シュートで吹っ飛ばされる人を何人見たことか。私(中澤)にとって、サッカー漫画とはそういうものである。なにせ、物心ついた頃には翼くんが空を飛ぶのは普通だったのだ。
しかしながら、現在、アニメが放送されている『アオアシ』はなんか違う。クラブユースがメインで主人公が前めのポジションなのは同じなのに、もの凄く新しくて面白いのだ。でも、サッカーをあんまり知らないから何が新しく感じるのかが分からない。そこでサッカー経験者に聞いてみたら、めちゃくちゃ腑に落ちる答えが返ってきた。
・リアルな理由
話を聞いたのは同年代で高校までサッカー部だった友人Mさん。サッカーを愛し、現在のサッカーシーンに精通しているMさんもアニメで『アオアシ』を見ているらしく、会った際に「あれは面白い」という話になったのである。そこでキャプテン翼との違いを聞いてみたところ……
Mさん「いや、違いというか共通点を探す方が難しいでしょ。『キャプテン翼』はほとんどバトルファンタジーだけど、『アオアシ』はリアルにサッカーしてるから」
──そうなんでしょうけど、そのリアルさってどこから来るんでしょうね。
Mさん「それもいっぱいあると思うけど、そうだなあ……まず、『アオアシ』には必殺シュートがない(笑)」
──まあ、それは私でも分かる大きな違いですね。足から龍が出たりしないのはリアルですよね。
Mさん「シンプルにそういう表現の話もあるけど、個人的には、必殺シュートのありなしって、着眼点の違いも大きいように感じてて。サッカーのどの部分にクローズアップしてるかってことなんだけど」
──と言うと?
・目線の違い
Mさん「例えば、ワールドカップとか見てても、観客目線で一番盛り上がるのはゴールした瞬間だよね? 『キャプテン翼』はその瞬間にクローズアップしてるから、延長線上に必殺シュートっていうギミックが浮かび上がるんだと思う。
一方で、サッカーの大半はシュート以外でできてるわけで、選手目線で言うと、ボールをいかにゴール前まで運ぶかっていうことをやってる時間の方が重要だったりする。ボールを持ってない時の動きも含めてね。
『アオアシ』はここにクローズアップしてるから、コントロール・オリエンタードとかが必殺技みたいな感じで登場するんだと思う。誤解を恐れず言うなら、結果にクローズアップしてるのがキャプテン翼で、プロセスにクローズアップしてるのがアオアシと言えるかもね」
──Mさんも高校の時、『アオアシ』くらい考えながらサッカーしてたんですか?
Mさん「いや、俺の時代は、まだあそこまでロジカルな思考じゃなかったと思う。だから、大した選手になれなかったのかもしれないけど、ここまで言語化できるようになったっていうのは、それだけ日本のサッカーの成長を表しているとも言えるんじゃないかな」
──とのこと。観客目線と選手目線……ひょっとしたら、『アオアシ』に感じるリアルさはこの目線の違いから来るのかもしれない。少なくとも、ド素人の私にとっては妙に腑に落ちる言葉であった。
サッカー経験者も納得の作品『アオアシ』。アニメは現在、16話と2クール目の折り返し地点を過ぎた辺りだが、ド素人が見ても次回が待ちきれないほど面白くなっている。Amazonプライムビデオや Netflixなどで配信もされているため熱い気持ちになりたい方はぜひ。
参考リンク:アオアシ
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
画像:©小林有吾・小学館/「アオアシ」製作委員会