ステーキの「食べ歩き」(デジタルリマスター)

デイリーポータルZ

おいしいお店を巡る事を「食べ歩き」と言うが、今回のレポートはグルメが集うステーキ屋を紹介する企画ではない。ステーキを食べながら歩く、という「食べ歩き」に挑戦するのだ。

2006年6月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

立ち売り用の台を作る

まずは、駅弁の立ち売りの人が首からかけている台を用意する。あの台の上に料理を並べて食べながら歩く、という作戦だ。

料理を乗せる台がクルンってひっくり返らない様に色々試し、分かったポイントが以下である。

・台は高さがあった方がいい。
・台というよりも箱の方が安定する。
・なるべく軽くて丈夫な箱を選ぶ。
・ひもは箱の下部よりも上部で結べ。

これらを考慮して、最終的に写真の様な立ち売り台に落ち着いた。

食べ歩き用のテーブル(首掛けタイプ)

食べ歩き用にうってつけだった「つくば物流センター」のケースは、夕方までに返すという条件で近所の薬局から借りて来た。きっと夕方になると「つくば物流センター」の人がケースを回収しにくるのだろう。それまでには「食べ歩き」を終えなくてはならない。

「つくば物流センター」ケース上部の穴に紐を通して輪を作り、そこに3Wayバックの肩ひもをくくりつけた。肩ひもにはクッションがついているので、首にかけても痛くない。テーブルクロスをかぶせて荷物っぽい雰囲気は払拭する。

以上で移動するダイニングテーブルの準備は整った。
あとは「食べ歩き」用の料理が必要だ。

本格的な料理を食べ歩きたい

最近仲良くなったお店のシェフに企画協力のお願いをした。

創作料理レストラン「プレジール」

引き受けてくれたのは、「プレジール」オーナーシェフの高畑さん。日本、フランス、イギリスで料理を学び、お寿司からフランス料理に至るまで、幅広いジャンルの料理をこなす。どの料理も凄くおいしいので、五反田にお越しの際は是非お立ち寄り下さい。

シェフの高畑さん

開店前の時間をお借りして、高畑さんに料理を作っていただいた。移動テーブルの大きさに限りがあるので料理は以下2皿のみとした。

焼き大アサリのブロヴァンス風
牛フィレステーキ、イチジクソースがけ。新鮮茄子を添えて

以上の2品に加え、ロールパンと赤ワインも用意してくれた。

食べ歩き料理南仏風。by 高畑シェフ

移動テーブルと料理を持って「プレジール」を後にした。「食べ歩き」を試しやすい場所に移動するのだ。

料理が冷めないうちに、急げ。

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隅田川沿いの遊歩道をステーキを食べながら歩く事にした。勝どき橋のふもとから海に向かう。

ようこそ、ビストロ「食べ歩き」へ

わざわざ高畑さんも同行してくれた。僕の横を歩き、ワインを注いでくれるという。

テーブルクロスの幅が足りず側面は「つくば物流センター」
僕の目線ではこう見える
ナフキンを首にかけ
まずはワインを

風が強いのが気にかかるが、早速食べ歩く。

ワインを飲みながら歩き出す

初っ端からアレですが、まずワインは飲みにくい。飲み口が広いからこぼれやすいのだ。いきなり足が止まってしまった。

これでは「食べ歩き」にならないので、ワイングラスを高畑さんに預け、料理に挑む事にした。

気を取り直して、肉を

ナイフとフォークで牛フィレ肉を食べやすい大きさに切る。
これは歩きながらでもちゃんと出来る。

肉、うまい。

じゃ、もう一口。

「これは、どこの牛ですか?」

「北海道の牛です」

普通にレストランでする様な会話を楽しみつつ、「食べ歩き」は楽しく順調に進行していた。

川の向こう岸は築地市場

歩きながら食べているので、これはダイエットにもいいんじゃないか?
などと考えていたその時、事件は起こってしまった。

一体何があったのか?
その全貌が明らかになる。

 

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あまりにも「食べ歩き」が楽しかったので、途中でワインをいただく事にしたのだ。

すると、強風に煽られ、移動テーブルがクルンってなった。

料理が落ちそうになり、慌てた拍子にワインを全部こぼしてしまった。

調子に乗ってワインを要求したのがいけなかったのか……。

残りはその場で食べる事にした。

正直、首が相当痛くなってましたし、ちょうどいいタイミングだったと思います。

 

今、原稿を書いていて、上の写真を見ている。

「もう、帰っていいっすか?」
という高畑さんの心の声が伝わってきた。

でも、この時の僕は「外で飲むワインは格別だな」と思っていたのであった。

鼓笛隊じゃないよ

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