ある日のことだ。当編集部の「アホな上司」としてお馴染みのYoshioが私にこんなことを頼んできた。
「佐藤さん、パンダのぬいぐるみ取ってきて欲しい」
その日、猛烈に気分が良かった私は「よ~し! オイラ、行っちゃうよ!!」と気前よく快諾してしまった。安易に頼みを聞いてしまった私は、この後「Yoshio、てめえ、殺す気かーーッ!!」となったのであった。
・ひどいヤツ
その日のことを正確にお伝えしよう。いかにYoshioがひどいヤツかをご理解頂きたい。その日彼は私にこう伝えたのだ。
Yoshio「佐藤さん、ロケット寮(編集部で借りているマンション)を片づけるから、置いてあるパンダのぬいぐるみ取ってきて欲しい。お願いできる?」
普段ならもっと乱暴に「パンダのぬいぐるみ取ってこんかい、ワレー!」とかいうYoshioが、バカに丁寧に頼むものだから、気分のよかった私もつい調子に乗って……。
佐藤「よ~し! オイラ行っちゃうよ!! 任せてくれ~!!」
と、アホみたいな返事をしてしまったのだった。そして……。
佐藤「ほんじゃ、行ってきま~す!」
佐藤「ぬいぐるみなんて、オイラ1人で十分だ~!」
そう告げて、扉を開けて地獄に飛び込んでしまったのである。
佐藤「ここがロケット寮だぞ! じゃあちょっとぬいぐるみを取ってくるね! Yoshioは下で待っといてくれ。すぐ取ってくるから」
~ 30分後 ~
Yoshio「お~い、遅せえよ。ぬいぐるみを部屋から出すのに、どんだけかかってんだよ。早く来~い!」
佐藤「デカすぎだろーーーッ!!」
佐藤「このクソ暑い中を1人で運ばせるなんて、殺す気かーーーッ!!」
Yoshio「「オイラに任せろ」と言ったのはお前自身だ。責任を持って運ばんかい」
佐藤「クソが! こうなりゃ意地だ。運んでやる」
佐藤「せーのっと」
佐藤「重い。そして持ちにくい。しかもフワフワでめちゃくちゃ暑い」
佐藤「う~ん……、事務所まで遠いな。この道のりをこんなに長いと感じたのは初めてだ」
Yoshio「歩くの遅せえぞ。日が暮れちまうぞ」
佐藤「貴様とは13年の付き合いになるけど、これほどまでに憎たらしいと感じたのは初めてだ」
佐藤「ストップ、休ませろ」
Yoshio「おいおい、まだ事務所まで3分の1も進んでないぞ」
佐藤「おっしゃ、行こう」
佐藤「Yoshioよ。俺は貴様より10個くらい年上なんだよ。わかるな?」
Yoshio「そんなの関係ねえ! オッパッピー!」
佐藤「……」
佐藤「休む」
Yoshio「また休憩?」
佐藤「うるせえ」
佐藤「まだ半分も来てねえよな。事務所まで遠すぎ」
佐藤「もう1回休憩」
Yoshio「いい加減にしろよ、本当に日が暮れるだろ」
佐藤「いい加減にするのは貴様の方だ。舐めた口ききやがって」
佐藤「がんばれ。がんばれ俺」
佐藤「信じられるのは自分だけだ」
Yoshio「何をブツブツ言ってやがる」
佐藤「……」
Yoshio「また休憩かよ!」
佐藤「……」
Yoshio「もうジジイだな」
佐藤「……」
佐藤「ごちゃごちゃうるせえんだよ、オラーーーッ!!」
Yoshio「遅! 走るの遅!!」
佐藤「チキショー、無駄に体力削っちまった。あそこの公園で休憩」
Yoshio「走ったせいでかえって時間ロスになったんじゃない?」
佐藤「何とでも言え。これはもう俺の戦いだ」
佐藤「はあ~、疲れた」
佐藤「疲れたーーーーーーーーー!!」
佐藤「俺は良くやってると思うぞ。あと2年で50歳、編集部最高齢にこんな過酷なことをさせるなんて。なぜ最年少のあひるねこにやらせないんだ。ツライことばっかり俺にやらせやがって。
クソクソクソクソクソ! クソがーーー! みんな消えてしまえッ!!」
佐藤「毒づいたら元気になった! ラストスパートだ!!」
編集部のみんなが事務所の入り口まで迎えて来てくれて、無事にゴールイン!
佐藤「やっぱ仲間っていいよな!」
佐藤「今日の記念に写真撮ろうぜ! 最高の仲間だぜ!」
佐藤「パンダ大好き~!」
そんな訳で、半分死にかけたけどパンダのぬいぐるみを運ぶことに成功しました。
おわり~ッ!!
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24