マウスコンピューターの「mouse SL8」は、縦型のスリムデスクトップPCだ。こうしたタイプのPCは企業が一括導入して利用することが多いが、コンパクトなので置き場所に困らず、ノートPCよりもはるかに拡張性に優れていることもあり、個人で利用している人も多い。そこで今回はmouse SL8の特徴や性能を検証し、その魅力に迫っていこう。
液晶ディスプレイの横に置いて利用するスリムデスクトップPC
mouse SL8は、マウスコンピューターのスリムデスクトップPCだ。APUにはAMDの「Ryzen 7 5700G」を搭載する。8コア/16スレッドに対応し、AMDのデスクトップPC向けAPUの中では、高性能なモデルとなる。
直販サイトのBTOメニューから、OSやオフィスソフトの有無、メモリやSSDの容量、光学ドライブの有無などを選択できる。下記の表で示した基本モデルの直販価格は10万6,100円。今回はメモリ容量を16GBに変更したモデル(11万3,690円)を検証した。
【表1】mouse SL8の主なスペック | |
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メーカー | マウスコンピューター |
製品名 | mouse SL8 |
OS | Windows 11 Home |
CPU(最大動作クロック) | Ryzen 7 5700G(8コア/16スレッド) |
搭載メモリ(空きスロット、最大) | 8GB(3基、64GB) |
ストレージ(インターフェイス) | 256GB(PCI Express 3.0) |
拡張ベイ | 3.5インチシャドウ×2、2.5インチシャドウ×2 |
通信機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5 |
主なインターフェイス | Gigabit Ethernet、DisplayPort、HDMI、ミニD-Sub 15ピン、USB 3.1×2(Type-C、Type-A)、USB 3.0×6、USB 2.0×2 |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 100×390×365mm |
重量 | 約6.2kg |
直販価格 | 10万2,800円 |
スリムデスクトップとしては一般的なデザインを採用し、サイズは100×390×365mm(幅×奥行き×高さ、本体のみ)。液晶ディスプレイの脇に置いて使うにはぴったりのサイズ感で、ミドルタワーやミニタワータイプよりも場所を取らない。
前面パネルには、2基のUSB 3.0ポートのほか、SDカードスロットや音声入出力端子を備える。こうした前面ポートを装備する部分の横にも、カバーが付いた同じようなサイズのスリットがあり、BTOで光学ドライブを追加した場合にはここに組み込まれる。
前面、天板、左側面に通風口を設けており、前面には小さい8cm角ファンを装備する。スリムタイプのデスクトップPCなのでそれほど大きなケースファンを搭載するわけにもいかないということだろう。後述する高負荷時のCPU温度はかなり低く、運用に問題はなかった。
右側面はフラットなスチールパネルだが、四隅にへこみがある。mouse SL8は、右側面を底面にして横置きすることも可能で、このへこみに付属のゴム足を貼ると、横起きにしても滑らず安定して設置できるようになる。右側面を底面にした状態だと、昔懐かしい大手メーカー製デスクトップPCのようなスタイルだ。通風口も塞がないので、この状態でもエアフローは問題ない。
背面にはHDMIやDisplayPort、2基のUSB 3.1ポート(Type-AとType-C)、4基のUSB 3.0ポート、2基のUSB 2.0ポートなどを備える。
有線LANポートは2.5Gigabit Ethernet対応ではないが、ハブやルーターも含めて環境を整えている人のほうが少ないだろう。ロープロファイルの拡張スロットを装備しており、必要なら拡張カードで補うことも可能だ。
一体化している側面や天板部分の外装部分を外すと、内部にアクセスできる。各ケーブルはキレイに整理されており、マザーボードのメモリスロットや拡張スロットにはスムーズにアクセスできる。清掃やメンテナンスもしやすく、必要に応じて機能を拡張し、長く活用したいユーザーにとっても魅力的なモデルだ。
前述したように、拡張スロットはロープロファイルのみに対応する。電源ユニットは、型番とスペックを確認すると300W出力に対応したモデルのようだ。まとめられているケーブルにもPCI Express補助電源ケーブルはないので、ビデオカードを増設したいならロープロファイル対応で補助電源が必要ないカードを選びたい。
標準のストレージは、マザーボード上のM.2スロットに組み込まれている。しっかりとしたヒートシンクに保護されており、熱暴走の心配もない。CPUクーラーは、形状から考えるとRyzen 7 5700Gに付属する「Wraith Stealth」だろう。発熱もそれほど大きなCPUではないので、安心して運用できる。
強力な8コア/16スレッドAPUの面目躍如
ここからは、いくつかの基本的なベンチマークテストで性能を検証してみよう。一般的なアプリを利用したときの使い勝手をスコアで示す「PCMark 10」や、3Dグラフィックスの描画性能をやはりスコアで示せる「3DMark」の結果を見ると、Ryzen 7 5700Gを搭載するデスクトップPCとしては平均的な数値だ。
こうしたスコアは、CPUコアや内蔵GPUコアの性能の高さを裏付けている。Windows 11や各種アプリの操作感も上々で、各種操作で「待たされる」感覚はまったくない。NVMe対応のM.2 SSDをシステムドライブとして搭載していることもあり、Windows 11の起動も高速だ。
【表2】mouse SL8のベンチマーク結果 | |
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PCMark 10 Extended v2.1.2548 | |
PCMark 10 Extended score | 5,645 |
Essentials | 10,920 |
App Start-up score | 15,330 |
Video Conferencing score | 8,939 |
Web Browsing score | 9,505 |
Productivity | 10,397 |
Spreadsheets score | 12,717 |
Writing score | 8,501 |
Digital Content Creation | 7,370 |
Photo Editing score | 11,134 |
Rendering and Visualization score | 7,289 |
Video Editting score | 4,934 |
Gaming | 3,281 |
Graphics score | 4,325 |
Physics score | 25,566 |
Combined score | 1,336 |
3DMark v2.22.7359 | |
Time Spy | 1,570 |
Fire Strike | 3,977 |
Night Raid | 17,787 |
Cinebench R23.0 | |
CPU | 13,566pts |
CPU(Single Core) | 1,471pts |
Cinebench R20.0 | |
CPU | 5,288pts |
CPU(Single Core) | 574pts |
Cinebench R15.0 | |
CPU | 2,240cb |
CPU(Single Core) | 241cb |
CrystalDiskMark 8.0.2 | |
Q8T1 シーケンシャルリード | 2,541.47MB/s |
Q8T1 シーケンシャルライト | 1,273.01MB/s |
Q1T1 シーケンシャルリード | 1,754.66MB/s |
Q1T1 シーケンシャルライト | 1,252.98MB/s |
Q32T16 4Kランダムリード | 511.26MB/s |
Q32T16 4K ランダムライト | 411.63MB/s |
Q1T1 4Kランダムリード | 60.29MB/s |
Q1T1 4K ランダムライト | 241.58MB/s |
TMPGEnc Video Mastering Works 7 (1,920×1,080ドット/15~16Mbps/約3分の動画をH264/AVCとH.265/HEVC形式で圧縮、パラメータは標準のまま) |
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H.264/AVC | 1:46 |
H.264/AVC(Video Coding Engine有効) | 0:39 |
H.265/HEVC | 3:29 |
H.265/HEVC(Video Coding Engine有効) | 0:31 |
搭載するSSDの読み書き性能を数値で示す「CrystalDiskMark」の結果を見ると、PCI Express 3.0対応M.2 SSDのミドルレンジに相当する読み書き性能だった。マザーボードのM.2スロット自体はPCI Express 4.0に対応するが、APUであるRyzen 7 5700GはPCI Express 3.0対応なので、SSDもPCI Express 3.0対応モデルを選んだのだろう。
CPUコア部分の処理性能を反映する「Cinebench R15/20/23」と、「TMPGEnc Video Mastering Works 7」の結果は、8コア/16スレッド対応のCPUコアを搭載するモデルらしいスコアや処理時間だった。スモールビジネスや個人向けの低価格なデスクトップPCとして考えれば、十分過ぎる性能と言える。
システム全体の消費電力は、アイドル時が22.1W、システムに高い負荷をかける「OCCT 10.1.7」の「PowerSupply」テストを10分間継続したときの最高消費電力は137.5W。またこの高負荷時のCPU温度は87℃だ。かなり高い負荷をかけるOCCTのPowerSupplyテストでこのCPU温度なら、日常的な作業で問題が発生することはない。
使い勝手の面で言うと、付属のキーボードやマウスがワイヤレスタイプになったことも見逃せない。従来の有線タイプと比べると、キーボードやマウスを自由な場所に置けるようになり、ケーブルの引き回しも必要ない。また1つのレシーバでマウスとキーボードを接続できるため、利用するUSBポートは1つで済む。
キーボードは一般的なメンブレンタイプで、タッチはやや柔らかめだがタンタンと軽快にタイプできる。マウスはスタンダードな3ボタンマウスだ。特に変わった機能があるわけではないが、動きはなめらかで快適に操作できる。
mouse SL8は、搭載するインターフェイスや基本性能、使い勝手など、高いレベルでバランスの取れたスタンダードなスリムデスクトップPCだ。CPUコアや内蔵GPUの性能が底上げされた結果でもあるが、このクラスのPCを10万円台で購入できるのは、かなりお得感がある。
ただし初期構成はメインメモリが8GB、ストレージが256GBとやや非力なので、最低でも今回検証したモデルと同じくメモリは16GBにして、ストレージも利用するファイルの容量に合わせて強化したい。
ちなみにマウスコンピューターのBTOメニューは、ほかの直販メーカーのBTOメニューと比べるとメモリやSSDの価格が安く、自作パーツショップで購入するときの実売価格と近い。用途や目的を検討して自分に必要な容量が分かっているなら、自分で増設するよりはBTOメニューで初めから追加した方がいいだろう。
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