1日の塩分摂取量をわずか「1g」減らすだけで脳卒中や心臓発作のリスクを軽減し数百万人の命を救うことができる

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食事をおいしくするために「塩」は欠かせない調味料ですが、塩分の摂り過ぎは体に悪いことも知られています。世界的に見ても食塩摂取量が多いことが報告されている中国の研究では、「1日の塩分摂取量をわずか1g減らすだけで虚血性心疾患や脳卒中のリスクを大幅に減らすことができ、2030年までに900万件の症例を防ぐことが可能」という結果が報告されました。

Reducing daily salt intake in China by 1 g could prevent almost 9 million cardiovascular events by 2030: a modelling study | BMJ Nutrition, Prevention & Health
https://nutrition.bmj.com/content/early/2022/06/27/bmjnph-2021-000408

A Single Gram of Salt Is The Difference For Millions of Heart Attacks : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/a-single-gram-of-salt-is-the-difference-for-millions-of-heart-attacks

世界保健機関(WHO)の推奨塩分摂取量は1日あたり5g未満とされていますが、日本人が塩分摂取量をこれ以下に抑えることは非常に困難です。そのため、日本では成人男性の推奨塩分摂取量が1日7.5g未満、成人女性が6.5g未満とされていますが、依然として平均的な男性は1日10g以上、女性も1日9g以上の塩分を摂取しているとの調査結果があります。

中国の成人も平均で1日10g以上の塩分を摂取しているとのことで、日本と同様に塩分摂取量がWHOの推奨量をはるかに上回っています。中国では死亡者の40%が虚血性心疾患や脳卒中といった心血管疾患によるものであり、過剰な塩分摂取は心血管疾患を引き起こすことが知られていることから、中国の研究チームは塩分摂取量と心血管疾患のリスクについて分析しました。

研究チームは、「中国における食塩摂取量削減による健康への影響を調べるこれまでの推定は、時代遅れの、あるいは信頼性の低いデータソースを使用しており、減塩による数年に及ぶ血圧への影響は考慮されていませんでした」と述べています。


研究チームは中国全土の6つの省(青海省・河北省・黒竜江省・四川省・江西省・湖南省)で行われたランダム化比較試験のデータベースから、5000人以上の食塩摂取量および血圧のデータを収集し、最新の研究結果から得られた収縮期血圧に対する減塩の効果を基に分析を実施しました。

分析の結果、1日あたりの塩分摂取量をわずか1g減らすだけで虚血性心疾患のリスクを約4%低下させ、脳卒中のリスクも約6%低下させられるという結果が得られました。また、この塩分摂取量の減少が2030年まで持続すれば、2022年以降だけで900万件もの心血管疾患発症例を防ぐことが可能だとのこと。900万件の心血管疾患発症例のうち400万件は致死的になるとみられていることから、この影響はかなり大きなものといえます。

また、中国政府は2030年までに1日の塩分摂取量を5g未満にすることを目標としており、この減塩目標が達成できた場合、虚血性心疾患のリスクを約23%、脳卒中のリスクを約30%減らせるとのことです。加えて研究チームは、データの制限により今回の研究では心血管疾患に焦点を当てたものの、減塩が慢性腎臓病や胃がんのリスクにも影響を及ぼす可能性があると示唆しています。

研究チームは、「中国における塩分摂取量を減らすことは、全国のあらゆる年齢の男女の心血管疾患発症率と死亡率を大幅に減少させる可能性があります」「中国の人々が減塩を達成し、維持することは、何百万もの不必要な心血管疾患の発症や死亡を防ぐことにつながります」と述べました。


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