床屋のオフィシャル髭ダンディズム

デイリーポータルZ

バーバークリエイティブが醸し出す髭ダンディズムの芳香に陶酔しよう。

Official髭男dismというめちゃめちゃ人気のバンドがある。ダンディズムなんて言葉を久しぶりに聞いた気がするが、それにしてもオフィシャルで髭でさらにダンディズムなものなど今の我が国に存在するのだろうか。いるじゃないか、床屋の窓や看板で流し目をキメている渋ジェントルマン達が!

大ヒット曲「Pretender」はYoutubeで4億回以上再生されている。なんともすさまじい。

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ちなみに私がYoutubeにあげた「せまい電光掲示板」は8年間で489回(9月15日時点)である。

wikipediaによると、公式サイトにある「髭の似合う歳になっても、誰もがワクワクするような音楽をこのメンバーでずっと続けていきたい」というのは実は後付けで、Official髭男dismというネーミングに大きな意味はないらしい。

意味はなくともすぐれたクリエイティブは人の心を動かし、その世界を拡張してゆく。私の中でオフィシャル髭ダンディズムは街中にいるあの人達と共鳴していた。理容店でむせかえるようなダンディズムの芳香を放っているジェントルマン達である。

オフィシャルな髭ダンディズム。
頼りになるベースっぽいポジションにいたり。

 床屋の顔としてガラス窓や看板で渋くたたずまうオフィシャルで髭でダンディズムな彼らを「オフィシャル」「髭」「ダンディズム」それぞれの視点で鑑賞していこう。この記事自体ぜんぜんオフィシャルじゃないのだが。

オフィシャル髭ダンディズム

すべてかっこいい。艦長は彼しかいない。

星野之宣の漫画に出てきそうな目力あふれるジェントルマン。力強い鼻筋の下にきっちり整えられた髭には、髭ダンディズムでやっていくんだという強い意思がみなぎっている。さりげないパーマのカラーリングのセンス、上下のコピーの書体まで、すべての要素が完璧にかっこいい。

今回の記事のために開発されたオフィシャル髭ダンディズムレーダーチャート。いきなりフルマークである。激渋ダンディだ。

 

頼りがいのある割れアゴ。酒場で悩みを聞いてほしい。

理容店でありながら頭髪部分を大胆にカットしたトリミング。しかし、だからこそ目元に刻まれた深いシワと憂いを伴った眼差しがいっそうのインパクトを持ってこちらを骨抜きにするのだ。この人はきっと禿げていてもかっこいいし、リーゼントでもパーマでも中分けでもかっこいい。

これも文句なしのフルマーク。一本一本細かく描かれた髭の髭感もすばらしい。

 

兄貴!

グリースがつややかなリーゼントスタイルを決めつつ、俺も昔はヤンチャしたもんだと若手を涼しげに見つめる視線に大人の余裕を感じる。

ダンディズム視点だともう少し枯れ味がほしい気もするが総合的にはかなりのハイスコア。

 

杉サマにも劣らない流し目。

 「個性の主張」、サインポールにいる事からして立派な個性の主張に他ならない。口元から下顎にワイルドに蓄えられた髭、左半身を覆う漆黒のシルエットは彼の歩んできた人生の壮絶さを物語っている。復讐に燃える早撃ちガンマンかなにかに違いない。

こちらもすばらしい髭ダンディズム。

 

少し眠たげな表情がいい。

古代ローマやギリシャの彫刻を思わせるほりの深い横顔にいいパンチが決まっている。髭のボリュームも豪快だ。
このダンディは静岡県で目撃したものだが山梨県でも同じダンディを目にした。日本の誇る霊峰富士のもとでエキゾチックなおっさんは神話になるのだ。

英字書体も共通、もっともこの書体は多くの床屋で使われている。
同じものを2つ以上見た時はオフィシャルを少し下げている。単にこの値に変化がほしいだけだ(言っちゃった)

 

感情を抑制したクールな横顔。

 こちらも真横アングルである。上品に撫でつけられたヘアスタイルは音楽室の壁に貼ってあったドビュッシーを思い出す。この下町の印象派は埼玉ではガラスにシート貼りされていた。

色も書体も渋かっこいい。
オフィシャル髭ダンディズムでドビュッシー、音楽寄りのダンディーだ。

 

動く!

今までのダンディは(おそらく)カットモデル的なイメージだったが理容師も存在する。筋骨隆々とした体躯にふさわしい迫力のアフロヘアーをまとうが眼差しはやさしい。

はさみを持った右腕が振り子のように動く仕組みの看板は他にも見た事があるが、別人だった気がするのでカスタムオーダーが可能なのだろう(写真が見つからなかった)。日が暮れた人気の無い通りでおぼろげに光り、誰へとなく腕をふり続けていた姿に少しギョッとしたのを覚えている。

パーマという指標があれば満点だったが少し伸び悩んだ。しかしこれもオフィシャル髭ダンディズムなのだ。
 

 

かわいいダンディ!かわダン!

断然キャラっぽくてかわいいが鼻眼鏡の下に整えられた口髭、クラシカルな衣装とほのかな渋みでたしかな経験を感じさせる。安心して頭部を預けたい。前の写真の理容師と同じくスチールトゥっぽい、つま先にボリュームのある靴を履いている。かつての流行か何かだろうか。

かわいくても髭は立派。

 

驚愕の髪→髭マトリョーシカ。

立派なカイゼル髭が髪となり、髪が髭となり連なってゆく連ダンディ。こんな斬新なバーバークリエイティブがあっただろうか。
きっと彼らは自由に集合・分離・増減し、いつか世界中のバーバーに分布してゆくに違いない。
やたら目がたくさんあって不気味な生態なのにかわいい。
大阪・関西万博のミャクミャクより10年以上前のキャラである。
 

チャートにおさまらない髭スコアを叩き出した。もはや髭に顔がついているようにすら見えるので致し方なし。

 

さっぱり!

ビフォアがかなりやばい。いったいどこの埠頭に幽閉されていたのだろうか。監視の隙をついて命からがら脱出し、床屋に駆け込む。もはや髪と一体化した髭をすっぱり落とし、以前とは異なるヘアースタイルを決め、葉巻をくゆらせながら肩を切って町を歩く。新しい人生の始まりである。この満たされた表情を見てほしい、極限の辛さを経験したからこそ、きっと彼は人にやさしくなれる。

10年以上前に見つけた時は携帯のカメラしか持っていなかったのでちゃんと記録しようと再訪したらきれいに塗装されてさらにきまっていた。
別カラーバージョンも発見。見かけるたびに「きまってよかった」と思う。
やはり髭がはみだしてきた。ボーボーだったからね。
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オフィシャルダンディズム

主旨がよくわからなくなりそうだが髭がない人もかなりいる。この際だから発表していこう。

しぶい!

この貫禄、地球を2回ぐらい滅亡させる究極兵器の発射命令の権限とかを持っていそうな雰囲気をまとっている、ジェネラル(将軍)と呼ばせていただきたい。

これは後ろに立てない。

力強いもみあげとゴルゴ眉、狙った獲物は決して逃がさない凄みを感じる。口を間一文字に結んだ寡黙なこの男によって依頼人の秘密は守られ、ミッションは静かに遂行されるのだ。

なんというか、透明感と威圧感を兼ね備えている感じがする。

カチッとしたパーマ、鋭角に整えた眉で決めつつも瞳の描かれていない目には生きていくうえで人が常に心に抱えている葛藤や哀しみが表現されているようだ。

スポーツジェントルマン。サーモグラフィーのような鮮やかなウェアは冷静と情熱を表現している(違う)

ゴルフといえば紳士のスポーツ、ダンディズムとも親和性が高い。するどく振り抜かれたショットで飛んでゆくボールのような球体が左手に見えるが発毛に関する組織のステッカーだった。

検索してもよくわからなかった。
髭はなくともみんなダンディなので同スコア。

 神出鬼没な2人

テクノポップな2人組。鹿児島にて。

ダンディというよりは少し若手のイメージがあるが80’s味のあるスタイリッシュなメンズペア。何よりもすごいのは展開力で、10年以上観察してきた中で一番数多く出現しているのが彼らである。北は北海道から南は奄美大島まで、この増殖力というかメディアパワーもなんかテクノポップ的ではないだろうか。

秋田の2人。
愛媛の2人。
北海道の2人。
鳥取には似て非なる顔つきの2人がいた。美容院バージョン?とも思ったがメンズヘアやらパンチパーマとか言ってるしなあ。

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このすごさはチャートには表せないのだが。

ダンディズム

オフィシャル髭ダンディズムから尻すぼみにどんどん要素が削ぎ落とされているが最後に紹介したいのがこれだ。

ジミー!

ジェームズ・ディーンがモデルなのではないかと思われる。私が地元で「理由なき散髪」と呼んでいた看板である。時は移ろい、この看板はすでに存在しない。

オフィシャルの値が動かせるとなんかうれしい。

Official髭男dismという切り口で床屋のダンディ達を見てきたが
そんなダンディを「Menshair」と各種「パーマ」で挟み込む文脈があったり、それらの書体にもトレンド的なものが垣間見えたり、並べて見ると小さな発見があっておもしろい。

「とても綺麗だ」​​​

 

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