書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。
書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
今週の金ローは『ラピュタ』でした。今回もドーラ一家の「顔色の悪いなまずヒゲ」の子分が、ちゃっかりシータのもとでイモの皮むきをやってるシーンが見られてよかったです!それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご招待しましょう!
書き出し自由部門
かき氷だったことがある色水が、長電話が終わるのを待っている
あの
描写しているのはかき氷だけなのに、実家の夏休みぜんぶが詰まっている。
川底では泥と水がゆるく抱き合って、雨音だけを聞いていた。
みよおぶ
錆びたアパートの階段を軽やかに雨粒が踏む。
みよおぶ
みよおぶ氏の雨の2作。どちらも心地いい。
出鱈目に咲きだした夏のケイトウと踊る。
寂寥
駆けつけた警察官から「質問責め」にされて、マゾヒストは射精した。
さくさく
「フレンチがいい。コース料理で。それが食べてみたい。」水田に放った合鴨を眺めながら彼女は言った。
カズタカ
つらいときは合鴨農法のことを考える。束の間ほっとできる。
徹夜明けの目に、発泡スチロールが眩しい。
タカタカコッタ
分かる(笑)収集前の最後の輝き。
シュノーケルマスクを着けて、夏の夜空を泳ぐ。
タカタカコッタ
あれ弊社じゃね?
井沢
ATM手数料を払いたくない、という思いだけが僕を突き動かしている。
めいと
全く関係ない位置だったけど、おばあちゃんのために席を空けた君を忘れない。
もろみじょうゆ
メロンパンを寝押しすると美味いと友人が言うのでやってみた。
g-udon
いい感じでカリカリになりそう。メロンナンとして売れば売れそう。
墓守のように、たんぽぽが咲いていた。
もんぜん
つづいては規定部門。今回のテーマは『青春小説』でした。当事者の若い人のより、中年の書く青春の方がキラキラしているのはなぜだろう?
書き出し規定部門・モチーフ『青春小説』
体育の授業中、夏雲ゴジラが校舎に迫っていた。
ぐるりん
「夏雲ゴジラ」ネーミングの勝利。
貸してくれた片っぽのイヤホンには君の体温が残っていた。
寂寥
カーテンが膨らんでる間に手をつなぐ。
人馬一体勘
次のバスが来るまでは、世界に二人っきりだ。
幽
もしくはフィギュアスケートの選手とコーチみたいな気持ちになる。
ヒヒヒと笑った彼女のことを、遠くで見つめることしかできない。
七寒六温
洗濯かごに青春が溜まっている。
一色凛夏
進路希望調査、「だるっ」なんて呟きながら君と同じ志望校を書いてみる。
ぐるりん
君の浴衣姿を初めて見た。僕は浴衣に着られ、ぎこちなく歩いた。
ぐるりん
C3ーPOっぽい動きで。
「嘘だろ?」って問う前に君が「嘘だよ」って返したから、それは本当のこと。
架空野
ただただ、ひたすら眠かった。
あの
サナギだったんだと思う。精神的に。
机に突っ伏して、エナメルバッグに舞う埃をただ眺めている。
ベランダ
「いきたくない」と言っていた彼女はプールに潜って息を止める。
いつききょうか
僕は呼ばれてもいない校舎裏の下見に行ってみた。
節度亜図夢
校舎裏にはかわいい後輩。体育館裏にはこわい不良。
「一個あげよっか?」と彼女は俺から取った「歩」の駒をあげた。
りずむ原きざむ
顔面セーフの青春さ。
たこフェリー
コイツ、私を終電に間に合うように送り届けやがった。
はらけん
受験勉強は何故こうも誘惑が多い年頃にやらねばならぬのか。
高田
骨折してる僕の右腕を笑って揺さぶりながら花火を見上げる。
井沢
weezerを聴きながら、すれ違う人すべてにあだ名をつける。
g-udon
「ごめん、待たせちゃったね」バイトの制服姿で現れた先輩は、僕よりずっと大人の女性に見えた。
はらけん
お願い、お祭りに来ていて。答え合わせをさせて。
いんどじん
ポニテ&浴衣でありますように……!
それでは次回のモチーフを発表します。
次回モチーフ
『ジブリ』
次回のお題はもはや日本人の心の拠り所といってジブリ。ジブリ作品をからませた二次創作ではない、オリジナルの書き出しを募集します。ジブリの作品名、キャラクター名を使うのはオッケーです。締め切りは8月26日、発表は8月28日です。下記の投稿フォームから応募下さい。力作待ってます!
最終選考通過者
ミミズグチュグチュ ヒライス まおん セレン 霧原めい S.虚無 ろっさん モンゴノグノム いそうろう いずも 南極行太郎 ぴすとる 来世は海獣でありたい サイレース モリダイ