教授は話しました。


これらの仮説が提唱されている生物多様性の緯度勾配ですが、実は普遍的なものではなく、例外もあります。その1つが、極寒の南極にいる豊富なエサを食べて繁栄しているペンギンです。また、広葉樹との競争に敗れる形で寒冷地に広がっている針葉樹といった例もあります。このように、熱帯ではなく寒冷な気候への適応を強いられることで生まれる多様性もあると、シュトルヒ教授は指摘しています。

さらに、熱帯に近いほど多様性が増すという法則とは逆に、赤道から遠くなるほど多様になるタイプの生き物もいます。それは、寄生虫です。前述の通り多くの種の生き物がひしめいている熱帯では、特定の種の個体数が少なくなる傾向があるため、もし宿主が絶滅してしまったら寄生虫も道連れになります。

一方、緯度が高い地域では熱帯地方より多様性は低い代わりに個体数は多いため、寄生虫から見れば環境収容力が高いことになります。このように、全体的な生物多様性が低い地域でも特定の分野では他の地域より多様な生態系を育む「種分化ポンプ」の役割をすることがあるとドブソン教授は話しました。

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