フロッピーディスク販売の最後の砦とも呼ばれる人物へのインタビューが公開中

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by Floppy Disk Fever

かつてはPC用の記録媒体として広く流通したものの、新しい記録媒体の登場で令和においてはとっくに時代遅れの遺物と見なされているフロッピーディスクですが、一部企業や官公庁ではいまだに使用されているのも現実です。このようなフロッピーディスクを販売する数少ない企業の1つ、floppydisks.comの創設者へのインタビューが公開されています。

We Spoke With the Last Person Standing in the Floppy Disk Business – Eye on Design
https://eyeondesign.aiga.org/we-spoke-with-the-last-person-standing-in-the-floppy-disk-business/

2022年時点でも現役でフロッピーディスクの販売を行っているというfloppydisks.comを創設したのがトーマス・パースキー氏です。すでにどのメーカーもフロッピーディスクの生産を終えているため、パースキー氏は不要となったフロッピーディスクを購入し、フォーマットして再販するという業務を行っています

インタビュアーのニーク・ヒルクマン氏がまず「floppydisks.comのドメインを取得したのはいつですか?」と尋ねたところ、パースキー氏は「1990年頃だったと思います」と回答。まさにフロッピーディスクそのものを指すドメインをパースキー氏が手に入れられたのは幸運なことのように思えますが、もともとこのドメインは別の人物から購入したものだといいます。商標などの文字列を含んだドメイン名を先に取得して転売する行為は「サイバースクワッティング」などと呼ばれていますが、パースキー氏はこれを毛嫌いし、犯罪だと考えていたとのこと。しかしパースキー氏の妻が即座に購入を決め、小切手を振り出してしまったそうです。パースキー氏は「私の主義に反することでしたが、妻は私よりずっと頭がよかった」と振り返り、結局のところ自身の利益につながったとしています。


パースキー氏は今でこそ空のフロッピーディスクを販売する仕事をしていますが、会社を設立した当時はフロッピーディスクをコピーするのが仕事だったとのこと。1980年代から1990年代にかけて、フロッピーディスクをコピーする仕事は「お金を印刷するようなもの」で、とにかくもうかったとパースキー氏。

当時、フロッピーディスクは至る所で販売されていたので、空のフロッピーディスクを売るような仕事はやろうとも思わなかったそうです。しかし大手メーカーがフロッピーディスクの生産を取りやめるにつれ、人々はフロッピーディスクを取り扱い続けるパースキー氏を頼るようになります。大量の在庫を持つパースキー氏は次第に空のフロッピーディスクを売る側に回り、今では業務の9割を占めるようになったとのこと。

もともとパースキー氏は税理士として働いていましたが、税務関係のソフトウェアをプログラマーと協力して開発するうちに、ソフトウェアを大量のフロッピーディスクにコピーする必要が生じました。当初コピーは代理店に依頼していたものの、品質があまり良くなく、お金も時間もかかってしまったため、自分たちでやってしまおうと考えたそうです。

こうして自らコピーを始めたパースキー氏の事務所でしたが、四半期に1回程度しか使われないコピー機をもったいないと感じた彼らは次第に他人のコピーを請け負うことになります。こうしてソフトウェア開発とコピーの二足のわらじを履いた事務所からパースキー氏は独立し、コピーやデータ移行専門の仕事をする会社としてfloppydisks.comを立ち上げたというわけです。

by Floppy Disk Fever

次に「なぜフロッピーディスクへこだわるのですか?」と尋ねられたパースキー氏は、「仕事を辞めるのを忘れてしまったからですね」と答えました。「当時フロッピーディスクのコピーを仕事としていましたが、CDのコピーはやらないと思っていました。そうこうしているうちに私たちはCDのコピーを行うようになりましたが、次に登場したDVDは絶対にやらないと言っていたのを覚えています。結局DVDのコピーも始めてしまい、今ではUSBメモリもコピーしています。こうしたことから、私は決して優れたビジョンは持っていないことが分かってもらえると思います」とパースキー氏。

「世界中の誰もが『この産業は滅びゆくもの』だと考えていましたが、私は機材も製品も全部買ってしまったので『このまま収入源を確保しておこう』と思っただけでした。時がたつにつれてフロッピーディスクのユーザー数は減っていきましたが、メーカーの数はもっと早く減っていきました。結果的に最後までフロッピーディスク業界に居座り続けた男のシェアが伸びていったのです。その男こそ、私のことです」とパースキー氏は語りました。

パースキー氏が最後にメーカーからフロッピーディスクを購入したのは2010年頃。メーカーの生産も終了しているため在庫が危ぶまれるところですが、2022年時点で50万枚が手元にあり、おまけに毎日1000枚ほどのいらなくなったフロッピーディスクが送られてくるとのことで、「毎日がクリスマスみたいですね」とパースキー氏は話しています。いまだにフロッピーディスクの購入を行うパースキー氏は、古いフロッピーディスクを処分したい企業にとってありがたい存在であることがうかがえます。

by Floppy Disk Fever

こうしたフロッピーディスクの主な販売先は、いまだにフロッピーディスクを現役で使い続ける企業だといいます。特に航空業界や医療業界では昔からフロッピーディスクが使われているため、需要はまだまだあるそうです。

しかし、こうした現状に対して浮かぶ疑問は「まだ需要があるフロッピーディスクをなぜメーカーは作らないのだろう」ということ。この理由はフロッピーディスクの生産の難しさにあるそうで、パースキー氏は「型にプラスチックを流し込めばおおよそできあがるCDやDVDと違い、フロッピーディスクは複数の部品を必要とするため、製造ラインを一から作り上げるのはコストがかかります。需要も多くないのに世界中に在庫があるフロッピーディスクを再び生産しようという企業はどこにもないのです」と述べました。


データの移行も受け持つパースキー氏らの元には、顧客から「亡くなったおばあちゃんや赤ちゃんの写真をもう一度見ることができてうれしい」といった喜びの声も送られてくるとのこと。

また、「フロッピーディスクに未来はあるのか?」と尋ねられたパースキー氏は「レコード盤のような復活はなく、タイプライターのようなニッチな製品という位置にとどまるでしょう」と推測しています。「アメリカの作家の中には、タイプライターでしか書けないと語る人が何人もいます。タイプライターは彼らの芸術的才能と結びついたとても大切なものなのです。フロッピーディスクも、それに近い存在になると思います。交換することができないのです」と語りました。

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