【アニメ】あまり期待していなかったNetflix『スプリガン』が最高すぎた / 原作ファンが唸った3つのポイント

ロケットニュース24

「なぜ今?」と思った方がきっと大多数だろう。それだけ『スプリガン』の再アニメ化は予想外の事件だった。なんせ原作漫画が連載されたのは1989年から96年の間。その後、大友克洋氏が総監修を務めた劇場版が公開されたのが98年だ。もはや一昔前の作品と言っていい。

リアルタイムではないものの、中学生の頃から熱心に原作を愛してきた私(あひるねこ)でさえ、今回のアニメ化には懐疑的だった。ところが……。約30年の時を経てよみがえったNetflixシリーズ『スプリガン』は、私が想像していた以上に『スプリガン』そのものだったのである。

・名作漫画が再アニメ化

Netflixにて2022年6月18日より配信が始まった『スプリガン』。原作は90年代を代表するアクション漫画として名高いが、予告が公開された時点では正直あまり期待していなかった。『スプリガン』は好きだけど、今さらアニメにされてもなぁ……という戸惑いの方が強かったのだ。

むしろ下手なものを作って作品の評判を下げないでほしいくらいに思っていたので、特に配信を楽しみにしていたワケでもなく、「まあ1話くらいは」という軽い気持ちで観始めたのだが……。結論から言うと、最高すぎました『スプリガン』。ありがとうNetflix。

・ポイントその1:ほとばしる原作愛

私がこうも熱い手のひら返しを繰り出すに至ったのはいくつか理由があって、そのひとつが第1話「炎蛇」の冒頭である。原作通りならこの話は、山菱教授が日本に到着するシーンから始まるはずだが、いきなり “メギド・フレイム” というワードが飛び出し「ん?」となった。

実はこれ、『FIRST MISSION』という『スプリガン』の前日譚にあたるエピソードなのだ。2000年に雑誌に掲載された読み切り作品で、単行本には収録されていないため(その後、保存版1巻に収録)、中には存在自体を知らない人もいるはず。

その話を、もっとも注目が集まるだろう第1話の冒頭に持ってくるとは……このアニメ、やりおる! 他にも、劇場版でジャン・ジャックモンドの声を演じた子安武人さんを後から出てくる別のキャラクターに起用するなど、随所にファンをニヤリとさせる仕掛けが施されている。

中でも特に印象的だったのが、皆川亮二先生の漫画作品によく見られる「皆川フェード」と呼ばれる演出が、アニメの中でも完璧に再現されていたことだ。

これは人物の顔が透け、次の場面の背景に重なる描写のことで、この演出があるのと無いのとでは作品の再現度やガチ度がまるで変わってくる。当初はアニメ化に懐疑的だった私も、これには思わず「ふん、分かってるじゃないか」と皆川キャラっぽく呟いてしまったぞ。

・ポイントその2:懐かしさと新しさの絶妙なバランス

すでにアニメをご覧になった方は、劇中の時代設定が新しくなっていることに気付いたはず。スマホやタブレット、ドローンなど、原作には出てこなかった現代的な機器をキャラクターたちが当然のように使いこなす様は新鮮だ。銃器等にも明らかなこだわりが見て取れる。

ただ一方で、セリフ回しはほぼ連載当時のままなので違和感がすごい。特に主人公の御神苗優(おみなえゆう)なんて90年代丸出しである。今時こんな喋り方をしているのはコナン(というか工藤新一)くらいのものだろう。圧巻の語尾「だぜ」率に赤面不可避。

とはいえ、完全に現代にアップデートしてしまったら、それはもう『スプリガン』ではない何かでしかない。変える部分と残す部分の取捨選択というか、そのあたりの舵取りが実に見事だった。原作ファンも納得の良改変と言えるのではなかろうか。

・ポイントその3:アクションがマジで『スプリガン』

私が予告を見た段階でもっとも危惧していたのが独特のCG臭さだ。ほら、最近多いじゃないですかCGアニメって。もちろん上手くいくケースもあるんだろうけど、個人的にはどうも動きが不自然に見えてしまい、途中で萎えてしまうことが多々ある。

『スプリガン』も、予告を見た時点ではCG感がけっこう強くて心配していたのだが……結論を言うと、ほとんど違和感なし。むしろ2D作画と3DCGの融合具合が自然すぎて舌を巻きまくった。詳しいことは分からんが、作った人たちすげぇ。テクノロジーすげぇ。

特にアクションシーンは出色のできばえで、第2話『ノアの方舟』の機械化小隊との戦闘描写なんて本当に痺れた。『スプリガン』にはジャンっていうめっちゃ速いフランス人がいるんですけど、アイツの速さを描こうとすると、どうしても瞬間移動みたいになっちゃんですよ。

それが今回は、めちゃめちゃ高速で動く動く。「あ゙あ゙あ゙あ゙、こういうが見たかったあ゙あ゙あ゙」ってくらい倍々速で動く。たまらん。もちろん劇場版の超絶作画の前では見劣りしてしまうものの、個人的には今回のアクションの方がより『スプリガン』らしいような気がしたな。

劇場版の戦闘シーンはもはや伝説だが、90年代のハイクオリティ・アニメ特有の重苦しさが全編を通じて漂っている。そういった雰囲気は嫌いではないけど、やっぱり『スプリガン』の魅力って、殺伐さの中でふと顔を出す、ある種の軽妙さだと思うのよね。

そういう意味でも、今作のシリアスだけどシリアスすぎないカッコいいアクション描写は、すごく『スプリガン』的だと感じた次第。

──以上、Netflixの『スプリガン』が原作ファンにも刺さりまくった、というお話を長々とさせていただいた。これまで好きな漫画のアニメ化は何度も経験してきたが、『スプリガン』ほど仕上がりに満足した作品はなかったような気がしている。作ってくれて本当に本当にありがとうございます。

で、これって……もちろん続きはあるんだよな? 現在6話で終わっているが、最後までやるんだよな? 本編には登場していないティア・フラットがオープニングに出てるもんな? 大丈夫だよな? な……? やるって言ってくれェェェェエエエエ!

・続編熱望

というワケで皆さん、Netflixに続編の制作を決定させるためにも、『スプリガン』を観て観て観まくってください。アーカムのA級エージェントになったつもりで、共に『スプリガン』の任務をサポートしようではありませんか。

参考リンク:スプリガン
執筆:あひるねこ
Photo: RocketNews24. / Ⓒ2021 たかしげ宙、皆川亮二・小学館 / スプリガン Project

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