「ボンハンバーガー」は大阪市内に現在2店舗を構えるローカルハンバーガーチェーンである。47年前に創業し、時には大手チェーンとの競争にさらされつつも営業を続けてきた。
一度食べてみたいと思っていながらなかなか足を運べずにいたのだが、ようやく食べることができた。どこか家庭的な感じのする、親しみあふれる美味しさだった。
この記事を書いている2022年6月現在、「ボンハンバーガー」は大阪市内に2店舗ある。
大阪市東住吉区にある「ボンハンバーガー 東住吉店」と、大阪市平野区にある「ボンハンバーガー 喜連瓜破店」である。今回私が訪れたのは「ボンハンバーガー 東住吉店」の方だ。
カウンターで「えーと」とメニューを眺めていると、店主が声をかけてくれた。「うちとこ初めてやったら、ソースが2種類あるからな、どっちも食べるのがおすすめ」とのこと。
店主のおすすめに従うことにして、店の名を冠した「ボンバーガー」と「エビバーガー」の2つを、そして、これも名物だというオレンジジュースとフライドポテトも注文することにした。食べ過ぎかな。
できあがりを待っていると、一人で店を切り盛りしている店主に「誰かに聞いて来たん?」と聞かれた。この店のことを教えてくれた友人のことなど話しているうちにオレンジジュースがでてきた。
つぶつぶした氷の感触も心地いい、なんとも美味しいジュースである。続いて「ボンバーガー」と「エビバーガー」がほぼ同時に到着。
まずはボンバーガーにかぶりつく。細かく刻まれた玉ねぎのシャキシャキした食感があって、その後に甘みのあるソースの味わいと肉の旨みを感じる。「美味しい?どんな味や」と店主が聞く。夕方頃に入店してからか、客は私一人だった。
――えーと、家庭的な味……
「ははは。家庭的か!ああそう。どんな味て聞かれても難しいわな」
――いや、でもとにかく美味しいです。エビバーガーも食べてみよう
「せっかく来たんやから、一個ではもったいないからな」
――ああ、ソースが確かに違いますね。
「ソースの違いわかった?」
――わかります。いや、どうだろう、どっちも美味しい。
「ははは。どう違う?」
――えー!ええと、ボンバーガーの方は甘みがあるソースで、エビバーガーの方はもうちょっとケチャップっぽい……?
「わからんかな」
――いや、でも美味しいですよ!
「手作りソースやで」
――これはたしかに2個食べてちょうどいいかもしれないですね
「そうそう。2個食べるとお腹ふくれるわ。3つ食べよる人も多いけどな。みんなな、そのソースにポテトつけて食べんねん」
――ああー、それは絶対いい。やってみよう。うん、美味しいです。
「気に入った?」
――気に入りました。ここは何年になるんですか?
「47年。47年目に入った。なんとか生き残っとるわ」
――ここが本店ですか?
「どっちが本店でもない。こっちは東住吉店。ここは30年ぐらいで、喜連瓜破店が47年や」
――47年ですか。
「ここら辺でもな、ロッテリアできたり、ウェンディーズできたり、マクドできたり、モスができて。ボンは戦って残ったんや。今は店舗をもっと増やさなあかんなと思ってるんやけどな。人がおれへん。やらへん?」
――いや、ははは!私には難しい気がします。あの壁のメニューがすごくいいですね。
「ええやろ?新しく刷ったんや。ネガが残ってるからな。昭和時代やろ」
――メニューは昔から変わってるんですか?
「47年ずっと変わらんな。ちょっと減った方やな。よう生き残ってるで」
――そうなんですね。最近だとチェーン店以外に高級路線のハンバーガー屋さんも増えていますよね。
「あっちはハンバーガー屋さんで、ここはハンバーガーショップやからな。そこは違うな」
――なるほど、ボンハンバーガーはあくまでチェーン店なわけですもんね。値段も手ごろだし。企業努力というか……
「いや努力ちゃうねん。ハンバーガーショップとしてはこれが普通やねん」
「今は学生も金がないねん。ハンバーガーが高級品になってんねんな。学生は安くてお腹がふくれるもんに行くやろ。何百円かでカレーなんか食べられるやん」
――たしかにそうか、ハンバーガーの値段も上がってますよね。
「店舗増やしていきたいんやけどな」
――店長お元気そうですね。
「今までずっと寝とったようなもんやねん。寝ながら商売してたようなもんや」
――そうなんですか?でも今は目覚めたというか、やる気なんですね。
「やらなしゃあないからな!さあ、もう店閉めるでー!」
――はい!ごちそうさまでした。
「また来てや」
コロナ以降は時短営業をしていて従来より早めに店を閉めているらしい。色々なお話を聞かせてくれた店主にもう一度お礼を言って店を出る。
「あっちの方が駅から近くて便利や」と店主が言っていた「ボンハンバーガー 喜連瓜破店」にも行ってみたいし、新しい店舗ができるのも楽しみだ。