断面はショボくて中身は豪華な「逆ハリボテサンドイッチ」を作ってみた

デイリーポータルZ

買ったサンドイッチの具が見た目より少なくて驚くことがあるが、あれは一部で「ハリボテサンドイッチ」と呼ばれていたりする。

落胆と脱力をうむハリボテサンドイッチ。しかし、もし具の見せかたが逆だったらどうだろう? 断面はショボいけど、中はボリューミー。

名づけて、”逆ハリボテサンドイッチ”。おもしろそうなので作ってみよう。

埼玉出身の東京在住。牛と練り物とあんことお酒が好きな会社員。電車で行く距離のところに自転車で行くと満たされます。

> 個人サイト 大うし展

まずは元ネタをたしかめてみる

“逆”のまえに、元ネタのハリボテサンドイッチを確かめておきたい。

当サイトでも、松本圭司さんが”悲惨ドイッチ”と称して「コンビニサンドイッチ解体新書」という記事にくわしく書いてくれている。参考にしつつ作っていこう。

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「コンビニサンドイッチ解体新書」より。開いたのを後悔するレベルの悲惨さ

用意した具材は、シンプルにハムとたまご。

こまかく切ったゆでたまごとマヨネーズをまぜ、ハムを細めに切ったら、それっぽさが出るように対角線上に置いていく……と。

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8月31日の宿題くらい量が集中しているな

自分で食べるのに、作っていて罪悪感を感じるほどのバランスの悪さ。後半なんて固形物ゼロだ。おりたたんでボリュームを出そうとしているハムがにくたらしい。

これをサンドし、ラップで包んで、半分に切ってみたのがこちら。

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「ハムたまごサンドですが何か?」と、しらじらしい顔つき

200円くらいで売れそうな、正統派のハリボテができてしまった。

ハムなんて本当は1枚分なのに、数枚は入っていそう。たまごたっぷりに見えて、奥はペンペン草もはえない不毛の「かさね食パン」地帯だ。

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軽すぎて上に持っていかれるハム。自作なのにムッとする

もし初めてのデートで彼女が「お弁当つくってきたよ♪」とこれを出してきたら、その夜は静かにYahoo!知恵袋で「初デート サンドイッチ 意図」と検索するだろう。

よしっ、めざすはこの逆。断面はショボくて中身は豪華なサンドイッチだ!

これが、逆ハリボテサンドイッチだ!

いきなりだが、まずは完成した逆ハリボテサンドイッチを見てほしい。

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すがすがしいくらい具が少ない
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中心ほど存在感がない……政治風刺?

我ながら、なかなか心をザワつかせる断面がつくれた気がする。

左から、ハムたまごチーズ、サラダチキン&キャロットラペ、ハムカツ&キャベツという具材だが、裸眼では特定できない人も多いはず。

江戸のコンビニで大塩平八郎がこれを見たら、民衆とともに立ち上がるだろう。いわゆる「大塩平八郎のパン」だ(え?)。もし現代のコンビニにこれが置いてあっても、誰も買わないので逆に被害ゼロだと思われる。

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こうやって作りました

それでは作りかたを説明していこう。逆ハリボテサンドイッチを作るにあたって、心がけたのは以下の3点。

①具が見える面積はなるべく小さく
②けど、全種類の具が見えるように
③パンの耳側からはなるべく具を見せない

じつは②が重要で、これをやることで「ちゃんとしてる風でダメなサンドイッチ」感がでる気がする。そんなわけで、このように具を配置してみた。

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たまにパワポで、このハムみたいな矢印つかう人いませんか?
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製造工場で毎日これをやらされたらおかしくなりそう……
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ハムカツのはじっこが切れて、小さな断面になる設計だ

作っていて気づいたのだが、これものすごく楽しい。断面を考えながら具を配置していく作業がパズルゲーム的なのだ。

ハムカツは最初、それこそパズルのように細かく切って配置を考えていたが、ピーンとひらめいて今の二分割に落ち着いた。いい配置が思いうかんだ瞬間の気持ちよさはクセになりそうだ。

そして、逆ハリボテだとわかっていても、パンをめくって具がたっぷりだと嬉しくてつい笑ってしまう。人間は単純だ。

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あの断面からこのボリューム! 知っていてもテンションがあがる
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人を拒絶する断面なのに、めくると食べてほしい顔つき。高度なツンデレだ

食いしん坊な友人に食べてもらった

こうなると誰かに食べてほしい。

そこで、友人に「ちょっとサンドイッチを食べてほしいんだけど」と連絡をしてみると「食べればいいの? ならいつでもOKに決まってるでしょ!」との返事。飲み込みが速いとはまさにこのこと。

翌日、サンドイッチを作りなおして友人宅に向かった。

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いたずらをしかけるときの高揚感ってひさしぶり。ワクワクしてきたぞ
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どうも、食いしん坊な友人です

「あれ? べつの記事に飛んだ?」と思ったかもしれないが、こちらがベネズエラ出身の友人・ホセくんだ。ただの大食いではなく、3ヶ国語をあやつり超大手企業につとめている。

彼とは前の会社で知り合い、すぐ意気投合して二人で飲みにいく仲になった。数年後には婚姻届の証人をたのまれるなど、ディープで遠慮のない付き合いをさせてもらっている。

今日みたいな変わったお願いごとにはうってつけだ。さっそくサンドイッチを半分に切り、渡してみる。

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タランティーノ映画ならサンドイッチごしに撃ってきそうな顔つき

「え、めっちゃ少ないんだけど……」

断面を見るなり、この表情。一瞬でBGMがシリアスに変わった気がする。だがこちらは「まぁ食べてみてくださいよ」とあくまでクールをよそおう。

「場合によっては国と国の問題になるぞ?」と言いながらかぶりつくホセ。さぁ、どうなるか……?

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「たっぷり入ってるなら……言ってよ……」

隠れていた具の存在に気づき、やさしい瞳をとりもどしたベネズエラの大食漢。シティハンターなら『GET WILD』のイントロが流れ出すだろう。

ここで種あかし。

「そういうことか~! なるほど!」

ハリボテサンドイッチの存在は知っていたようで、それの逆を作ってみたんだよねと説明したら大笑いしてくれた。

彼いわく、コンビニのサンドイッチは耳がなくてボリュームが足りないから、けっきょく2パック食べたくなって良くないとのこと。知らんがな。

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「なんだ、逆ハリボテかい」と安心した猫もすりよってきた

そもそもサンドイッチって楽しいかも

冗談みたいな「逆ハリボテサンドイッチ」だが、作ってみると想像以上に楽しめた。トマトなら? フルーツサンドなら? とすでに他の具が気になっている。

作ったなら、家族や友人に食べてもらうのがやっぱり良い。相手に切ってもらうのも仕掛け人としては楽しそうだ。

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サンドイッチを警戒する猫

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