これはbefore
今回、新しいヘアスタイルを考案するにあたり、江戸時代の男子の定番スタイル「ちょんまげ」に注目してみた。改めて見てみると、あのヘアスタイルは相当斬新だ。江戸時代にはああいうヘアスタイルの人たちが町中に溢れていた訳で、それはとてもパンクな風景であったと想像する。
そんな「ちょんまげ」ヘアを現代風にアレンジして、新しい髪型として提案させていただきます。もしかしたら今年の春夏あたり、ちょんまげブームが到来するかもしれません。ひと味違うお洒落を楽しみたい皆様は要チェックでござる。
※2006年3月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
カツラを調達する
「ちょんまげ」とは、額から頭頂部にかけて髪を剃り上げ、残った髪を後頭部で小さく結い、それを前面に向けた髪型の事をいう。この「ちょんまげ」ヘアを実現するには、ある程度の長髪でないと難しい。僕は短髪なので自分の毛で「ちょんまげ」を再現するのは不可能だ。
という訳で「ちょんまげ」ヘアの土台となる様なカツラを調達する事にした。
ご協力いただいたのは、東京都狛江市に本社を構える株式会社山田かつらさん。映画やテレビで使用されるかつら製作を中心に、一般ブライダルのヘアメイクも請け負うカツラ業界の老舗である。
山田かつらさんの代表的なお仕事として、映画では市川染五郎さん主演の「蝉しぐれ」や、北野武さん監督の「座頭市」など。テレビではフジテレビのバラエティ番組はほとんど請け負っていて、「ひょうきん族」「バカ殿」「ものまねバトル」など、多くの人気番組でカツラを担当しているのだ。
自分サイズのカツラをオーダーメイド
「ちょんまげ」のアレンジを試せる様なカツラを貸していただけないか、担当の佐野さんに相談したがちょうどいい型のカツラが見当たらず、わざわざ僕の頭サイズで新しいカツラを作ってくれる事になった。頭まわりのサイズ、左耳上から右耳上までのサイズ、額の生え際から襟足までのサイズなど細かく測定した。2日後には出来上がるという。
2日後、出来上がりの知らせを受け、再び山田かつらさんにお邪魔した。
作業場の奥から、僕サイズの「ちょんまげ」アレンジ用カツラが出て来た。
最近の時代劇では側頭部の髪をもう少し上まで残すのが主流らしいが、今回のアレンジ用カツラは随分下まで地肌が出ている。
「黒沢組とか、リアルを追求する時代劇はこういうタイプが多いです」
と佐野さん。
確かに、黒沢映画にはこういう感じの野武士みたいな人たちがいっぱい出て来る。
現代風にアレンジして、格好いい「ちょんまげ」を提案したいのだが、野武士タイプをベースとしても大丈夫なのか? 少し不安は残るが、ここからはプロのヘアメイクさんと一緒にアレンジヘアを作成していく。
ヘアメイクの大島さんに協力をあおぐ
今回の「ちょんまげ」アレンジプロジェクトでスタイリングを担当してくれるのは、プロのヘアメイクであり友人の大島さんだ。
大島さんは音楽プロモーションビデオやテレビCMなどで数多くのヘアメイクを手がけている。常に最先端のモードを取り入れるスタイリングには定評があり、「ちょんまげ」を現代風にアレンジする、という難易度の高い挑戦にはうってつけの人物だ。
とは言え、大島さんには「ちょんまげ」ヘアのスタイリング経験はなく、まずはオーソドックスな「ちょんまげ」がどんな形をしているのか、ネットで調べる事から始まった。
「ちょんまげ」の基本型が分かった所で、次はそれをどうアレンジしていくか、ブレスト会議に入る。
検討の結果、「ちょんまげ」を上に立てるアップ系と下に垂らすダウン系の2系統に分けてアレンジを考える事にした。アップ系4種類とダウン系3種類の全部で7種類。そう、七人の侍である。
山田かつらさんに作ってもらったベースカツラを装着する。細かく計測しただけあってフィット感はバッチリだが、このまま自分の頭に変わってしまったら大変だ。「マスク」ってそういう映画だっただろうか。観ていないので分からない。
住「バーコードヘアってアメリカ人が特許持ってるの、知ってます?」
大島さん「えっ? 本当ですか?」
住「ええ、ネットにもほら、ここに載ってますよ」
大島さん「本当ですね。スタイリングの方法まで細かく定義されてる」
住「そうなんですよ。このスミスっていう人が考案者なんです。だから、僕たちもこのちょんまげヘアがうまくいったら特許を取れるかもしれないですよ」
大島さん「そうですね。がんばります」
2人のモチベーションが更に上がる。
しかし、特許を取ると具体的にどんな得があるのか、全く分かっていない。例えばバーコードヘアの場合、あのヘアスタイルにしたい場合スミスさんに了承を得る必要があるのだろうか?
結局、7つのスタイリングを完成させるまでに4時間以上の時間を費やした。毛先の微妙な流れにまでこだわる、大島さんのプロ根性が伝わって来た。
次ページで新しいヘアスタイルのご提案をさせていただきます。
最新ちょんまげヘアカタログ 2006春
サムライNo.1「カラーでちょんまげに動きをつけて(ダウン系)」
ピンクのエクステを編み込んで、ちょんまげに表情を持たせました。フォーマルな中にも自分らしさをアピールしたい、そんなアナタに。
サムライNo.2「ポンパドールに色をさして(アップ系)」
こちらもピンクのエクステを使いました。ポンパドール風なちょんまげでパリジャンな気分を味わってみてはいかがでしょうか。
サムライNo.3「近未来を予感させるサイバーちょんまげ(アップ系)」
ホワイトメッシュが印象的なアレンジでサイバー感覚を演出します。気ままに揺れるクセ毛風の質感がお洒落度をアップさせています。
サムライNo.4「田村でも金、谷でも金(アップ系)」
元気ギャルの夜遊びヘア。ワイルドな毛束の動きとエアリーな質感が特徴です。気分によってヘアバンドに色を使ってもgood。
サムライNo.5「涙のリクエスト(ダウン系)」
他の前髪よりも長めにカットした細い毛束がポイント。デビュー当時のフミヤさんを彷彿させます。思い切りのいいボリューム感がちょんまげの概念をくつがえしました。
サムライNo.6「秘密のデート(アップ系)」
ヤシの木をイメージしたシンメトリーなアレンジ。頭頂部にはベアブリックをあしらい、大きな木の下で密会する2人を表現しています。
サムライNo.7「サムライ・ソウル(ダウン系)」
ちょんまげ部分にアフロパーマをあてた斬新なスタイル。ラフ&エレガントなちょいエロアフロ。ダンスホールでの注目度は他の追随を許しません。Play that funky music !
7つのスタイリングが出揃って全て写真を撮り終えた後、大島さんが「面白かったから写真ください」と言ってくれたので、「もちろんどうぞ。何なら大島さんのポートフォリオ(自分の作品集)に加えてください」と答えたら、それには賛同してくれなかった。それほどでもなかったみたいです。
取材協力:株式会社山田かつら
https://www.yamada-katsura.com/