1. コンテンツとプラットフォーム――4つのサービスが「終了」を発表
先週は相次いで著名なサービスの終了が発表された。
「cakes」は8月末でサービスを終了する。「過去記事も閲覧が不可能になる」と発表している(INTERNET Watch)。そして、同じ企業が提供している「note」についても不安視する声が上がっているようだ。ユーザーが主に不安視しているのはアップロードしたコンテンツが閲覧できなくなる、そのコンテンツを筆者が保存できないということについてだ。外資系の商業メディア「TechCrunch日本版」が日本での事業を終了したことにともない、これまでの記事が読めなくなったことについて執筆者らも落胆している人が多いようだ。最新の記事が短期間、人の目に触れればいいだけでなく、それが蓄積することによって「資産性」は高まる。それが一気に失われることの問題がプラットフォームとコンテンツの関係においてクローズアップされている。
また、スマートニュース傘下のスローニュースは「調査報道とノンフィクションの読み放題サービス『SlowNews』について、7月31日にサービス停止する」と発表している(ITmedia)。こちらは代替する方法で配信されるようだ。終了の理由は「エコシステムの実現には道のりが遠かった」と書かれている。
そして、動画配信サービスでは「TSUTAYA TV」のサービスが6月14日で終了する(GAPSIS.JP)。「無期限視聴が可能なコンテンツについては『永久に視聴できる』」とされていたようだが、代替するサービスへの振替はないようだ。
先週報じられたサービス終了はコンテンツプラットフォームだけではない。ZOZOは採寸用スーツ「ZOZOSUIT」のサービス終了を発表している(ITmedia)。技術的には意欲的なサービスだったが、アパレルとしての現実的なサービスとしては、利用者が継続利用するような状況までには遠かったか。
ニュースソース
- 「cakes」が8月末でのサービス終了を告知。運営会社が同じ「note」を不安視する声も[INTERNET Watch]
- スマートニュース子会社運営の「SlowNews」、サービス停止へ 事業モデルを磨いて仕切り直し[ITmedia]
- 「TSUTAYA TV」のサービスが6月14日で終了。無期限視聴商品購入者には返金・ポイント返還。申込必須[GAPSIS.JP]
- 「ZOZOSUIT」サービス終了へ 6月23日以降計測不可に[ITmedia]
2. 役割を終える携帯電話ショップ――「ドコモショップ3割減」報道
5月20日の「NHKニュースウェブ」で「ドコモショップ 2025年度までに3割ほど減の見通し」という記事が掲載された(NHK)。この記事では「全国におよそ2300店ある『ドコモショップ』に来店する客も減っていることから、会社では2025年度までに販売店の数がおよそ700店、率にして3割程度減るという見通しを立てている」と報じている。
これを受け、「ケータイWatch」では「ドコモの狙いと競合各社の考えはどうなっている?」という記事を掲載している(ケータイWatch)。ドコモの考えをはじめ、携帯事業者各社の考えを取材している。一定の顧客層はオンラインでのサービスでも十分と考え、実店舗でのサービスには頼っていない人もいる一方で、これまでどおりの実店舗でのサービスやサポートを期待する層も少なくない。また、事業者にとって、街にロゴマークを掲げた店舗があることもマーケティング的には意味があることだろう。
今後も実店舗を強化する戦略を選択することに意義があるとする事業者がある一方で、今後、さらに安価な料金プランが普及することにともなって、実店舗の維持コストの見直しを必然とする考えが出てくることは理解できる。この記事に結論でも「結局は『ネットもリアルも』両輪で販売を強化しなくてはいけないのかも知れない」とまとめているが、ユーザー層が分化するとともに、携帯電話事業者の顧客サービスのありようについて、曲がり角にあるということだ。
3. 「Build 2022」まとめ――日本市場では「社会の再活性化を最優先」
マイクロソフトの開発者向けプライベートイベント「Build 2022」が開催され、その概要が報じられている。セッションは、グローバル、フランス、ドイツ、ラテンアメリカ、英国、日本とリージョンごとに独自セッションが企画された。日本向けには「Revitalize Japan – 技術革新とコラボレーションの未来を共に創り上げる為に」とする講演が日本マイクロソフト代表取締役社長の吉田仁志氏により行われた。「政府によれば日本でDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる企業はわずか13%。われわれはRevitalize Japan(日本社会の再活性化)を最優先としている」と述べた。さらに、DXを実現するアプローチとしてメタバースにも言及した(ASCII.jp)。
また、ソフトウェアとして「Arm64ネイティブなVisual Studio Codeや.NET、Windows Subsystem for Linuxなどを投入する」ことを明らかにした(Publickey)。「Arm版のWindowsは2017年に発表されていましたが、これまで十分な製品展開やエコシステムの展開は事実上行われてこなかった」が、ここのところのArmを搭載したPCの登場とも合わせた動きといえる。
4. 個人情報詐取とサイバー攻撃の「思いもよらない手法」
「ITmedia」では「入力中の個人情報が“送信ボタンを押す前に”収集されている問題 約10万のWebサイトを調査」(ITmedia)という記事と「iPhoneの電源を切ってもサイバー攻撃される可能性 ドイツの研究チームが指摘」(ITmedia)という記事を掲載している。いずれも研究者の論文を紹介した記事で、後者については、現実に発生している事案ではない。しかし、こうした思いもよらない(常に思いもよらないところを突かれるものではあるが)ところの脆弱性には改めて驚かされるとともに、危機感も感じるのだ。
インターネット、とりわけモバイルはすでに重要な社会基盤だが、「信頼できるネットワーク」となる道はまだまだ遠いのか。
5. 「ファスト映画」をアップロードした3人を提訴
「ファスト映画」とは、権利者に無断で、映画の映像や静止画をつなぎ合わせ、それに独自の字幕やナレーションを付加し、ストーリーや結末を明かす(ネタバレ)違法な短編動画を指す。つまり、時間がなくて全編を実時間で見られない人が話題として知っておくために閲覧されることを期待しているのか。
コンテンツ海外流通促進機構(CODA)と日本映像ソフト協会(JVA)の会員企業13社は「ファスト映画を無断でアップロードしていた被告3人に対する損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起した」と報じられている(CNET Japan)。記事によれば、「被告3人は共謀のうえ、2020年初頭から10月下旬ごろまでの間、東宝が著作権を有する『アイアムアヒーロー』『告白』『悪の教典』などを含め、合計13社の映画54作品を権利者に無断で10分程度に編集し、いわゆる『ファスト映画』を作成」したとされている。その結果として、権利者は本来得られるはずの利益を失うという多額の経済的な損失を被ったことになる。
これまでも「漫画村」のようにコミックの違法な配信を行った人物は逮捕された事案もあるが、他の配信サービスは撲滅できていない。映画分野でもこうした違法行為が目に余る状況にあり、ひとつひとつの事案を対処していくことは有効だが、加えて、何らかの技術的な解決策にも期待をしたいところだ。
ニュースソース
- KADOKAWA、松竹、TBSら13社、「ファスト映画」アップローダーに損害賠償請求訴訟[CNET Japan]