Appleの広告ビジネスはプライバシー保護を掲げたユーザー追跡の制限を追い風に急成長している

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Appleが2021年、広告目的のユーザー追跡を制限する「App Tracking Transparency(ATT)」をiOSアプリに導入しました。これによってGoogleやMetaなどの広告企業が大きな打撃を受けている一方で、Appleの広告ビジネスはATTを追い風に急成長を遂げているとセキュリティ企業のAdGuardが報じています。

Appsumer Report: Apple Privacy Measures Provides a Boost for Apple Search Ads and Favors Large Advertisers | Business Wire
https://www.businesswire.com/news/home/20220906005427/en/Appsumer-Report-Apple-Privacy-Measures-Provides-a-Boost-for-Apple-Search-Ads-and-Favors-Large-Advertisers

Apple’s ad business set to boom on the back of its own anti-tracking crackdown
https://adguard.com/en/blog/apple-tracking-ads-business.html

Appleは以前から「ユーザープライバシーの保護」を重視する方針をアピールしており、ATT導入の際もユーザーの興味関心に基づくターゲティング広告が打ちにくくなることで、GoogleやFacebookなどの広告企業や広告を出したい中小企業へのダメージが懸念されていました。

実際、ATT導入によってGoogle傘下のYouTubeは22億ドル(約3200億円)、Snapchatは5億4600万ドル(約790億円)、Twitterは3億2300万ドル(約470億円)の広告収益を失ったと報じられています。また、Metaに至っては2022年だけで128億ドル(約1兆8500億円)もの損失を被ると予測されているほか、ターゲティング広告の効果低下により中小企業は大打撃を受けています。

アプリのトラッキングを制限するAppleのプライバシー強化で中小企業が大打撃を受けている – GIGAZINE


しかし、時間がたつにつれて広告企業や中小企業にダメージが及ぶことだけでなく、「ATT導入がAppleの広告ビジネス成長に役立っている」ことが指摘されるようになりました。ATTではサードパーティーとのユーザーデータ共有を制限していますが、Appleが自社のエコシステム内でデータを共有し、自社製アプリ内でターゲティング広告を打つことは制限されません。そのため、ATT導入は競合他社であるGoogleやMetaの収益を低下させつつ、Appleの広告ビジネスを成長させることができるとのこと。

モバイルアプリ広告のパフォーマンス分析企業であるAppsumerは、2021年第2四半期から2022年第2四半期にかけて、広告主による各広告サービスの採用率を分析しました。その結果、App Store内の検索広告であるApple Search Adsの採用率は2022年第2四半期に前年比4パーセントポイント増の94.8%に達し、前年比1.7パーセントポイント減だったGoogleの94.8%に並びました。一方、Metaは前年比3パーセントポイント減の82.8%にとどまっています。

また、特定の市場カテゴリーにおいて顧客が製品やサービスに支出した割合を示すshare-of-wallet(財布内シェア/SOW)の分析では、Appleは前年比5パーセントポイント増の15%に達しており、Metaは前年比4パーセントポイント減の28%、Googleは前年の35%とほぼ変わらず34%を維持しました。

広告業界における売上高は依然としてGoogleやMetaが優勢ですが、AppleはApp Storeでの広告表示を拡大することを計画しているほか、地図・書籍・ポッドキャストなどのアプリにも広告を導入すると報じられるなど、広告ビジネスの拡大を図っています。経済メディアのFinancial Timesによると、Appleは250人いる広告チームに新しく216人の従業員を追加する予定であり、リアルタイムの広告売買を可能にするデマンドサイドプラットフォーム(DSP)を自社で構築することも計画しているそうです。

iPhoneのアプリストアで広告の表示場所が拡大される – GIGAZINE


一方でAdGuardは、GoogleやMetaがATT導入後の広告業界に適応しようと試みていることも指摘しています。実際にFacebookは2022年初頭にSOWのシェアが増加しており、ATT導入当初の逆風から立ち直りつつあるとのこと。また、FacebookやInstagramのアプリ内ブラウザを利用することで、ATTをかいくぐってユーザーを追跡しようとしていることも報じられています。

「FacebookやInstagramアプリはリンクをタップしたユーザーを詳細に追跡している」ことが元Googleエンジニアの調査により明らかに – GIGAZINE


Googleも新しい追跡技術の「トピック」をChromeに導入しているほか、広告ブロッカーやトラッキングを防ぐ拡張機能の動作を制限する拡張機能の新仕様「Manifest V3」を発表しています。

Googleが新しい追跡技術「トピック」をChromeに導入 – GIGAZINE


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