画像で振り返る、遠ざかっていく探査機「ニュー・ホライズンズ」の功績

GIZMODO

2006年から続く長い旅。

NASAの探査機「ニュー・ホライズンズ」は16年前に打ち上げられて以来、美しい光景をたくさん目にしてきました。木星に最接近し、衛星「イオ」の火山を撮影し、そして猛スピードで通過しながら初めて冥王星を探査したのです。

同探査機は今では地球から52天文単位(約78億km)以上も離れ、正常に稼働しながら時速3万3000マイル(約5万3000km)に達する速度でカイパーベルトの奥深くへと前進しています。

この探査機最大の功績と言えば、2015年7月14日の冥王星フライバイでしょう。科学者たちはこのミッションの太陽系を進む旅路を最大限に活用して、太陽系にある天体の写真を何千枚も撮影しました。そんな中から米Gizmodoがセレクトした画像を見てみましょう。

木星と、活発な火山を持つ衛星「イオ」

Image: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute

ニュー・ホライズンズは太陽系外縁部へと進むべく、木星フライバイを行いました。それが重力アシストへとつながり、さらには冥王星のための予行演習という役割も果たした模様。科学者たちは期待していたよりも多くの科学的なデータを得たようです。木星と火山が活発な衛星「イオ」を捉えたこの合成画像は、探査機が取得した膨大な数の画像の中でも特に印象的な一枚。木星の赤外線カラー合成画像は2007年2月28日、イオのトゥルーカラー画像は同年3月1日に撮影されました。

巨大ガス惑星の不穏な大気

Image: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute

コチラの木星大気の画像は、探査機に搭載されている赤外線カメラLEISAを使って捉えたものです。画像が撮影された2007年2月27日、ニュー・ホライズンズは木星から160万マイル(約257万km)地点にいました。NASAいわく、これらの画像は「一回のLEISAスキャンに含まれる情報のほんの一部しか示しておらず、大気圏研究のための赤外線スペクトルの力の一側面だけを強調している」とのこと。

イオの噴火

Image: NASA/JHU-APL/SwRI

ニュー・ホライズンズは2007年2月28日、イオから発する火山噴煙を捉えることに成功しました。トゥワシュトラ火口からの噴煙は高さ200マイル(約330km)に達したとか。

目標天体が見えてきた

ニュー・ホライズンズの6900万マイル(約1億1100km)先にいた、冥王星とカロン
Image: NASA/JHU-APL/SwRI

ニュー・ホライズンズが冥王星を接近通過する90日前、2015年4月15日に撮影された冥王星と衛星「カロン」です。当時、NASA科学副局長John Grunsfeld氏はプレスリリースに、「冥王星系に接近するにつれて極付近の明るい地帯といった興味深い特徴が見え始め、この謎めいた天体を理解するための科学的な冒険が始まる」というコメントを寄せていました。

奇跡の一枚

Image: NASA/JHUAPL/SwRI

2015年7月14日に撮影された冥王星の高解像度カラー補正画像は、ニュー・ホライズンズが撮った中でも1、2を争うすばらしいショットです。NASAは当時、「冥王星の表面が纏う驚くほど多岐にわたる淡い色が、この画像では薄い青、黄色、オレンジそして深い赤の色彩で強調されている」と書き、さまざまな「地形が独自の色を持ち、科学者たちが解読し始めたばかりの複雑な地質学的かつ気候学的な物語を教えてくれる」と続けていました。あまりに短いフライバイで、ニュー・ホライズンズは冥王星から7800マイル(約1万2500km)まで最接近したのでした。

衛星「カロン」

ニュー・ホライズンズはマルチスペクトル撮像装置(MVIC)を使って、冥王星の衛星「カロン」の見事な姿を撮影。カロンの直径はたった753マイル(約1212km)ほどで、この画像は実物に近い色合いに調整されています。撮影時、探査機はカロンから4万6091マイル(約7万4176km)離れていました。

冥王星の暗い領域

Image: NASA/Johns Hopkins APL/Southwest Research Institute/NOIRLab

ニュー・ホライズンズは時速5万2000マイル(約8万4000km)に達する速度で勢いよく通過したので、冥王星への最接近はほんの一瞬の出来事でした。冥王星の暗い領域(ダークサイド)の鮮明な画像は撮影できなかったものの、ニュー・ホライズンズが振り返りながら撮影した360枚を使って科学者たちが生成したのが上の画像です。

クワオアーをパシャリ

Gif: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute

2016年7月、ニュー・ホライズンズは遥か遠方にある直径690マイル(1110km)のカイパーベルト天体、クワオアーを観測しました。

アロコスをご覧あれ

Image: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute

冥王星を接近観測した後、科学者たちはニュー・ホライズンズが探査すべきもう1つの天体、その名もアロコスを発見します。この太陽系外縁天体はなんと雪だるまのような形状をしていたのです。

ニュー・ホライズンズが2019年1月1日に最接近したアロコスは、探査機が訪れた天体としては太陽系内で最も遠い距離にあるものとなりました。2019年にNASAが出したプレスリリースでサウスウエスト・リサーチ・インスティテュートの研究者Marc Buie氏は、アロコスからのデータは「惑星形成と私たちの宇宙起源についての手がかりを与えてくれた」とコメント。「この太古の天体は、1つの存在へと合体した2つの異なる球体で構成されていて、地球の生命の起源への理解に寄与する答えを持っているかもしれないと考えている」と続けていました。

やあ、ボイジャー!

Image: NASA/Johns Hopkins APL/Southwest Research Institute

2020年12月25日、ニュー・ホライズンズの望遠撮像装置(LORRI)はNASAの探査機「ボイジャー1号」のいる方向(黄色い丸の部分)を指しました。最も遠い距離に達した人工物で太陽系を脱した初の探査機であるボイジャー1号の姿は見て取れないにもかかわらず、すごい写真です。撮影時、2つの探査機は大体112億マイル(約180億km)離れていて、ボイジャー1号は太陽から141億マイル(約227億km)の位置にいたとか。ニュー・ホライズンズは2040年代に太陽圏を離れる見込みです。

同じ星を異なる場所から見る

プロキシマ・ケンタウリをニュー・ホライズンズが撮影した画像(左)と、地上から撮影した画像(右)
Image: NASA

ニュー・ホライズンズが遥か遠くへと離れてしまった今、同じ星空を探査機から観測した場合と地球から観測した場合とでは見え方がほんの少し異なります。これを2020年に実証したのが、探査機及び地上から見たプロキシマ・ケンタウリとウォルフ359を比較した画像。NASAがこの星間視差実験を実施した際、ニュー・ホライズンズは地球から43億万マイル(69億km)離れていました。

Source: NBC News, NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute (1, 2, 3, 4, 5,), The Planetary Data System, NASA(1, 2, 3, 4),