住民税が高い/安い自治体はどこ? 差額はいくら? 全47都道府県+5市町をランキングにして比較してみた

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 住民税は住む自治体によって差がある。ただし、差があると言っても多くのケースで引っ越してメリットがあるほどの差ではない。ところが都市伝説的に「愛知県豊田市はトヨタがあるから住民税が安い」などと思っている人は少なくない。読者の中にご自身の住む市区町村は住民税が高いと思っている人がいるかもしれない。今回は、住む自治体によって住民税がどれくらい高いのか、安いのかをお知らせしよう。

住民税が高い/安いランキング1位の自治体は?「課税所得200万円の人」で比べてみた

 住民税の課税所得(課税標準額)が200万円の人の年間の住民税額をランキングで見てみよう。47都道府県に、税金の高い「兵庫県豊岡市」「神奈川県横浜市」「兵庫県神戸市」、税金の安い「愛知県名古屋市」「大阪府田尻町」を加えた52自治体を住民税が高い順に並べてみた。

課税所得(課税標準額)200万円の人の年間の住民税額を高い順に並べた自治体のランキング

 事例の課税所得200万円というのは、サラリーマン独身(扶養家族なし)、生命保険未加入で社会保険(厚生年金+健康保険+雇用保険)を65万円とすると、年収は440万円ほどとなる。なお、表の住民税額には調整控除(-2500円~)は含まれていない。

 ほとんどの都道府県内の市町村民税に差はない。市町村まで含めたランキングにすると1700を超えるランキングとなってしまうので、ここでは税額が高い・安いことで有名?な一部の市町(5市町)を加え、やや変則的なランキングとしている。これら5市町以外の人は、原則、 自分の住む都道府県ごとに税額を参照してほしい。

 住民税高いランキング1位は兵庫県豊岡市、2位は横浜市、3位タイは宮城県と神戸市、以下、5位タイは岩手県など6県が並んでいる。

 表の「差額」は、東京都(を含む41位タイの10都道県)を基準とした場合の差を表している。東京都に比べ兵庫県豊岡市は2800円、横浜市は1700円、宮城県と神戸市は1200円高い。サラリーマンは12分割して毎月天引きされるので、宮城県に住むと東京都より住民税が月額100円高くなる。

 一方、最も住民税が安いのは大阪府田尻町、住民税安いランキング2位は名古屋市となっている。

田尻町ってどこ?

 田尻町ってどこ?と思われた人がいるだろう。大阪府田尻町は大阪府南部に位置し、人口は約8400人。町内にある有名施設は関西国際空港で、田尻町の面積の3分の2は関西国際空港の敷地となっている。格安航空会社のPeach Aviationの本社も田尻町。隣接する自治体に、ふるさと納税で有名になった泉佐野市がある。

 田尻町は大阪府で唯一、地方交付税不交付団体となっている。不交付団体とは国から地方交付税交付金(=補助金・お小遣い)をもらっていない自治体で、都道府県では東京都のみ。全国約1700の自治体で不交付となっているのは54団体だけ。総務省のリストを見ると、北海道は泊村、青森県は六カ所村、福井県は高浜町、佐賀県は玄海町など原発関連の施設がある自治体が散見される中に、田尻町が含まれている。

住民税の計算方法――「都道府県民税」「市町村民税」と「均等割」「所得割」の内訳

 住民税の計算方法を簡単に確認しておこう。

 住民税は「都道府県民税」と「市町村民税」を合算したものが納税額となる。例えば、東京都町田市は都民税と市民税、兵庫県神戸市は県民税と市民税、大阪府田尻町は府民税と町民税となる。東京23区は特別区という扱いなので、市町村民税ではなく特別区民税となる。毎回「市町村民税と特別区民税」と表記すると長くなるので、市町村民税の表記に特別区民税も含まれると思っていただきたい。

 さらに都道府県民税と市町村民税は「均等割」と「所得割」に分けられる。均等割は所得に関わらず、同じ自治体に住む納税者であれば、所得が100万円の人も1000万円の人も同額を納税する。所得割は課税所得に10%(一部自治体を除く)の税率を掛けたもので、所得が多い人ほど納税額も多くなる。

 所得割の基準となる課税所得は個々の控除額(扶養家族、生命保険など)によるので、ご自身の課税所得は住民税の通知書などで確認していただきたい。

住民税の通知書(給与所得等に係る市民税・都民税 特別徴収税額の決定・変更通知書)の例

住民税の通知書の例(自治体により異なる)。この例では、課税標準・総所得③の206万5000円が課税所得の額

 自治体のウェブサイトに掲載されている住民税の内訳をいくつか確認してみた。東京都立川市は市民税均等割が3500円、都民税均等割が1500円、所得割の税率は市民税6%、都民税4%で合計10%となっている。千葉県の住民税の内訳は東京都立川市と全て同じだ。

東京都立川市のウェブサイトの住民税についての説明ページ

東京都立川市は市民税均等割が3500円、都民税均等割が1500円、所得割の税率は市民税6%、都民税4%で合計10%

千葉県のウェブサイトの住民税についての説明ページ

千葉県は均等割、所得割とも東京都立川市と同じ

 東京都や千葉県(ランキング41位タイの10都道県)は、均等割の市町村民税が3500円、都道府県民税が1500円。本来は市町村民税が3000円、都道府県民税が1000円だが、2023年(令和5年)までは全国一律で東日本大震災の復興特別税がそれぞれ500円ずつ増税されている。2024年(令和6年)から別の増税が同額で始まるので市町村民税3500円、都道府県民税1500円が均等割の標準額と考えよう。

 所得割は市町村民税6%、都道府県民税4%で合計10%。全国20市の政令指定都市は市民税8%、都道府県民税2%と比率が異なっているが、合計10%は同じなので住民税の納税額に差はない。

 東京都などランキング41位タイの10都道県より住民税が高い自治体の内訳もいくつか見てみよう。

福島県のウェブサイトの住民税についての説明ページ

福島県は均等割の市町村民税が3500円、県民税は森林環境税1000円が増税され2500円。所得割の税率は同じ

静岡県浜松市のウェブサイトの住民税についての説明ページ

浜松市は均等割の市民税が3500円、県民税は森林づくり県民税400円が増税され1900円。所得割の税率は市民税8%、県民税2%で合計10%

 福島県は均等割の県民税に森林環境税1000円が増税され2500円。これによりランキングは5位タイとなっている。所得割の税率は市町村民税6%、県民税4%で東京都と同じだ。

 静岡県浜松市は均等割の県民税に森林づくり県民税400円が増税され1900円。これにより静岡県のランキングは39位となっている。所得割の税率は政令指定都市なので市民税8%、県民税2%となっているが、合計10%なので所得割は東京都と差はない。

住民税の差=ほとんどが都道府県の「均等割」の差

 住民税の自治体ごとの差は、ほとんどが各都道府県の均等割の差によるものだ。

 均等割は、都道府県民税の額が1500円になっている10都道県は増税がなく、残りの37府県は府県独自の増税が行われている。このような自治体独自の増税を「超過課税」と呼ぶ。市区町村で均等割の増税を行っているのは横浜市(横浜みどり税900円)、神戸市(認知症対策 神戸モデル400円)の2つの市だけだ。

 37府県の増税額は、宮城県の1200円(みやぎ環境税)が最高額。大阪府の300円(森林環境税)が最少額。愛知、広島、福岡などの500円が20県と半数以上を占めている。

自治体名 均等割 所得割 備考
都道府県 市町村 都道府県 市町村 合計 都道府県 市町村 超過課税などの詳細
北海道 1500円 3500円 5000円 4.0% 6.0%  -
青森県 1500円 3500円 5000円 4.0% 6.0%  -
岩手県 2500円 3500円 6000円 4.0% 6.0% いわての森林づくり県民税 1000円
宮城県 2700円 3500円 6200円 4.0% 6.0% みやぎ環境税 1200円
秋田県 2300円 3500円 5800円 4.0% 6.0% 秋田県水と緑の森づくり税 800円
山形県 2500円 3500円 6000円 4.0% 6.0% やまがた緑環境税 1000円
福島県 2500円 3500円 6000円 4.0% 6.0% 森林環境税 1000円
茨城県 2500円 3500円 6000円 4.0% 6.0% 森林湖沼環境税 1000円
栃木県 2200円 3500円 5700円 4.0% 6.0% とちぎの元気な森づくり県民税 700円
群馬県 2200円 3500円 5700円 4.0% 6.0% ぐんま緑の県民税 700円
埼玉県 1500円 3500円 5000円 4.0% 6.0%
千葉県 1500円 3500円 5000円 4.0% 6.0%
東京都 1500円 3500円 5000円 4.0% 6.0%
神奈川県 1800円 3500円 5300円 4.025% 6.0% 水源環境保全税 300円、 税率 +0.025%
神奈川県 横浜市 1800円 4400円 6200円 2.025% 8.0% 横浜みどり税 900円
新潟県 1500円 3500円 5000円 4.0% 6.0%
富山県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 水と緑の森づくり税 500円
石川県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% いしかわ森林環境税 500円
福井県 1500円 3500円 5000円 4.0% 6.0%
山梨県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 森林環境税 500円
長野県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 長野県森林づくり県民税 500円
岐阜県 2500円 3500円 6000円 4.0% 6.0% 清流の国ぎふ森林・環境税 1000円
静岡県 1900円 3500円 5400円 4.0% 6.0% 森林(もり)づくり県民税 400円
愛知県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% あいち森と緑づくり税 500円
愛知県 名古屋市 2000円 3300円 5300円 2.0% 7.7% 均等割 -200円、税率 -0.3%
三重県 2500円 3500円 6000円 4.0% 6.0% みえ森と緑の県民税 1000円
滋賀県 2300円 3500円 5800円 4.0% 6.0% 琵琶湖森林づくり県民税 800円
京都府 2100円 3500円 5600円 4.0% 6.0% 豊かな森を育てる府民税 600円
大阪府 1800円 3500円 5300円 4.0% 6.0% 森林環境税 300円
大阪府 田尻町 1800円 3200円 5000円 4.0% 5.4% 均等割 -300円、税率 -0.6%、令和5年まで
兵庫県 2300円 3500円 5800円 4.0% 6.0% 県民緑税 800円
兵庫県 神戸市 2300円 3900円 6200円 2.0% 8.0% 均等割 認知症対策 神戸モデル 400円
兵庫県 豊岡市 2300円 3500円 5800円 4.0% 6.1% 税率 +0.1%
奈良県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 森林環境税 500円
和歌山県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 紀の国森づくり税 500円
鳥取県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 森林環境保全税 500円
島根県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 水と緑の森づくり税 500円
岡山県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% おかやま森づくり県民税 500円
広島県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% ひろしまの森づくり県民税 500円
山口県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% やまぐち森林づくり県民税 500円
徳島県 1500円 3500円 5000円 4.0% 6.0%
香川県 1500円 3500円 5000円 4.0% 6.0%
愛媛県 2200円 3500円 5700円 4.0% 6.0% 森林環境税 700円
高知県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 森林環境税 500円
福岡県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 森林環境税 500円
佐賀県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 森林環境税 500円
長崎県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% ながさき森林環境税 500円
熊本県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 水とみどりの森づくり税 500円
大分県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 森林環境税 500円
宮崎県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% 森林環境税 500円
鹿児島県 2000円 3500円 5500円 4.0% 6.0% みんなの森づくり県民税 500円
沖縄県 1500円 3500円 5000円 4.0% 6.0%
※赤文字は増税、青文字は減税、東京都などプラスマイナスのない標準課税は黒文字とした。

 次に、47都道府県に横浜市(県民税 +300円、市民税 +900円)、神戸市(県民税 +800円、市民税 +400円)を加えた49自治体を、均等割の高い順に分類してみた。

 最高額の宮城県で年額1200円、月額にして100円はそれほど大きな額ではない。近隣の岩手、山形、福島に引っ越しても年に200円の減税、青森、新潟なら年に1200円の減税となるが、そもそも各自治体の超過課税が数年後に増税・減税されるかもしれないので住民税を理由に引っ越す意味はないだろう。

  • 均等割増税額 1200円
    宮城県、横浜市、神戸市
  • 均等割増税額 1000円
    岩手県、山形県、福島県、茨城県、岐阜県、三重県
  • 均等割増税額 800円
    秋田県、滋賀県、兵庫県
  • 均等割増税額 700円
    栃木県、群馬県、愛媛県
  • 均等割増税額 600円
    京都府
  • 均等割増税額 500円
    富山県、石川県、山梨県、長野県、愛知県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
  • 均等割増税額 400円
    静岡県
  • 均等割増税額 300円
    大阪府
  • 均等割増税額 0円
    北海道、青森県、埼玉県、千葉県、東京都、新潟県、福井県、徳島県、香川県、沖縄県

 均等割を増税している府県は37と半数を超えているが、所得割の税率を上げている(増税)のは神奈川県(+0.025%)と兵庫県豊岡市(+0.1%)の2つの自治体だけだ。都道府県民税、市町村民税の合計税率は通常10%だが、神奈川県民は10.025%、豊岡市民は10.1%となる。例えば課税所得(課税標準額)が100万円、200万円、400万円のそれぞれの増税額は、神奈川県民は250円、500円、1000円、豊岡市民は1000円、2000円、4000円と所得額に応じて増えていく。

夕張市の税率は?

 かつて全国一住民税が高いと言われたのは財政破綻した北海道夕張市だった。市民税の均等割が+500円、所得割が+0.5%。兵庫県豊岡市の+0.1%を大幅に上回る税率だ。財政再生計画の見直しにより均等割の+500円を廃止、6.5%だった所得割の税率を6%(道民税と合わせて10%)に戻している(東京都と同じ)。これは全国最年少で市長となった鈴木直道氏(現:北海道知事)の手腕によるものと思われる。

 次に住民税の安い自治体も見てみよう。大阪府田尻町は町民税の均等割が-300円だが、大阪府の府民税が+300円なので差し引きゼロ、東京都民と同額だ。名古屋市は市民税の均等割が-200円だが、愛知県の県民税が+500円なので東京都民より300円増税となる。

 所得割の税率は田尻町が-0.6%で5.4%。府民税の税率4%を加味すると9.4%となる。名古屋市は-0.3%で7.7%。県民税の税率が2%なので9.7%となる。課税所得(課税標準額)が100万円、200万円、400万円のそれぞれの納税額は、田尻町民は-6000円、-1万2000円、-2万4000円、名古屋市民は-3000円、-6000円、-1万2000円と所得額に応じて減税される。この減税額はそこそこ魅力的だと感じられる。

 なお、田尻町の減税は2023年(令和5年)までとなっている。2017年(平成29年)から2019年(令和元年)まで3年間実施され、その後、2020年(令和2年)から4年間延長されている。さらなる延長があるのか来年で終了するのかは不明だ。

 筆者は自宅マンションが名古屋市内、住民票も名古屋なので住民税が減税されている。土地勘、肌感で思うに近隣の春日井市、日進市、大府市、東海市などから名古屋市内に引っ越せば税金は安くなるが、住居費(アパート、分譲住宅、駐車場など)の増加は減税分を上回る可能性が高い。

課税所得ごとに「住民税が高い自治体」をランキング。神奈川県民は高所得者ほど順位が上昇!?

 均等割の増税は所得金額の影響を受けないが、所得割の税率による増税は高額所得者ほど増税額が大きくなる。そこで、52自治体における課税所得100万円、200万円、400万円の場合の住民税を算出して一覧化。さらに、それらの課税所得ごとに、住民税が高い順に自治体を並べたランキングを作ってみた。

52自治体における住民税の一覧(課税所得100万円、200万円、400万円の場合)

 まず課税所得100万円の場合のランキングは、1位が兵庫県豊岡市、2位が神奈川県横浜市、3位タイで宮城県と兵庫県神戸市と続く。豊岡市は年間10万6800円で、これは東京都(41位タイ)の10万5000円よりも1800円高い。横浜市は同じく1450円高い10万6450円、宮城県と兵庫県神戸市は1200円高い10万6200円。

課税所得(課税標準額)100万円の人の年間の住民税額を高い順に並べた自治体のランキング

 次に課税所得200万円の場合のランキング。こちらも1位が豊岡市(20万7800円)、2位が横浜市(20万6700円)、3位タイで宮城県と神戸市(20万6200円)という順位は変わらない。東京都(20万5000円)との差額は、それぞれ+2800円、+1700円、+1200円。注目されるのは、県民税の所得割の税率が増税されている神奈川県(20万5500円)のランキングが、課税所得100万円のときの18位タイから11位タイに上昇している点だ。

課税所得(課税標準額)200万円の人の年間の住民税額を高い順に並べた自治体のランキング

 最後は課税所得400万円の場合のランキング。1位の豊岡市(40万9800円)、2位の横浜市(40万7200円)は不動のワンツーだが、神奈川県(40万6300円)が3位に上昇した。東京都(40万5000円)との差額はそれぞれ+4800円、+2200円、+1300円。

課税所得(課税標準額)400万円の人の年間の住民税額を高い順に並べた自治体のランキング

 神奈川県民はどこまで順位が上がるのか心配されたかもしれない。2位の横浜市民と3位の横浜市以外の神奈川県民の差は、横浜市が増税している「横浜みどり税 900円」によるもので、この差は所得が増えてもずっと900円のまま。2位横浜市、3位神奈川県の順位が逆転することはない。

最後に

 自分の住む市区町村は住民税が高いと思っていた人は、ランキングの順位は思っていたとおりだろうか。高い方では兵庫県豊岡市、安い方では名古屋市と大阪府田尻町はそこそこの差額だと思われるが、それ以外は大きな差はないと思う。

 自治体による差は住民税だけではない。上下水道料金、国民健康保険(自営業の人)なども自治体によって金額差があるし、金額ではない様々な住民サービスも住みやすさに関係していると思う。

 余談だが、筆者のオフィスがある小田急線沿線は住民税の安い東京都と高い神奈川県が入り組んでいる。小田急線鶴川駅の北側は東京都町田市、南側は神奈川県横浜市、新百合ヶ丘の駅は川崎市だが700mほど北で東京都稲城市となる。町田駅南口は階段を挟んで上りエスカレーターは東京都に、下りエスカレーターは神奈川県相模原市になるなど駅周辺に県境がある。こうした自治体の境に住居を探すときは、住民税の差を意識して家探しをするのはアリかもしれない。ただし、住民税の差がこの先数十年同じとは限らない。

お願いなど

 今回、住民税の自治体ごとの差を掲載した。全国には1718の市町村があり、全ての市町村民税を調べるのは難しい。超過課税(増税)を実施している団体は資料が公開されているが、名古屋市や大阪府田尻町のように減税をしている団体の情報は少なく、この2つ以外にもあるかもしれないと思っている。読者の中に「自分の住む町は税金安いよ」などの情報をお持ちの人は、この記事に対するツイートなどで情報をお寄せいただきたい。

 筆者は長年、税金に関する記事を執筆している。住民税に関しては「差はあるが大きな差はない」と考え、各自治体の住民税の差は調べつつ記事にはしてこなかった。今回、この記事を書くきっかけは、「住民税 ランキング」などで検索して表示される記事を読むと、多くの記事が間違った内容を掲載していたためだ。代表的な間違いは「住民税が1番高いのは夕張市」。それ以外にも川崎市の市民税が横浜市と同じだったり、名古屋市の市民税の所得割が5.7%(政令指定都市なので7.7%が正解)など「あっ違う、これも違う、こっちもだ」と間違いが散見された。

 間違いの多くは、記事の執筆・掲載当初は正しかったが、現在は税制が変更されているにも関わらず内容はそのままでタイトルの年度だけ2020年版→2021年版→2022年版と更新している記事だ(過去にメモしたURLを開くと2022年版になっている)。同じライターとして、執筆者が可哀想とも感じた。最初から間違っていたと思われる記事もあるが、執筆時にライター氏は正しい記事を書いたのに編集部が年度だけ更新を続けるため「このライターの記事は間違っている」と思われてしまうのはいかがなものか。ということで「しっかり調べて正しいランキングを掲載しよう」と今回の記事掲載となった。前述のとおり住民税の安い自治体をご存じの人は情報をお寄せいただきたい。

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