「ディズニーワールドに蚊は1匹もいない」は本当なのか?

GIGAZINE
2022年08月02日 23時00分
メモ


by cromulent

東京ディズニーランドをはじめとするディズニーリゾートは世界中に存在しますが、その中でも最大の規模を誇るのがアメリカのフロリダ州にあるウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート(ディズニーワールド)です。そんなディズニーワールドには「蚊が1匹もいない」という都市伝説がインターネットでまことしやかに語られていることについて、イギリスの旅行会社であるmousetrackが解説しています。

Mosquitoes at Disney World: why do you (almost) never see them?
https://mousetrack.co.uk/blog/mosquitoes-at-disney-why-do-you-almost-never-see-them/

「ディズニーワールドに蚊が1匹もいない」という都市伝説は簡単にまとめると「ウォルト・ディズニーが害虫駆除の専門家と共に蚊の対策を行い、園内から蚊を根絶したので、ディズニーワールドには1匹たりとも蚊が生息していない」というもので、さまざまな記事や動画で説明されています。


しかし、mousetrackは「この都市伝説は迷信なのです。フロリダで蚊を完全に駆除することは事実上不可能です。湿地帯の多いフロリダは蚊が繁殖するのに最も適した環境です」と述べています。一方で、ディズニーワールド自体が園内で蚊を増やさないように努めていることは否定していません。

1964年のニューヨーク万博でウォルト・ディズニーは、退役軍人でパナマ運河地帯の元総督だったウィリアム・ポッター元少将と出会いました。パナマ運河は黄熱病やマラリアを媒介する蚊が多く生息する地域であり、現地では蚊の徹底的に撲滅する運動が行われていました。

パナマ運河建設時に現地の医師は蚊との死闘の中で「水たまりの除去」「排水できない水域の油処理」を徹底することで蚊のまん延を防ぐことができることを発見しました。ポッターがパナマ運河の総督になった時には蚊の対策は建設時からさらに改良されており、ポッターは蚊を駆除する専門知識を豊富に持っていました。

当時、ウォルトはディズニーワールドの建設予定地としてフロリダの中心地に広大な土地を購入していました。しかし、購入した土地はどれも高温多湿の沼地で、ワニや蚊がたくさん生息していました。ウォルトは蚊を駆除する必要を認識していたため、ポッターのエピソードを聞いたウォルトはディズニーワールドの建設プロジェクトにポッターを参加させました。


ポッターは、「蚊の成虫を殺すのではなく、ディズニーランドを『蚊が卵を産めないような場所』にすれば、蚊の数を大幅に減らすことができる」と考えました。蚊が卵を産むのは淡水なので、沼地は蚊にとって絶好の繁殖地です。ポッターはまずこの沼の水をすべて抜くため、園内の水をすべて外へ排出する大規模な排水路網を作りました。

また、大きな噴水や「スプラッシュ・マウンテン」のような水が必要な場所では、常に水が流れるように工夫しました。さらに大量の水を必要とするアトラクションでは、地下の連結管で水路を結んでろ過を行い、蚊の幼虫を食べてしまうモスキートフィッシュというメダカの仲間を飼育することで、蚊が卵を植え付けても繁殖しないような工夫が施されました。

また、園内の建築物は水がたまらないような形状になっているほか、園内に植栽する植物は葉に水がたまらないような種類が選ばれ、雨水は植物を伝ってすべて排水溝に流れ落ちるように設計されました。もちろん設計だけではなく、殺虫剤の散布も行われました。殺虫剤に使われるのはにんにくエキスや石けん、ペパーミント、ローズマリーなど、天然由来のもの。さらに二酸化炭素のトラップを設置して蚊を捕まえて調査を行ったり、放し飼いにしたニワトリを使って蚊を駆除したり蚊がウイルスをばらまいたりしていないかを定期的にチェックしたそうです。また、成長調整剤を散布して幼虫のうちに駆除する試みも1日に2回行っているとのこと。

しかし、これだけの対策をしていても、ディズニーランドで蚊に刺されることはやはりある、とmousetrack。2016年にジカウイルスが流行した際は、ディズニーはゲストに虫除けスプレーを無料で配布し、園内の至るところで蚊に注意するよう呼びかけています。


mousetrackは「ポッターの対策によって、ディズニーワールドで蚊を見かけることがほとんどなくなったというのはいい知らせです。ほとんどの人はディズニーワールドで蚊にさされることがまったくないのです。ただし、もし完全に蚊から身を守りたいのであれば、虫除けスプレーを使うと蚊に襲われる危険性が下がります」と述べています。

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